「春の高校バレー」こと第69回全日本高等学校選手権大会は、男子は駿台学園(東京)が初制覇で3冠(インターハイ、国体、春高)を成し遂げ、女子は大山加奈や木村沙織らを輩出した名門・下北沢成徳(東京)の連覇で幕を閉じた。1月4日から5日間にわたって熱戦が繰り広げられた今大会から、東京五輪での活躍が期待できる選手たちをご紹介したい。

 大山加奈、荒木絵里香を擁した2002年、木村沙織、大山未希(加奈の妹)を擁した2003年以来の春高連覇を果たした下北沢成徳では、やはり最優秀選手賞を受賞した黒後愛(3年・180cm)の活躍が素晴らしかった。

 黒後家は、両親と姉、そして愛の4人家族だが、なんとその全員が春高バレー出場経験者。父・洋さんは宇都宮大学のバレー部監督で、宇都宮大を関東1部に引き上げた名将でもある。愛自身は東京五輪を見据えたJVA(日本バレーボール協会)の育成プロジェクト、Team COREのメンバーにも選ばれている。選手としての黒後はレセプション(サーブレシーブ)もできて、スパイクも打てるサイドアタッカーだ。

 春高の決勝では、就実(岡山)相手になかなかスパイクを決めきることができず、試合後に「本当に自分は何もしなくて......。仲間に支えられて勝てました」と涙で途切れながらのインタビューとなった。これから、スタンディング気味の助走を少し修正すれば、よりスパイクの幅は広がるだろう。

 優勝後の記者会見で、名指しこそされなかったものの、何人もの後輩たちに「厳しいことを言ってくれた」「怖かった」とコメントされ、自分でも「成徳は小川先生が怒るチームではないので、自分たちで気づいていかなければならない。だから、コートの上だけでなく、生活のことでも厳しいことを言ってきた自覚はあります」と殊勝な表情で述べた。しかしその直後には、後輩たちのほうを振り返って「そういうことは、会見じゃないところで言ってよ〜!」と笑顔でツッコミを入れて場を和ませた。

 また、同じ下北沢成徳の1年生には、あのスーパースターの妹がいる。NEXT4でブレイクした日本男子バレーのエース・石川祐希の妹である石川真佑(172cm)だ。

 上背はそれほどないものの、兄そっくりのあどけない笑顔で、これまた兄譲りの変幻自在なスパイクを打ちこなす。小川良樹監督も「お兄ちゃんと一緒。あれは天性のものですね」と舌を巻くほど。決勝では11得点を挙げ、自分の持ち味は「スパイクです」と胸を張った。

 現在セリエAに挑戦中の兄とはLINEで連絡を取り合っており、今回の優勝ももちろん報告するという。

「兄のことは尊敬しています。勝負どころとか、最後で決めきるエースとして。兄をマネするということは特に意識していませんが、プレーを見ていて『ああできたらいいな』と思うことはたくさんあります。私もいつか全日本に選ばれて、一緒に2020年(東京五輪)に出たいです」

 一方、黒後と同じくTeam COREのメンバーである宮部藍梨(3年・182cm)を擁した金蘭会(大阪)は、就実とフルセットの激闘を演じた末、準決勝で姿を消した。インターハイ、国体と決勝で成徳と戦った宮部は、「同期や後輩に支えてもらってここまでこれた。本当は、高校最後の試合はまた成徳とやりたかった。私の分も、成徳には頑張ってほしい」と号泣した。

 ナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれた18歳。309cmの最高到達点を誇り、一昨年はシニアの全日本代表として国際大会にデビューを果たした。バックアタックも打てるパワーヒッターなところが魅力だが、昨年から腰を痛め、リオ五輪には選出されなかった。

 黒後とは1年生の頃にユース選抜で一緒になるなど仲が良く、黒後も「(決勝は)藍梨の分まで頑張りました」と語っていた。卒業後の宮部はV・プレミアリーグには入らず、関西大学リーグ1部の神戸親和女子大に進学し、バレー部で活動を続けるという。

 神戸親和女子大は、元全日本代表でスポーツキャスターの大林素子さんが客員教授を務めている。大学在学中に東京五輪を迎えることになるが、過去にも廣紀江(ひろのりえ)など、在学中に五輪に出場した選手はいた。その身体能力と、シニアでの経験を活かして活躍してほしい。

 男子の注目選手でいうと、高校バレー3冠を成し遂げた駿台学園の村山豪(3年・192cm)の存在感は際立っていた。

 ポジションはミドルブロッカー(センター)とオポジット(セッター対角。スーパーエースと呼ばれることも)を兼任する。試合中にポジションを変え、ミドルで入っていても、クイックだけでなくライトからのオープンなトスを打つこともできる。

 アフリカ系のハーフで手足が長く、上半身、下半身ともがっちりしている。また、長身の選手にありがちな鈍さもなく、足下にきたボールを丁寧に処理する機敏さも兼ね備えている。

 卒業後は早稲田大学に進学し、バレーを続ける予定だ。決勝後、東京五輪について聞かれた村山は、「まず高校バレー生活3年間をしっかりすることが先決だと思って、今日までそれは考えないようにしていました。明日からは分かりません(笑)」と煙に巻いた。

 今大会で男子の最高到達点を誇ったのは、上越総合技術(新潟)のエース・新井雄大(3年・188cm)だ。最高3m50 cmに達する選手は、Vリーガーでもなかなかいない。ジャンプ力を生かして体を大きく反らせ、叩きつけるパワースパイクが魅力だ。

 石川祐希の母校である強豪・星城(愛知)と1回戦で当たり、「石川2世」と言われる都築仁(3年・194cm)との打ち合いを制したが、優勝した駿台学園と2回戦で対戦して散った。卒業後は全日本のエース・清水邦広を輩出した東海大学に進学する。

 ここまで5選手を紹介したが、下北沢成徳OGで、北京五輪に出場した大山加奈は今年の春高をどう見たのか。その印象を聞いた。

「後輩たちが連覇を成し遂げてくれて、本当に嬉しいです。私たちの頃は、私や(荒木)絵里香、(木村)沙織がいたので、高さで勝ったところがありました。今の成徳は、それに加えてメンタルが強くなっていると思います。

 東京五輪で期待の選手というと......。やはり黒後愛選手が筆頭ではないでしょうか。もう五輪まで3年しかないですけど、彼女ならきっと日の丸をつけて頑張ってくれると思います。石川真佑選手も、うまさとメンタルの強さがある素晴らしい選手。お兄ちゃんに似てますね(笑)。東京五輪以降まで目を向けたら、今大会からたくさんの選手が台頭してくれると思いますよ」

 春高を湧かせた実力派の高校生たちはどんな成長を遂げていくのか。次のステージにも注目したい。

中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari