破壊力抜群の「トランプ砲」 企業ができる備えと対策は?

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先週、日本企業と韓国政府が立て続けに、ドナルド・トランプ次期米大統領によるツイート攻撃、通称「トランプ砲」のあおりを受けた。

トランプは5日の投稿で、トヨタ自動車に対し、メキシコで米国向けの自動車を製造する新工場の建設を進めれば「重い国境税」を課すと警告。またニューズウィーク誌は同日、韓国政府がトランプのツイッターアカウントを常時監視する担当官を任命したと報じた。

米国と長年にわたり友好関係を築いてきた同盟諸国は、大統領就任後のトランプが、ツイッターを通じて発信する予想外の外交政策に慣れていく必要がある。また、米国内外の企業も、トランプが自分の気に障る企業判断に対し発する脅しに慣れ、株価への影響に対処する必要がある(トヨタの株価はトランプの批判ツイートを受けて一時3%も急落した)。

ましてや、トランプのアカウントが何者かに乗っ取られたらどうなるだろうか。

バズフィードのジョゼフ・バーンスタイン記者は、トランプのアカウントが2013年にハッキングされたことを挙げ、「何者かがトランプのツイッターに侵入し、ある企業について(トランプがしてきたように)称賛したり、批判したりした上で、それに準じた株取引をする可能性がある」と書いている。

また、ニューヨーク・タイムズの経済記者、ニール・アーウィンはトヨタに関するトランプの投稿を受け、「オバマ時代の規制を嫌ってきた企業は、今後4年間にわたって資本的支出の決定を事細かに管理する新大統領に大喜びだろう」と皮肉っている。

だが私が言いたいのは、トランプのツイート内容の是非ではなく、それをどのように受け止め、対策を講じるか、ということだ。これまで実証されてきたように、この「トランプ砲」の矛先は、どんな人物にも、どんな企業や国にも向けられ得るのだ。

現代自動車のソウル本社は、私が2010〜13年にグローバル広報部門を取り仕切っていた際に初のツイッターアカウントを開設し、同時に批判的ツイートへの対処法についての指針を作成した。だが当時想定していたのは不満を抱えた自動車購入者からのクレームや、韓国の犬食文化の撲滅を求める外国発の運動に巻き込まれた際の対応だった。

大国の首脳からツイッターで攻撃を受けるなど、当時からしてみれば予想だにしない事態だ。企業や外国政府にとって、こうした「トランプ砲」への対処法を策定することは初めての経験となるだろう。以下に、私が考案した指針の例を紹介する。

・トランプの典型的な攻撃材料となる自社の弱みを把握すること。グローバル企業であれば、米国の雇用を奪うような施策、米国企業であれば、製品部品や労働力を海外に求める施策が標的となるかもしれない。

・自社の施策を正当化できるデータを1ページにまとめた表を用意すること。トランプの言動は予想できないため、プレスリリースを事前に準備することは不可能だ。だが例えばトヨタはトランプの投稿後に出した声明で、同社がこれまで米国に219億ドル投資してきたこと、米国内10か所に工場を建設し2,500万台の自動車を生産してきたことを強調しており、データを事前準備していたことは明らかだ。

・レイオフ(一時解雇)や事業拡大、買収・合併、資本的支出、幹部による講演など、注目を集めることが予想される全ての活動について、「トランプは何とツイートするだろう」と自問すること。

・私の地元ウェストバージニア州のことわざに、「スカンクと小便のかけ合いはするな」というものがある。トランプの批判ツイートに誤った情報が含まれていた場合、ツイッター上で反論したい気持ちになるのは理解できるが、そこはぐっとこらえて、自社のイメージ保持を優先すること。さもなければ、ツイッター上の悪名高いトランプ支持者から集中砲火を浴びることになる。

・公の場で、理論的かつ冷静に対応すること。自社について日常的に報じている従来型メディアやネットメディア、ジャーナリストらを通じて声明を出せば、伝えたいメッセージを最良の形で発信できる。

・ファクトチェック(事実検証)に積極的で反トランプ寄りのメディアや論説委員と良好な関係を構築すること。

トランプとそのツイートに限って言えば、私たちは未踏の領域へ足を踏み入れようとしている。各国政府はトランプのツイートの不正確さと威嚇行為に備えなければ、同盟関係に傷をつけたり、深刻な結果につながる誤解を生んだりしかねない。国内外の各企業もまた、トランプの逆鱗に触れてしまった際の対策を用意しておく必要がある。