KDDIの実質的なサブブランドとして注目の「UQモバイル」

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 2016年、格安スマートフォン(スマホ)の競争は激化の一途をたどった。端末と回線のセット販売がトレンドになり、シンプルだった料金プランは急速に複雑化。わかりやすい違いを打ち出すべく、各社はタレント起用や実店舗展開、データ増量キャンペーンなどの「体力勝負」を繰り広げている。果たしてその最前線はどうなっているのか、最近の格安スマホ事情を振り返ってみたい。

●格安スマホがマニアから一般ユーザーへと拡大

 大手キャリアから回線を借り受けて通信サービスを提供するMVNO(仮想移動体通信事業者)は、データ通信端末などを安価に使いたいパワーユーザーが客層の中心だった。だが、「格安スマホ」という言葉が普及してからは、メイン端末としての需要が増加。楽天モバイルでは新規ユーザーの実に8割が音声通話SIMを選択する事態になっているという。

 多くの格安スマホ事業者はNTTドコモから回線を借りており、エリアの広さは共通だ。そこで、どのようにして差別化するかが課題になる。

 目下のトレンドは、大手キャリアにもみられる端末と回線のセット販売だ。端末とSIMカードを別々に買うよりもわかりやすい点が、初心者に好評だという。だが、1年目の料金だけを安価に設定するなどプランは複雑化しており、「格安スマホ=シンプル」という評価は崩れつつある。

 料金の決め手になるデータ容量はどうだろうか。16年、大手キャリアは相次いで「月間20GB」などの大容量プランを導入し、注目を浴びた。これに対して格安スマホは、一時的にデータ容量を増量するキャンペーンを各社が競い合うように導入している。

 特定アプリにおけるパケット無料化も、一部の事業者が積極的に導入する。LINEやTwitter、Facebook、Instagramなどの基本利用をデータ容量としてカウントしないもので、実質的な割引になる。こうした特定アプリの優遇は長期的に競争を歪めるとの懸念もあり、大手キャリアは手を出しづらい領域だけに、格安スマホの差別化ポイントになっているのが現状だ。

●ワイモバイル、UQモバイルという2大「サブブランド」に注目

 格安スマホ業界のなかでやや特殊な存在が、ソフトバンクのサブブランドである「ワイモバイル」と、KDDIグループの「UQモバイル」だ。ワイモバイルは低価格のプランを取り揃える一方、全国に販売店を展開しており、初心者にも安心してすすめられる格安スマホになっている。

 これを追うKDDIは、グループ会社が展開する「UQモバイル」と販売面で協力するなど関係を深めている。ドコモ系MVNOやワイモバイルにユーザーを取られるくらいなら、グループ会社のUQモバイルに移ってもらいたい、との狙いが見え隠れする。

 今後の鍵を握るのが、SIMロックだ。MVNO事業者の大半がドコモ系になっている理由のひとつとして、ドコモの端末ではSIMロックを解除することなく、ドコモ系の格安SIMを利用できるという点がある。そこで格安スマホを促進したい総務省は、KDDIやソフトバンクでもこの方式を導入する構えだ。

 たしかにSIMロックの解除は、制度としては提供されているものの、一般ユーザーには馴染みがなく利用はなかなか進んでいないようだ。だが、SIMロックを意識することなく格安スマホを使えるようになれば、KDDIユーザーがUQモバイルへ、ソフトバンクユーザーがワイモバイルへと、一斉になだれ込む可能性が出てきたといえる。

●格安スマホの「体力勝負」に、大手キャリアも絡んできた

 こうして振り返ると、格安スマホを取り巻く環境はずいぶん変わってきたことがわかるはずだ。当初の格安スマホは、大手キャリアのような店舗網を持たず、サポートなども最小限とする代わりに安価でシンプルな料金プランを提供する、無駄をそぎ落としたビジネスモデルだった。

 だが16年には、格安スマホ各社による大手キャリアの後追いが加速。タレントを起用した発表会やテレビCMは当たり前になり、端末と回線のセット販売や実店舗展開、充実したサポートの提供など、大手キャリア顔負けの施策を打ち出す事業者が続出している。

 こうして販売やプロモーションのコストが増える一方、ファーウェイの最新フラグシップ「HUAWEI Mate 9」は、発売と同時に楽天モバイルなどが値引きを開始するなど、価格競争は激化している。まさに体力勝負の様相を呈しており、そろそろ脱落する事業者が出てきても不思議ではない。

 そこへきて12月には、KDDIがインターネットサービスプロバイダー大手のビッグローブを買収。固定回線の利用者だけでなく、ドコモ系のMVNO事業会社がKDDIの傘下に収まることが衝撃を呼んだ。17年は格安スマホ同士の競争に加えて、大手キャリアの勢力争いがどう絡んでくるかも注目だ。
(文=山口健太/ITジャーナリスト)