朴槿恵大統領弾劾訴追報道(YONHAP NEWS/アフロ)

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●崔順実側近と2人きりの “夜の会合”

「バイアグラとそのジェネリック医薬品364錠購入」「高級ベッド3台購入」「胎盤エキス注射投与」――。

 韓国の朴槿恵大統領をめぐる一連の異様なスキャンダルは、とうとう「“成人指定”の領域に踏み込んだ」と現地メディアが伝えている。朴大統領の異性関係を証言する音声テープを入手した元与党議員が、「子供には聞かせられない19禁レベルの内容」と発言しているからだ。

「市井の一民間人による最高権力の私物化」という政治スキャンダルで、昨年12月9日の弾劾訴追案可決により職務を停止された朴大統領。これから約半年にわたる憲法裁判所の審理を経て、罷免か否かの判断を下される予定だ。しかし即時辞任を求める市民の怒りは収まらず、首都ソウルでは昨年のクリスマスイブにも55万人が大規模デモに繰り出した。

 その一方で、独身の大統領をめぐる怪しげな性的関係の疑惑もあとを絶たない。昨年11月下旬には、CM監督のチャ・ウンテク容疑者(48)と官邸で密会していたとの報道が各メディアを駆けめぐった。チャ容疑者は、国政介入の主役で朴大統領の親友・崔順実(チェ・スンシル)容疑者の最側近。官邸とのコネクションを利用した横領などで、同年11月8日に逮捕されている。

 関係者の証言によると、チャ容疑者はしばしば夜間に官邸を訪問し、朴大統領と2人きりで過ごしたという。だが朴大統領は本来、閣僚や秘書官とも2人きりでの面会を好まないというのが関係者らの評判だ。それだけにチャ容疑者との親密な夜の会合は、バイアグラや高級ベッドの不透明な税金の用途も相まって、いっそう憶測を呼んでいる。

●“セックステープ” の登場

 さらに昨年11月25日には“セックステープ”情報が飛び出した。韓国誌「時事IN」のチュ・ジヌ記者が日本の早稲田大学で講演した際、「これまで明るみに出た不正はまだ十分の一にすぎない」「裏口入学、兵役逃れ、ドラッグ、そしてセックスに関連したテープが出てくるだろう」と発言したのだ。

 当初は韓国メディアも半信半疑だったが、チュ記者の発言は現実になった。ほどなく崔順実容疑者の娘チョン・ユラ容疑者の裏口入学、その元夫シン・ジュピョン氏の兵役不正疑惑が相次いで問題化。そして昨年12月23日に元与党議員がラジオ番組で、冒頭の証言テープが「19禁レベルの内容」だと暴露したわけだ。

 問題のテープに記録されているのは、若かった頃の朴大統領と崔順実容疑者の父親・崔太敏(チェ・テミン)氏の関係だ。崔太敏氏は1912年生まれ。70年代から右翼系キリスト教団体などを運営しつつ、朴正煕政権下(63〜79年)で軍幹部らの人事や公共事業の口利きを行っていた。74年に朴正煕元大統領の夫人・陸英修氏が暗殺されると、その娘で当時22歳だった朴槿恵氏と接触。「お母さんが夢に出てきた」などと取り入って、精神的指導役となる。同時に大統領令嬢である朴槿恵氏との関係を最大限利用し、蓄財に勤しんだ。朴正煕元大統領の没後に失脚するが、その莫大な財産は崔順実ら子供が受け継いでいる。

●一部報じられている “19禁レベルの内容” とは

 テープでこの崔太敏氏と朴大統領の関係を証言しているのが、崔氏の再婚相手の息子で崔順実容疑者の義兄にあたる趙順済(チョ・スンジェ)氏だ。

 録音が行われたのは2007年。当時の与党ハンナラ党ではその頃、大統領候補を一本化する予備選で李明博氏と朴槿恵氏が争っていた。テープを入手した元与党議員によると、趙順済氏は「朴槿恵が大統領になれば崔親子に国政が振り回される」との考えから、朴槿恵氏を告発するため李明博陣営に協力したという。

 テープの全貌はまだ明かされていないが、2人の怪しげな関係について一部が次のように報じられている。

「朴正煕大統領の死後、朴槿恵氏は3日に1度の割合で人目を避けながら崔太敏氏宅を訪れ、2人で密室に長時間こもった」
「食事は(2人がこもる)部屋の前に置いておき、崔太敏氏がなかへ持って入った」
「崔太敏氏は朴槿恵氏をその家族や私たちからも遠ざけて孤立させていた」
「崔太敏氏と朴槿恵氏は不可分のひとつの存在だった」
 
 さらに崔太敏氏の性癖についてこんな証言もある。

「崔太敏氏は女性というだけで放っておかないほど、(女性に対する執着が)すごかった」

 崔太敏氏は94年に81歳で他界。証言を行った趙順済氏も08年に亡くなっている。その証言テープは趙氏の期待に反して、昨年まで陽の目を見ることはなかった。当時の李明博陣営では、立証が困難な上にスキャンダル合戦は得策でないとして深く追及しなかったからだ。

●疑惑に対して名誉毀損の告訴を連発した朴大統領

 いっぽうで朴大統領と崔太敏氏の親密すぎる関係は、政界の一部では公然の秘密だった。だが朴大統領は、極めて強硬な態度で対応している。当時この問題を調査した元ハンナラ党関係者のキム・ヘホ氏は、崔一家の不正蓄財に朴槿恵氏が関与したと主張。だがキム氏は朴大統領側の刑事告訴で名誉毀損の有罪判決を受け、懲役6カ月の実刑まで下された。

 今回のスキャンダルでようやく主張が裏づけられたキム氏は、同じく有罪となった別のハンナラ党関係者とともに、再審請求の手続きを開始。メディアに対して「明白な証拠があったのに有罪とされたのは、なんらかの圧力があったのだろう」「朴大統領は崔太敏氏に関する攻撃に決して妥協しなかった」と語っている。

●隠し子問題もくすぶり続ける

 朴大統領と崔太敏氏をめぐって根強く伝えられている情報のひとつが、隠し子問題だ。朴大統領が大統領選に勝利した12年の与党予備選でも、「崔太敏氏との間にもうけた30歳の娘が日本で密かに暮らしている」との情報が飛び交った。別の疑惑とともにこの件を伝えたインターネットメディアは、やはり名誉毀損により一審で罰金500万ウォンを宣告されたが、現在は二審を争っている最中だ。

 チュ・ジヌ記者が「まだ十分の一」と語ったとおり、崔一家と朴大統領のスキャンダルはとめどなく噴出し続けている。崔太敏氏は財産をめぐって子供らに殺された、というのもそのひとつだ。また冒頭でふれたチャ・ウンテク容疑者が崔太敏氏の隠し子、という噂もある。逮捕時にウィッグを取り上げられたチャ容疑者の容姿が、崔太敏氏の遺影とよく似ていたからだ。

 トランプ氏の当選で米中の関係が流動化するなか、韓国保守政界への致命打となった朴槿恵大統領の国政介入問題。国家の将来を大きく左右しかねない未曾有のスキャンダルは、まだ無数のドロドロとした闇を抱えている。
(文=高月靖/ジャーナリスト)