『海洋レストラン☆海猫亭』の主人公、イーヴルージュ(通称イヴ)。

写真拡大

 同人ゲームサークル『犬と猫』の名作シミュレーションゲーム、『海洋レストラン☆海猫亭』iOS版がリリースされ、AppStoreで配信開始となった。価格は480円(1月22日までは半額)。

 同作品は元々、2007年に公開されたPC用シェアウェアゲーム(税別1,000円)である。同年の第9回ベクタープロレジ大賞でアミューズメント部門賞を受賞した。その後携帯アプリ版、Android移植版もリリースされていたが、iOSへの対応はこれが初めてとなる。

 そもそも、「同人」の「シェアウェアゲーム」とは、どのような世界なのだろうか。まず、ネット上のゲームは、大きく二つに分けることができる。大手メーカーが作っているゲームと、個人もしくは少人数の同人サークルが作っているゲームだ。また別の角度からも分けることができる。有料のゲーム(シェアウェア)と、無料のゲーム(フリーソフト)だ。

 ごく大雑把にいって、当然のことではあるが、大手メーカーが作った有料のゲームの方が、作品としての完成度の平均点は高い。逆に、個人の作ったフリーソフト(大手メーカーによるフリーゲームは皆無ではないが非常に珍しいので論じない)は、何しろタダなので、手軽に遊べるというメリットがある。外れて元々、と言ったところがある。

 しかし問題は、「無名作者もしくは無名のサークルによる、有料のゲーム」である。この世界は、はっきりいって魔界だ。たまに良作に遭遇すれば「掃き溜めに鶴」という言葉がそのまま当てはまるような世界なのだ。

 しかし、魑魅魍魎ひしめく同人ゲームメーカーの中で、筆者が「この作者の作品ならば安心しておすすめできる」という存在が3つだけある。一つは、『ファタモルガーナの館』で知られる同人サークル『ノベクタクル』。一つは、天才インディーズゲームメーカーSmoking Wolf氏の『シルバーセカンド』。そしてもう一つが、このサークル『犬と猫』である。

 『犬と猫』は元々、フリーゲーム制作サークルであった。今でも何作品かフリー公開が続いている作品があるが、中でもその名を高からしめたのが経営シミュレーションゲーム『レミュオールの錬金術師』(2004年)である。

 その後、『犬と猫』は、フリーゲームの制作をすっぱりと止め、シェアウェア一本で活動していくようになるのだが、その第一作目にして出世作となったのが、『海洋レストラン☆海猫亭』だった。

 海猫亭は、レミュオールの錬金術師のリメイク作と位置付けられている。主人公は変更され、ゲームシステムは大きくバージョンアップされていたが、「店舗を経営するシミュレーションゲームである」という基本は忠実に受け継いだのだ。プレイヤーは、宿屋の娘「イヴ」となり、宿屋の一角に設けられたレストラン「海猫亭」を大きくしていく。

 一般論として、フリーゲーム制作者がシェアウェアに転向すると、ファンからは顰蹙を買うことが多い。しかし、海猫亭は、蓋を開けてみれば大喝采をもって迎えられる傑作であった。「これで1,000円ならば出す価値はある」と。以後、『犬と猫』はおよそ年に一作ほどのペースでシェアウェアゲームをリリースし続ける、業界の小さな大御所となっている。

 また、今年の春には、新作『王国のソウルスミス』の公開も予定されている。こちらは鍛冶屋経営シミュレーションゲームだという。