南部鉄器の「極め羽釜」

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  炊飯器コーナーで売られている、10万円クラスの炊飯ジャーをご存知だろうか。今年7月に発売された象印の圧力IH炊飯ジャー『極め炊き』(NW-AS10型)がその一つ。5.5合炊きの炊飯ジャーといえば、電磁力のIHヒーターで加熱炊飯する2~3万円台のIH炊飯器から、3万円台からの圧力炊飯とIHを組み合わせた圧力IH炊飯器が主流だが、この『極め炊き』は廉価店でも8万円以上はする、圧力IH炊飯器の最上位機種のひとつだ。筆者が訪れた量販店では、圧力IHの上位機種だけ特別にきらびやかなコーナーが作られていたほどである。

 店頭で実機を見ると、メタリックブラックのがっしりとした本体の横に展示されている、リアルな「釜」がとりわけ目を引く。昔のかまどで使うようなそのまま「釜」の形をした黒いお釜部分の重厚感はインパクト大。どうやらこれこそが『極め炊き』を実現する「南部鉄器極め羽釜」らしいのだが、その実力のほどは?

 今回は、男3人女1人の4人家族、無洗米こしひかり5キロ1900円を愛食する極めて平凡な我が家でこの象印の圧力IH炊飯ジャー『極め炊き』を実際に試してみた。

■高火力高圧力のヒーターと、南部鉄器の釜

 届いてまず衝撃をうけたのはその重さ。『極め炊き』の重量は約11キロ。しかし、蓋を開けた途端、南部鉄器の職人がひとつづつ鋳型を作って切削しているという「釜」だけの重さではなく、炊き釜の上にかぶさる内蓋も、蓋や外枠の作りも、「機械」として作られているから余計に重いのだと納得する。

 蓋には開ける時と同じボタンを押せば、蓋に触れずに閉めることができる「スマートクローズ」機能がついている。ご飯をついだ茶碗としゃもじを両手にもっていても、簡単にしめることができるというわけだ。

 「釜」の周囲にめぐる「羽」部分は本体のかまどヒーター部分にふたをして熱を閉じ込め、火力を高めて熱を滞留させる働きがあるとのこと。そうすれば角度のある釜底とあいまってお米が豪快にかきまぜられ、よりふっくらと炊き上がるのだという。「はじめチョロチョロ中パッパ」の「中パッパ」部分で最大1450Wの火力を発揮し、最大1.5気圧の高圧力を実現してお米を甘くするらしい。

■感想入力で121通りの「自動炊き分け」やオリジナルな炊き方メニュー

 精密な「機械」だからこそ炊飯時のメニューも多い。しゃっきりからもちもちまで、7通りに圧力で炊き分けをするだけでなく、冷めても美味しいという「お弁当」、鉄器ならではの「鉄器おこげ」や、15分で炊き上げる「白米特急」など様々なメニューがある上に、炊きあがりの感想を入力すると121通りの中から好みの食感に自動で炊き上げる「我が家炊き」メニューまで揃っている。我が家は無洗米のため、シンプルに「無洗米」を選択した。

■凄まじい蒸気だが、炊きあがりは「ふっくらうる艶」の甘み。でも......

 さて、炊きあがりまで60分を待つ中で気になったのが、その炊飯時の「音」だ。常時シューというはっきりとした炊飯音がする上に、時折強烈な吐息のように吐き出す音は、家族が「何?」と顔をだすほどの音量だ。別府温泉の地獄めぐりすら思い出させる蒸気と吐き出し音だけあって、蒸気吹き出し口にはびっしりと水滴が。「蒸気セーブ」機能があるとはいうものの、普通に炊く場合には換気扇に近いところに設置しないと周囲に水滴がついてしまうかもしれない。

 炊きあがりのきらきら星のメロディーとともに、いざ、実食。我が家にはうん年前購入の炊飯ジャーがあるので、食べ比べをしようとこちらでもまるっきり同じ米で同時に炊飯を行った。

 まずは、いつもの炊飯ジャーから。この米はもとから水分が多く、見た目も味もいつも少しべっちゃりとした印象だ。味はごく普通でさっぱりとしている。

 一方の『極め炊き』だが、蓋を開けたときから、炊きあがりの米のひとつぶひとつぶが独立しているのが目に入った。お米のうる艶感もべたっとしたものではなく、一粒一粒につやがあり、ふっくらしているようだ。

 口に入れた第一印象は、米粒のひとつひとつがしっかりとしていること。べっちゃりと粒がつぶれずに厚みがあるため、米に噛みごたえがある。味も、我が家のジャーで炊いたものよりも確かに米の甘みが強く、噛むたびによりはっきりとした甘みを増す。 

 炊けた米粒を比較してみると、『極め炊き』のほうは粒にふっくら「厚み」があり、他の粒とべっちゃりとくっついていないことがわかる。月並みな表現だが、「お米が立っている」というところだろう。

 第三者の意見として、我が家の育ち盛り10歳と14歳の男子を召喚した。後ろを向いて目をつぶらせた2人に格付けチェックよろしくそれぞれの米を食べさせ、「高い方の炊飯ジャー」だと思う時に手を上げてもらう。結果、10歳児はランダムに5回ほど繰り返しても全て的中。一方食べ盛りの中2男子は5割の結果だったので、きちんと噛んで食べる人間にはわかるものの、かきこんで食べるタイプの人には残念ながらこの差はわからないのかもしれない。

■保温後も「もっちり」で水分OK。お味は......

 さて、炊飯ジャーといえばもちろん「炊く」のが仕事だが、もうひとつの大切なお役目といえば「保温」。商品説明には「うるおい二重ぶた」と本体外にめぐらされた「断熱フレーム」で「40時間までおいしく保温できます」と書いてある。 残念ながら40時間とはいかなかったものの、寝て仕事にでて戻っての16時間の「保温」を敢行してみた。結果、16時間保温されたご飯は炊きたてとは別物だった。炊きたてのうる艶感は消え、味も保温したときのご飯の味になっている。ただ、味は落ちているものの、水分はしっかり残っており保温ごはんにありがちなパサパサ感はほとんど感じなかった。もっちり感はそのままに味だけ落ちた、といいうところだろう。 

 また、毎日炊く人間には取扱いの手間も大切なポイントだが、重厚な精密機械ながら、二重の内蓋も取り出しやすく洗いやすい工夫がされている点は、優秀と言える。

■炊きたての美味しさをいかに保つかが課題か

 実は先日我が家が購入した洗濯乾燥機が、かれこれ10万円。その大きさと比較すると高額すぎるのでは?という疑問も抱きつつ試させてもらった今回の象印・圧力IH炊飯ジャー『極め炊き』(NW-AS10型)。炊き上がった米の粒粒感・もっちりうる艶感は文句なしに素晴らしいものがあり、この点に関しては何の不満もない。しかし、炊き方のメニューがあまりにも多く細分化されすぎて、よほどお米にこだわりのある人間しか必要としないのではないか、そして例えば炊きあがりに重きを置きそうな年代の熟年・老年層が果たしてこの小さな文字のメニュー機能を使いこなせるのか?という疑問は残る。また、炊飯直後の状態があまりに完璧なため、保温機能がたとえよくても「味が落ちた」とどうしても感じさせてしまうのも、一長一短といえるだろう。

 結論としては、凝り性でとにかくごはんの炊き方にこだわりがある人、様々な種類のご飯や粥を日頃から炊く可能性がある人には、一考の価値がある、というところではないだろうか。