「串かつ田中」渋谷百軒店店

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 2016年9月に1号店のオープンから8年足らずで東京証券取引所マザーズに上場を果たした、串カツ専門の居酒屋チェーン「串カツ田中」。1月9日付記事『最近やたらと目にする「串カツ田中」、誕生&急成長の嘘みたいな本当の理由…なぜ駅から遠い?』では、同社取締役管理部長の坂本壽男氏に、その独特な経営戦略や現在に至る道のりについて話を聞いた。

 後編となる今回は、老若男女が楽しめる接客や今後の展望について、さらに坂本氏の話をお伝えする。

●居酒屋なのに子供も楽しめるサービス戦略

――串カツ田中には、元気な店員さんが多いイメージもあります。どのような従業員教育をしているんですか?

坂本壽男氏(以下、坂本) 冊子の接客マニュアルもありますが、最近はマニュアルを動画アプリ化して、声の出し方などをよりわかりやすく学べるようにしています。あと、毎年「串カツ田中総会」というのがあり、優秀な店舗の運営方法を共有したり、アルバイトフォーラムを開催してアルバイト主体でより良い店舗づくりへの意見交換をしたりしています。

 さらに、年に1回、社員総出の運動会を開催していて、バルーンサッカーや全方向ドッジボール、全員リレーなどをみんなで真剣にやっています。また、外食では珍しいと思いますが、弊社は店舗の社員も週休2日制で必ず連休がとれるようになっています。

――前編でファミリー客の話がありましたが、居酒屋でありながら、串カツ田中は家族連れが目立つ印象があります。

坂本 うちはファミリー層のお客様がすごく多いんですよ。居酒屋のお客様は会社員が多いイメージがありますが、串カツ田中は住宅街からスタートしているので、店内の照明を明るくし、家族連れでも入りやすい雰囲気づくりを心がけています。お子さまは揚げ物が大好きですし、自分の好きなものを1本ずつ頼めるのが楽しいみたいですね。

 串カツを日本の文化にするには、小さい頃から慣れ親しんでいただくことが大切。そして、大人になって家族ができたら、新しい家族と一緒に戻ってきていただきたい。そのため、お子さま向けのサービスを厚くしています。「じゃんけんドリンク」といって、店員にじゃんけんで勝ったら無料でソフトドリンクが飲めるサービスの実施や、ソフトクリームを自作できる機械の設置などです。また、お子様連れのご家族には、通常6名以上でしか注文できないたこ焼きをつくれるメニューも販売しております。

●異色の「クッキー&クリーム揚げ」誕生秘話

――自分でつくることができると、子供は夢中になりますよね。串カツ田中といえば、ココアクッキーを揚げた「クッキー&クリーム」などの珍しいメニューも知られています。

坂本 「クッキー&クリーム」は、以前アメリカに店舗があったとき、そこの従業員が「ためしに揚げてみたらおいしかった」ということで、レギュラーメニューに採用したんです。でも、これは特例で、普段は副社長の田中洋江が管轄するマーケティング部がさまざまなメニューを開発しています。テストを繰り返して「これはいける」と思う食材でも、まだメニュー化してないものがいくつかあります。今後、タイミングがあれば出していきたいですね。

――一方、大人が楽しめるのが「チンチロリンハイボール」です。サイコロを2個降って「ゾロ目が出たら無料」「偶数なら半額」「奇数なら2倍のメガサイズで料金も2倍」になるというサービスで、多くのお客さんが楽しんでいます。

坂本 確率的には、半分がメガで6分の1が無料、3分の1が半額。どれが出ても、お客様が損しないようになっています。

――「今月はゾロ目が多く出すぎて赤字」みたいなことは起こらないんですか?

坂本 売り上げを見ると、面白いぐらい確率どおりに落ち着いているので赤字にはなりません。サイコロを振るときは店員が鐘を鳴らして盛り上げるんですが、それにもちゃんとマニュアルがあるんですよ。従業員にも、声が小さい人や内気な人など、いろいろなタイプがいるじゃないですか。でも、鐘なら誰でも鳴らせるので従業員もやりやすいし、お客様も盛り上がるのでいいサービスになっていると思います。

●中国人にも人気の高い串カツ

――海外展開は、今後も継続するんですか?

坂本 12月1日には、フランチャイズ店ですが、ハワイのワイキキ横丁という日本の飲食店が並ぶショッピングモールに出店しました。現状、まだ日本でやらなければならないことも多いので、まずは国内を優先しますが、ゆくゆくは海外にも出店したいと考えています。

――では、中国などに出店する可能性も大きい?

坂本 ある調査では、中国人が日本旅行で食べたものでおいしかったランキングの3位に串カツが入っていました。寿司、ラーメン、串カツの順番ですね。揚げ物はアジアで好まれますし、ソース味も受け入れられると思うので、親和性は高いと思っています。

――世界の「KUSHIKATSU」になったら、前編で話が出た、田中副社長の亡き父親が残した秘伝レシピのメモは金庫に入れて保管するような企業秘密になりそうですね。

坂本 そうなるといいですけど、あのレシピは今も田中の家に普通にしまってあると思います(笑)。
(構成=ソマリキヨシロウ/清談社)