txt:江口靖二 構成:編集部

メーカーが考える次の映像運用方法は?

CESではすでにテレビ画面だけに閉じた時代ではなくなっているのは明らかで、スマートフォン連携ももちろんだが、もうひとつ注目しておくべきことがある。それはリアルと映像を組み合わせるものだ。現場と映像、風と映像、本物のダンスと映像など、CESで目に止まった効果的な映像利用の事例をご紹介しよう。

パナソニック

ces2017_05_6495_bスタジアムのVIPルームを想定

パナソニックでは、スタジアムでのVIPルームを想定した展示を行った。これはスポーツスタジアムのVIPルームなどにおいて、現場のリアルな試合観戦のアシストとして、テレビ中継のような選手のデータやリプレイなどを提供するもの。

ces2017_05_1512特殊スクリーンに超短焦点プロジェクターで投影

具体的には、同社の透明なプロジェクター・スクリーンを利用している。課題である透明度と映像の鮮明さは、実用レベルと言ったところ。VIPルームの数から想像するに大きな市場とは思えないが、このようなリアルに映像を重ね合わせて付加価値をつけるというアプローチは、今後も増加していくと思われる。言うまでもなく導入価格次第だ。

ces2017_05_1513

同じくパナソニックブースでは、風にたなびくフラッグにプロジェクションをする事例も。デモは送風機で風を送って、たなびくスクリーンに投射する。ポイントは、フラッグの動きにリアルタイムでフォーカスが追従するというもの。技術的には大変だと思うのだが、普通の人が見てそこに気がついて評価されるのかどうかが問題。動画はこちら。

ces2017_05_6493風で不規則に動くフラッグにリアルタイムマッピングをする

ソニー

ces2017_05_64731ユニットはこのサイズで、メンテナンスもユニット単位

なんといっても超巨大壁面ディスプレイCLEDISに注目したい。まずは、下記の動画を見て欲しい。現場で体感しないと分かりにくい部分はあると思うが、そこは想像力を膨らませてご覧いただきたい。

CLEDISは、ソニーが2012年に発表したCrystal LED Displayの進化版で、昨年のinfoCommに登場したものだ。Crystal LED Displayも、その表現力が非常にリアルで驚いたが遥かに進化した。デモでは写真やCG、動画などの素材で様々なシーンを表示していた。まず写真などの静止画の場合、もちろんリアルで極めて鮮明なのだが、画像を切り替えられる点以外では、従来の印刷とバックライトを用いる場合の差が出にくい。

一方の動画は、その解像度(今回は7680×2160)と9.7mx2.7m、すなわち約400インチの大画面が映し出す映像は迫力がまさにリアルだ。このクラスのサイズと解像度になってくると、ポイントはその場にいるような映像にこそ最大の価値、効果があるように思う。例えば人物のアップの映像や、スローモーションといった映像だと、逆にリアルさに欠けてしまうのが非常に興味深い。ある種の違和感さえ感じる。

ces2017_05_6460CGのダンス映像に本物のダンサーが登場ces2017_05_001最もリアルなのはこういう映像

ここで考えられるのは、この違和感を逆手に取るのか、あるいは素直にリアルなもの、見た目そのもの、その場にいるような映像にするかの2つの方向性があるだろうということだ。400インチの大きさに本物同様の解像度で表示されることの視覚的な混乱を狙うのであれば、インパクト勝負のデジタルサイネージに向いている。一方でその場にいる状態を再現する方向性であれば、ライブビューイングに向いている。この場合はレンズ選びや被写界深度、カメラワークも従来のテレビ的、映画的なものではいけない気がする。できるだけ見た目に近いものが向いている。

デモ映像の中で言えば、前者は黒バックの人物のシーンであり、後者は海岸のシーンだろう。またCGとリアルなダンサーのコラボレーションも、単なる中継ではないライブビューイングでの演出の可能性を大きく感じるものだ。現場で実際に見ると、これらの2つの方向性はどちらもありだと思う。なお1月中旬から、品川のソニー本社でこれより若干小さいサイズではあるようだが、ほぼ同じ物が自由に見られるとのことなので確認されるといいと思う。

サムスン

ces2017_05_6506猫のしっぽはディスプレイ側の映像にもちゃんと表示する芸の細かさ

サムスンのLCDTVのプロモーションは、本物のTVとプロジェクション映像を組み合わせた演出。動画はこちら。LCDTVの映像をプロジェクターの映像をシンクロナイズさせて効果を狙っている。輝度と自己発光か反射光かの違いで不思議な演出に見える。映像の制作はそれなりに大変だと思う。

同様のディスプレイとプロジェクターの組み合わせは、数年前のIFAでパナソニックも行っていたが、主役であるディスレイとアシスト役であるプロジェクターという組合せの表現はやはり面白い。ただ今回はプロジェクションしている壁面があまりにも大きすぎて(400インチ以上はある)、それに対してディスプレイが4面、さらにデジタルサイネージ用のディスプレイではなくサムスンのQLEDであるのでベゼルが気になってしまう。ブース演出だけを言うのであれば、QLED1面で成立するプロジェクターによる背景を投影するべきだったと思う。肝心のQLEDは、量子ドット素材を用いるものであるが、受ける印象は特筆するものはないというのが正直なところ。有機ELとの差別化戦略だが、今後のレベルアップに期待したい。

txt:江口靖二 構成:編集部
Vol.04 [CES2017] Vol.06