大阪の冬の風物詩である「花園」こと全国高校ラグビーは、『奪』を合言葉に掲げた東福岡(福岡県)が春の選抜大会、夏の7人制大会に続いて2年ぶり6度目の優勝に輝き、見事に「高校3冠」を達成して幕を閉じた。

 福岡という街は全国でも有数の「ラグビーどころ」として知られ、131人の部員を誇る東福岡は地元のラグビースクールから選抜された選手の多くが入部している。よって、選手たちのラグビー理解度とスキルは高く、東福岡はここ10年で6度も決勝進出を果たしている。特に今年度のチームは、昨年度2年生ながら高校日本代表でも活躍したキャプテンLO(ロック)箸本龍雅(3年)がチームを引っ張り、「2年前に史上最強と呼ばれたチームをしのぐ」とも言われていた。

 今年度の東福岡はFWの平均体重100kgと重量感があり、パワーとスピードを兼ね備えたチームに仕上がった。「フィジカルはぶれない」という信念を持つ藤田雄一郎監督は、専任トレーナーを招聘してメニューを作ってもらい、朝練習では筋力トレーニングやスピードトレーニングなど、ボールを持たないトレーニングを重ねてきたという。その結果、福岡県予選では4試合で平均111得点を記録し、守っては1トライしか許さなかった。

 そして花園でも、東福岡の攻撃力はいきなり爆発した。初戦となった2回戦の浜松工(静岡県)戦ではほぼフルメンバーを揃えて139−0で大勝し、1試合の大会最多得点記録を更新。その後も攻撃の勢いは衰えることなく、2年前に同校が残した298点を超える5試合計311得点を挙げ、大会最多得点記録を樹立した。

 ただ、東福岡の王座奪還への道のりは、周囲が思うほど平坦ではなかった。

 準々決勝ではタックルや接点に強みを見せる京都成章(京都府)に苦しみ、残り20分で12点差をつけられた。それでも焦ることなく、冷静に得点を重ねて28−22で逆転勝利したが、続く御所実(奈良県)との準決勝でもモールに苦しみ、前半で11点差をつけられている。しかし、「俺にボールを集めろ!」とLO箸本キャプテンがチームを鼓舞し、25−24の1点差で逃げ切って決勝進出を果たした。

 迎えた決勝の相手は、昨年度「高校3冠」を達成し、連覇を狙う東海大仰星(大阪府第1)。互いに尊敬し合うライバルであり、東福岡にとっては昨年度の花園・準決勝で敗れた因縁の相手だ。

 今年度の東海大仰星は、春の選抜大会・準決勝で桐蔭学園(神奈川県)に敗戦。昨年11月の大阪府予選でも大阪朝高に12−10の僅差でかろうじて勝利するなど、苦しい戦いのなかで花園の切符を獲得した。だが本戦に入ると、湯浅智大監督が「ここまで大会中に伸びるチームは見たことがない」と言うほど、チームは勢いに乗っていた。

 接戦が予想された決勝戦。東福岡は「準々決勝、準決勝は相手どうこうのラグビーをしていたので、FWとBKが連係するラグビーをして開始1分でトライを獲りに行こう」(LO箸本キャプテン)と意気込んで臨んだ。準決勝までの東福岡は、FWでまず近場を崩してからBKで外に攻めるというラグビーを展開していた。しかし、決勝戦ではいきなりボールを左右に大きく動かし、開始から10分間、東海大仰星を相手に攻め続けた。

 先制点を挙げたのは東福岡。前半19分、相手がノックオンしたボールをCTB(センター)森勇登(3年)が拾い上げ、ステップやハンドオフを交えて60m走りきってトライを奪った。

 準決勝で左ひざを痛めていたBKリーダーのCTB森は、患部への痛み止め注射とテーピングを巻き、決勝の舞台に強行出場していたという。「花園で優勝するために3年間やってきたので、出ないわけにはいかなかった」との想いで、森は前半ラストでもボールとインゴールの間に身体を入れて相手のトライを阻止するなど、果敢なプレーを見せた。

 後半早々、東福岡は追加点を挙げたものの、東海大仰星も2トライを重ねて14−14の同点となる。さらに13分、東海大仰星は畳み掛けるように攻撃してきた。しかし、東福岡は相手のノックオンに乗じ、自陣22mライン付近から素早いカウンターアタックで反撃。2年生WTB(ウィング)焼山功雅がタックルを受けながらもつなぎ、最後は内側をフォローしていたCTB堀川優(3年)が50mを走り抜けてトライを奪った。

 前半に続いて切り返しから奪ったこのトライは、東福岡の持ち味のひとつだ。「アンストラクチャー(崩れた状態)からの練習は1年間やってきた。前を向けていましたし、どこのスペースがあるかもわかっていました」(CTB堀川)。続く後半16分にもCTB堀川は個人技で相手のタックルをかわし、インゴール右隅に飛び込んだ。

 東海道仰星も、粘りを見せる。3つ目のトライを奪って28−21まで追い上げてきた。しかし後半26分、東福岡はマイボールキックオフを2年生No.8(ナンバーエイト)がタップしてキープに成功。さらに東海道仰星の最後の攻撃も前に出るディフェンスでミスを誘い、そのままノーサイドを迎えた。

 試合後、東海大仰星の湯浅監督が「ラグビーをよく知っている」と脱帽したように、東福岡は細かな局面で常に相手よりも一枚上手だった。藤田監督が「やってきたことが後半の最後10分に出る」と語り、同点になっても「選手ひとりひとりがやってくれると思ったので焦りはなかった」とLO箸本キャプテンも振り返ったように、東福岡が勝負どころで冷静さ、底力を発揮した大会だったといえよう。


斉藤健仁●取材・文 text by Saito Kenji