"キング・オブ・ポップ"ことマイケル・ジャクソンが亡くなったのは、忘れもしない2009年のこと。以降、彼の生き様を描いた数々のドキュメンタリー映画が公開され、人々を魅了しつづけている。そんな中、マイケルを含む往年のセレブが登場する"とあるコメディTV映画"の予告編が公開されたのだが、マイケル役をイギリス出身の白人俳優がつとめるという迷キャスティングに批判が殺到している。

セレブに関する様々な都市伝説を映像化したコメディTV映画『Urban Myths(原題)』の予告編が昨日公開された。ボブ・ディランやアドルフ・ヒトラーなどが"出演"する中、マイケル・ジャクソンも登場。そのストーリーは、9・11アメリカ同時多発テロ事件後に、大女優エリザベス・テイラーと俳優マーロン・ブランドと共にマイケルがニューヨークからクルマで脱出したという噂が元になっているという。

この噂の真偽は別にして(テロ発生後、マイケルを空港まで送ったという人物もいるため、デマだとも言われている)、マイケル役が決定した昨年から配役が疑問視されていた。およそ世界中の人が知っている通り、マイケルは黒人男性だ。部分的に肌の色素を失っていたのも、尋常性白斑という皮膚疾患だったことが解剖で証明されている。

そんなマイケル役を演じるのは、白人のイギリス人俳優ジョセフ・ファインズ。

ジョセフ・ファインズ
ジョセフは映画『恋におちたシェイクスピア』などで知られる俳優。出演が決定した当初、ジョセフ自身も「驚いた」とコメントしていた。

ついに映像が公開されるも、ファンや家族は激怒。ちなみにこちらがジョセフ演じるマイケル。

ジョセフ演じるマイケル

マイケルの娘パリスはTwitterで怒りのコメント。

「ものすごく気分を害された。他にも同じような気持ちになった人は多いはず。吐き気がするわ」

「意図的に傷つけようとしているとしか思えない行動に、余計に怒りがこみ上げる。父に対してだけでなく、私の代母であるエリザベス・テイラーに対しても無礼よ」

「敬意はないの? 2人は血と汗と涙を流したから、これだけのものを残せたの。恥ずべき描写だわ」

また、マイケルの甥であるタージ・ジャクソンもコメント。

「残念ながら僕たち家族はこういう屈辱を受けるんだ。明らかな軽蔑に言葉を失った」

この事態を放ってはおけなかったマイケルのファンたちは、公開中止を求め署名活動を開始。「マイケルの肌の色を考慮するとキャスティングが難しかったことは想像できるが、黒人といっても様々な肌色を持つ人がいる上に、実際に黒人の血が流れる人もいたはずだ。なぜ、実在した黒人を白人が演じなければならないのか。マイケルに対する侮辱だ」と訴えている。

マイケルは生前、とあるコマーシャルで彼の幼少期を演じるのに白人の男の子が配役されるのでは、と噂されていた際に、インタビューでこう明かしていた。

「僕は黒人のアメリカ人だ。それを誇りに思っている。だからそんな噂を信じないで」

いくらコメディ映画とはいえ、マイケル自身の意思を尊重しない心ないキャスティングに、家族やファンたちが憤るのは不思議なことではない。