30歳を過ぎたら、そろそろ日本酒のたしなみを覚えて大人の階段を登りたいもの。

日本各地の美味しい日本酒をフリーフロー(飲み放題)で堪能しつつ、目の前の七輪でちびちびと炙りを自分好みに楽しめる「旬 THE XUN ROPPONGI」は、そんな想いに応えてくれる新店である。

2016年の11月に六本木の西麻布交差点近くにオープンしたばかりだが、早くも日本酒好きの間で話題になっている。



日本酒のフリーフロー(飲み放題)が2,500円」と聞くだけで酒好きなら「おっ!」と身を乗り出してしまうところだが、さらにそのラインアップは全国の「純米酒」に限られているというから一大事。

各都道府県の純米酒が、100mlの透明グラスで何杯でも飲めるとは。しかも日本酒初心者でも気軽にオーダーしやすいようにと「獺祭」や「鍋島」、「日高見」など有名銘柄は一通り揃えている。

特に「獺祭」は全種類を取り揃えているという熱の入れよう。多くの酒好きの心を捉えて離さないわけである。フリーフローを頼んだ人は、平均で5杯ほど、多いお客なら10杯以上を飲んで帰る。早速、料理と、それに合う日本酒ペアリングをご紹介しよう。(※日本酒のラインアップは季節や日によって変更する)



「炙りのお通し」(500円〜。炙りの点数による)
絶品のつまみも、いいアテになり日本酒が進む

お通しには「炙り」が登場。日本酒のグラスにチョビチョビ口をつけながら、1グループに1つ用意される目の前の七輪で、好きなタイミングで焼くのはなかなかオツなもの。

写真は左から「きびなごの干物」「自家製鴨のスモーク」「長芋のゆかり漬け」。特に、桜のチップでスモークした鴨のスモークは板長こだわりの品だ。



料理は、日本酒と一緒に食べてこそ輝くメニューばかり。「和牛赤身肉のカルパッチョ 雲丹とこだわりの温泉卵で」(1,280円)。

最初の乾杯にオススメの日本酒は、「発泡にごり酒 獺祭スパークリング50」。女性でも、まるでシャンパンを飲んでいるような甘さと泡感、フルーティーな香りで「日本酒、思ったよりイケるかも!」と思わせてくれる一杯だ。微発泡だから、お腹にたまらない点も乾杯にぴったり。

この獺祭スパークリングによく合う料理が「和牛赤身肉のカルパッチョ」。低温調理した和牛の上には「こだわり家族のこだわり卵」というブランド温泉卵がぷるるんと鎮座する。

通常の卵に比べて卵黄のビタミンは30倍という触れ込みで、伊勢神宮にも奉納されているもの。ツンと箸で破くと、トロ〜リ黄身がカルパッチョを優しく包むのであった。日本酒を飲んでいるのに、なんだかフレンチを食べているような心持ちになる。




「蟹の甲羅焼き」

酒のつまみにぴったりの「蟹の甲羅焼き」は、たっぷりの蟹味噌のみを純米大吟醸であえたもの。味付け用の調味料を一切使っておらず、蟹の旨みがこれでもかと凝縮されている。

これに合うペアリングは何かと問われれば、それは濃厚な蟹味噌に打ち負かされない強めの日本酒のみ。キリツと濃い山廃独特の飲み味の「天狗舞 山廃純米」がぴったりだ。

仕込みの際に雑菌による汚染を防ぐための既成の乳酸を加えず、自然の乳酸菌を使って低温でじっくり乳酸発酵させることで、イキイキした酵母だけが生き残る昔ながら手法“山廃造り”で産み出された。飲むと体がポッポとアツくなるので、ぜひ宴の後半にじっくりと味わってほしい。


「雲丹、イクラ、キャビアの生肉軍艦」も〆にぜひ!



大トリは「生雲丹、いくら、キャビアの和牛軍艦」(2,500円・写真右)。

最後に、これを食ベなくては〆らない裏メニュー的な一品を。「高級食材の王様3種類を贅沢に楽しんでほしい!」という思いから生まれた「雲丹、イクラ、キャビアの和牛軍艦」だ。

生肉のような食感をたたえる低温調理した黒毛和牛を海苔に見立て、その上にこぼれんばかりにライドオンした高級食材たちは、眺めているだけで幸福感に包まれてしまう……!

これに合うペアリングは「獺祭 純米大吟醸50」。メロンを思わせるフルーティーなフレイバーながら、後味はスッキリしており、雲丹、イクラ、キャビアの存在感をしっかり引き立ててくれる。ちなみに、酒名についている「50」は、原料の米を(手間暇かけて)50%削ったという意味である。


ここで改めて確認しておこう。日本酒は、ざっくり言うと「純米」と表記されているものと、そうでないものの2種類に分かれる。もちろん純米酒は前者。その原料にはお米とアルコールを作る米麹と水しか使われておらず、後者のように、香り付けや防腐剤代わりとなる醸造アルコール(添加物)が一切加えられていないのが特徴だ。

お米は中心部に近づくほどに甘くなるため、削れば削るほど日本酒も甘さを増す。純米酒はアルコール添加をしてないもので、40%・50%とお米を削るにつれ純米吟醸・純米大吟醸と変化を遂げていく。一般酒と比較してもよりとろっとした甘みを楽しむことができるというわけ。


お店の日本酒は一杯680円から飲むこともできるが、やはり、何杯飲んでも2,500円のフリーフローを頼んで、日本各地を日本酒で行脚したいもの。「高い金額なら飲み放題はどの店でもできる。上質な日本酒を、安い値段で心ゆくまで飲んでもらうことが大切だ」という同店社長の心意気に、大船に乗った気持ちで酔いしれてみようではないか。

里帰り気分で故郷の酒に酔いしれるのもまた一興。有名どころだけでなく、この店でしか飲めないプレミアムな日本酒やなくなり次第終了の限定日本酒まで飲める日もあるそうなので、日本酒好きも、日本酒初心者も、酒好きなら行っておいて絶対に損はないだろう。