昨年2月の東京マラソンで日本人3位。青学大を卒業後、マラソンで世界に勝つための練習に専念することで、さらなる成長が期待される

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今年も正月の風物詩である箱根駅伝が幕を閉じ、青山学院大学、そして学生陸上長距離界のエースとして活躍してきた一色恭志(いっしき・ただし)も間もなく卒業。春からは実業団のGMOアスリーツに加わり、2020年東京五輪に向けた取り組みを本格化させる。

「今まで多くの選手を見てきましたが、一色はスタミナとスピードともに間違いなくトップレベル。楽しみです」

そう語るのは、現役時代に2度の五輪出場を果たし、現在、GMOアスリーツで指導を行なう花田勝彦監督だ。事実、一色は昨年2月の東京マラソンを2時間11分45秒と、初マラソンにしてはまずまずのタイムで走り、6月の日本選手権5000mも4位。花田監督の言葉どおり、潜在能力の高さを結果で示している。

一色のターゲットは東京五輪マラソンでのメダル獲得。近年、日本の男子マラソン勢は世界のトップと大きく差をつけられているが、「取り組み方次第でチャンスはある」と花田監督は話す。

「確かに今、日本人が2時間3分、4分台を出そうとしてもすぐには難しいことは事実です。ただ、国際大会はペースメーカーもいませんし、特に東京は高温多湿の厳しいレースになるので、速さより強さが重要になります。タフなレースを自分の力でコントロールできるようになれば、十分に戦えるはずです」

すでに4年計画での強化策は立案されており、一色も確認済み。春から個別メニューで練習を開始し、まずは2年で日本のトップを目指す。高速化しただけでなく、急激なペース変化が当たり前になった現代のマラソンに対応するため、これまで以上に高レベルのスピードトレーニングも進めていく予定だ。

「彼の能力をもってすれば、今の日本でトップとなる2時間7分台までは比較的スムーズにいくと考えています。トラック種目に取り組むときもマラソンを意識したトレーニングを並行して行なっていきますし、必要に応じ、海外のペースメーカーのいないレースや夏のマラソンなども計画に入れるつもりです」

残りの2年は文字どおり、世界と戦う準備期間。世界のトップ選手に肩を並べるまでトレーニングの質と量を上げ、最終的には24時間のすべてをマラソン中心の生活に変えるよう求めるという。

「かなり厳しいトレーニングになると本人には伝えてあります。強化は科学的なアプローチが基本ですが、それだけでは世界と戦えません。根性論ではないですが、日本人にはアナログな面も必要です。特に、最後の1年はすべてをかけて五輪に向かうことになるでしょう」

現在、GMOアスリーツは駅伝に参戦しておらず、個人種目での強化をチームの最大のテーマとしている。一色自身もマラソンだけを見据え、あらゆるトレーニングに挑む覚悟を語った。

「箱根駅伝の20km対策として、練習で30kmを走ってきました。マラソンとなれば当然、50km以上の練習も必要だと思います。科学的な練習だけでなく、昔ながらの距離を踏む練習は精神的にも強くなれますし、やらないといけないと思っています」

五輪へ挑戦する“箱根のスター”はどのように成長していくのか。その歩みに注目だ。

(取材・文/加藤康博 写真/アフロ)