2017年「変化の時代」市場価値ある人材は転職する?

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■2016年は人口減少問題を感じさせる年だった?

ヘッドハンターにとって、昨年がどんな年だったのかというと、端的にいって日本の人口減少の問題を切実に感じる1年でした。そのことは、私どもに対する小売業界からの問い合わせが、減少したことが物語っています。当社の創業は2003年ですが、その当初人材紹介の多かった業界が2つあります。

一つは日本の基幹産業である製造業。もう一つは小売・サービス業です。08年に起きたリーマンショックまでは、この2業種で受注全体の7〜8割ほどを占めていました。それが一昨年から今年にかけてみてみると、小売業界からの依頼が激減したのです。その背景として、消費の低迷(人口減少と高齢化社会へのシフト)や小売業界内での企業統合・再編、いわゆる持ち株会社方式での資本提携が進んだことがあげられます。

それにより採用戦略が変化したのでしょう。グループ内の人材交流が活発になり、新たに外部から採用をしなくても、それまで自社にいなかったタレントを発掘するということが出来るようになりました。そうなると、基本的に新卒をじっくり育てていくことになり、中途採用もごく一部に限られるため、私たちエージェントが出る幕はそれほど多くありません。

経営者が新たな経営課題に取り組むにあたっては、グループ内の幅広い人材やチームから精鋭を選抜するはずです。その半面で、人材がだぶついていることも事実です。そうなると、今後、リストラが進むかもしれません。そのような厳しい状況の中でも、小売業でいえば、ダイエーや西友の出身者の中で常に問題意識を持ちながら(創造的思考力)仕事に取り組んできた人たちが、同業他社でも活躍するケースを多く見てきました。このような方々は創造的思考力(イノベーション力)が鍛えられているので市場価値が高く、同業種に留まらず異業種にも転職し活躍しています。

小売業というのは成熟産業なので、経営の核となる人材を多く輩出しています。一橋大学の野中郁次郎名誉教授の言葉を借りると、マネジメントの現場にあって「ミドルアップダウン型」で仕事をしてきた人材は、経営者との相性が良ければリーダーとして能力発揮できる機会が多いと考えます。彼らに共通しているのは、思考する力(創造的思考力、イノベーション力)と責任感(リスクをとる覚悟)。そんな人材にスポットがあたったのが一昨年あたりまでだったといっていいでしょう。

会社のピラミッド型組織図をマネジメント層、ミドル層、実務層と3層に区分しますと、一昨年までは、マネジメントとミドルの両方にまたがる指揮者型人材(プロデューサー型=創造的思考力の持ち主)、すなわち部長、本部長クラスから取締役にスポットがあたっていました。ところが、昨年から今年にかけては、ミドルのど真ん中から一部の実務層、すなわち部課長から係長に寄ったところの引き合いが多い。つまり、オペレーション業務を担うスタッフ型かスペシャリスト型人材の案件が多いということです。

■時代を先読みしたイノベーションが起こる

2015年あたりからグローバル案件の依頼も落ち着いています。かつては、インドやベトナム、東南アジア諸国など新興国への事業進出に伴う現地法人への駐在員の派遣、あるいは、そうした国々での戦略立案をサポートしていく本社機能を構築するための、グローバル部門人材の採用依頼がそれなりにありました。

こうしたグローバル人材に関しても、ポジション的には実務レベルにシフトしています。理由として考えられるのは、現地での経営戦略が固まり、それをオペレーション段階でいかに運用していくか、攻めていくかというフェーズに移行しているのだと思います。そのため、運用に属性を持つポジションが目立ってきたといえます。

「女性の輝く社会」を訴える安倍政権の誕生以降に増えていた女性管理職案件にも、変化が見え始めています。15年度までは女性管理職の登用に力を入れる企業は多かったのですが、現在は減速傾向にあります。一時的な現象でなければいいのですが、心配な部分でもあります。

一方、海外企業が人材を求める動きは一時に比べると減少傾向にありますが、まだそれなりにあります。具体的には、日本企業に勤める人材を採用したいという外資系、特に韓国や中国とアジア系の企業です。しかし、現実には人は動きません。先日、電機大手の幹部にお会いしたら「また誘いが来たよ」と話してくれました。以前は、かなり強引だったのが、現在では打診程度で半分は諦めモードだといいます。

そこで、来年の見通しですが、状況が変化し変革期に突入すると考えています。世界的には、イギリスのEU離脱や米国のトランプ大統領就任のように誰もが予測しにくかったことが起きました。国内も高齢化社会への対応のためパラダイムシフト級の動きがあると思えるような業界もあります。実は、我々の業界は世の中が安定していると動きとしては少なく、変革期のほうが求人相談や依頼が多くなる傾向があります。

その意味で、経営者のマインドも「何かが変わりそうだ」という変革モードにギアシフトするのではないでしょうか。その際、時代を先読みしたイノベーションが求められますが、それ自体はトップの役目。今後はそのイノベーションを実現させるべく、既存事業への影響力を維持しつつも海外展開、新規事業や先端技術開発のための人材獲得にも目が向くはずです。私どもの業界からするとチャンスだと思っています。

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武元康明(たけもと・やすあき)
サーチファームジャパン社長
1968生まれ。石川県出身。日系、外資系、双方の企業(航空業界)を経て約18年の人材サーチキャリアを持つ。経済界と医師業界における世界有数の トップヘッドハンター。日本型経営と西洋型の違いを経験・理解し、それを企業と人材の マッチングに活かすよう心がけている。クライアント対応から候補者インタビューを手がけるため、驚異的なペースで飛び回る毎日。2003年10月サーチファーム・ジャパン設立、常務、08年1月社長、17年1月会長、半蔵門パートナーズ社長を兼任。

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(サーチファームジャパン会長 武元康明 岡村繁雄=取材・構成)