<オルト・ライト(オルタナ右翼)のアイドル的存在のマイロ・ヤノプルスが米大手出版社サイモン&シュスターと高額の出版契約を交わた。それに対して、The Chicago Review of Booksが「書評拒否」を発表するなど問題となっている>

 サイモン&シュスター社(S&S)が、オルタナ右翼のアイドルとして知られ、Twitterから永久追放されているマイロ・ヤノプルス氏 (33)と25万ドルの出版契約を交わしたことが報じられて問題になっている (Hollywood Reporter)。

「危険」な賭け

 ヤノプルス氏についてWikipediaは、ギリシャ系ハーフで「英国生まれのジャーナリスト」と紹介しているが、右翼ニュースメディア「ブレイトバート・ニュース」のテクノロジー、政治・社会・文化系記事のライターとしてポップ・スター並みの人気を得ている。キャラクターは矛盾に満ちており「退廃的な、知的な、同性愛者のファシスト」という言葉が違和感を感じさせない風貌と独特の言語感覚で病的な社会を魅力的に集約した人物だとはいえる。

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 6桁(数千万円台)の出版契約は流行作家並みのものだが、良識的な出版界ではこの「危険人物」の扱いに苦慮している。The Chicago Review of Booksは「書評拒否」を発表、他にも同調を呼びかけた。S&Sは12月30日に「弊社が差別とヘイトスピーチに寛容であったことはなく、ただ様々な著者たちの、時には論議を巻き起こすこともある多様な見解を、多様な読者に向けて出版してきた。本書中の意見は、企業あるいは従業員のものではない」という趣旨の声明を出している。

 S&Sの「保守系」ブランド、Threshold editionsから出版されるヤノプルス氏の320ページの著書 'Dangerous' は、3月14日の発売が告知されて宣伝が始まった。すでに予約だけでアマゾンの#1にランクされ、Goodreadsのレビューでは、予想通り、五つ星に一つ星が混じっている。S&Sの期待通り、CBS傘下の大出版社の「炎上商法」は成功への一歩を踏み出した。

 インターネットが火をつけた「ディス」や「ヘイト」の文化は、ついに「ポリティカルコレクトネス」が浸透していたメインストリームの出版にも登場した。儲かるからという以上の理由は必要でないようだ。20世紀の初頭は「ヘイト」が良識を圧倒した時代だが、奇しくも1世紀を経て同じ周期に入った。これは出版にとって目先の利益の機会が出現したことを意味する。版権切れで逆にドイツで解禁されたヒトラーの『我が闘争』(1925)は、昨年で85万部が売れた。同様な「ヘイト」現象は、「嫌中・嫌韓」本を売る日本の出版界でも起きており、これは世界的な現象。

 グローバリゼーションの後に絶望的な不況と戦争の時代が訪れた1世紀前の状況の再現である。マスメディアはこの状況にあって(お金の流れる方向に)流され、Webメディアはつねに玉石混交であり続けるが、出版は良識の仮面を外してでも明日なき「言論の自由」ビジネスにダイブする誘惑に抗しきれないだろう。 

Milo Yiannopoulos: What The 'Alt-Right' Is Really About (Full Interview) | Power Lunch | CNBC


※当記事は「EBook2.0 Magazine」からの転載記事です。

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鎌田博樹(EBook2.0 Magazine)