『Web Sportiva』をご覧の皆様、はじめまして。市川紗椰です。

 私はアニメや鉄道、グルメなど、自分が興味を持ったものをとことん極めたい性格で、相撲もその対象のひとつです。大学生の頃から本格的に見始め、今では両国国技館や地方巡業にも足を運ぶほどのめり込んでいます。僭越(せんえつ)ながら、1月8日から始まる初場所で注目する力士について語らせていただきます。

 まず幕内の上位陣でいうと、昨年「綱取り」に挑んだ大関・豪栄道は外せません。度重なるケガに耐え、昨年の9月場所で初優勝を飾った際には、自分のことのように喜びました。というのも、豪栄道は私が相撲にハマるきっかけを作ってくれた力士でもあるんです。最初は顔立ちが好きで応援していたんですが、短い腕でまわしをがっちりと掴んで離さない取り組みを見て「不利な体格が有利に働くことがある」と知り、相撲観戦が一気に面白くなりました。

 2014年の7月場所で12勝を挙げ、大関昇進を決めた頃は「このまま横綱に上りつめるのでは?」という勢いがありましたが、そこから左肩や右手首などケガが続き、土俵上で慌てる悪いクセもあって、カド番を経験すること4回。すっかり影が薄い大関になっていました。

 これまでの豪栄道には、彼を奮起させる「周囲の期待」が足りなかったように思います。綱取りがかかっていた先場所は、2回の物言いがどちらも黒星になってしまう不運もあって9勝に終わったものの、慌てずしっかり前に出る相撲ができていました。ケガも癒えたようですし、初場所ではまた優勝争いに加わってくれることを大いに期待したいです。

 その豪栄道と同学年の大関・稀勢の里に関しては、実力を出し切れるかどうかに尽きます。昨年は年間最多勝を受賞したものの、5月場所から3場所続いた綱取りには、いずれもあと一歩のところで届きませんでした。

 特に、白鵬が休場して綱取り最大のチャンスだった9月場所では、初日から黒星を喫するなど、精神面の弱さが出てしまいましたね。落ち着いて相撲を取れているかのバロメーターは、まばたきの回数。昨年はその回数が減ってきて安定した結果を残せるようになったので、それを大一番でも持続できるかが、もう一歩踏み出すためのカギになると思います。

 初場所の成績次第では横綱昇進の可能性もあるようですが、稀勢の里の場合は、豪栄道とは反対に過度な期待をかけないほうがいいかもしれません。実際、綱取りの重圧がなくなった先場所は3横綱に土をつける大活躍をしました。応援しすぎるとプレッシャーになりそうなので、私もひっそりとエールを送ることにします。

 幕内の下位や十両では、小兵力士に注目しています。「居反り」など変わった技を持つ十両の宇良(173cm)のように、相手の攻めをかわしながらスキをついて攻撃に転ずるのが得意な力士も多いんですが、最近は体格の大きな相手に真っ向からぶつかっていく力士の活躍が目立つようになりました。

 初入幕を果たした先場所で10勝を挙げ、敢闘賞を受賞した172 cmの石浦がその筆頭ですね。彼の最大の特徴は、筋肉がパンパンに詰まった体。でも、大学時代には腸の病気で体重が減ってしまい、一度は相撲を諦めたそうなんです。

 卒業後、オーストラリアへ語学留学して格闘技を志すなどさまざまなことに挑戦する中、インターネットで見た相撲の動画に触発され、角界入りを決意したという異色の経歴の持ち主です。帰国前の激しいトレーニングで身につけたパワーと、持ち前のスピードを活かした相撲は幕内に上がる前から注目していたので、先場所の活躍は嬉しかったです。さすがに相手力士も研究してくるでしょうから、初場所は試練の場所になるかもしれませんね。

 その石浦の跡を継ぐように、似たタイプの相撲を取る照強(てるつよし)が初場所で新十両昇進を果たしました。彼は阪神大震災の当日に生まれた力士として話題になりましたが、先場所は幕下を全勝で制するなど実力も折り紙つき。169 cmと石浦よりも小柄ながら、素早く相手の懐にもぐりこんでグイグイと寄せていく相撲は見ていて楽しいです。21歳とまだ若いですし、十両でも存分に暴れてほしいです。

 一方で、十両には今年で39歳になるベテランの安美錦がいることも忘れないでください。技の引き出しが多く、飄々(ひょうひょう)とした取り口が大好きなんですが、もともとの古傷だった右ヒザのケガに加えて昨年の5月場所に左アキレス腱を断裂した影響で、十両に陥落してしまいました。

 名だたる力士としのぎを削りあってきた安美錦が、十両で思うような相撲が取れない姿を見ると、胸が苦しくなります。年齢もあって、「引退」の2文字が頭をよぎっているかもしれませんが、最後の花道を飾るためにもう一度奮起して、幕内に戻ってきてほしいです。

 今の相撲界には、幕内から十両までさまざまなタイプの力士が揃っています。優勝争いも熾烈になると思いますが、初場所はぜひ、ちょっと早い時間から取り組みを見てみてください。