障がい者の就労施設は全国で9000カ所もあるが、そこで働く彼らの収入は1日数時間、月20日働いてもごくわずか。障がい者年金を足しても、経済的に自立することはとうてい困難だ。横浜の社団法人がは自立を支援する活動を展開している。資料写真。

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「日本に障がい者は約800万人もおり、家族や親せきも含めると、数千万人が日々悩んでいる身近な問題。皆さんの周りにも必ずいるはず」と訴えるのは、一般社団法人「セルザチャレンジ」(横浜市)の手島大輔理事長。障がい者の就労施設は全国で9000カ所もあるが、そこで働く彼らの収入は1日数時間、月20日働いても月収1万5000円ほどにしかならない。親が死んだら障害を持った子供はどうなるのか?わずかな就労収入に障がい者年金を足しても、経済的に自立することはとうてい困難だという。

進む高齢化、産業の空洞化、消費人口の減少…。このままでは障がい者が受けている封筒書きなど下請けの仕事は減っていく一方である。住んでいる地域を離れられない障がい者が、どうやって生きていくのか。

◆強くなれば弱い人を助けられる

セルザチャレンジは、ビジネスのプロとして活動する障がい児の親・家族と支援メンバーを中心に、2009年に設立されたボランティア団体。障がいのある人が地域でモノ作りや販売の仕事をして、自立できるような支援活動を展開している。

「人は強くなれば弱い人を助けられる」との信念から基盤収益事業を模索。障がい者の仕事を生み出すため、2013年に「福祉とビジネスの融合」を目指した「オーラルピース」プロジェクトをスタートさせた。

オーラルピースは友人が九州大学との産学連携で開発した抗菌剤「ネオナイシン」を活用した口腔ケア歯磨き商品。天然由来の乳酸菌バイオテクノロジー技術を使った革新的口腔ケア用製剤は、虫歯菌・歯周病菌・誤嚥(ごえん)性肺炎の原因菌に対し優れた効果がありながら、誤飲・誤嚥で胃腸に入った場合でも速やかに消化・分解されるという。飲み込んでも誤嚥性肺炎のリスクがないため、高齢者の介護負担を減らし、健康寿命を高めることができる。このプロジェクトは政府の「ジャパンベンチャーアワード2015最高位賞」を獲得、事業を軌道に乗せることができた。

オーラルピースを障がい者が流通・加工作業し、施設や福祉売店で売る。また、近隣の介護施設や歯科医院などに販売したり、届けたりするビジネスモデルも展開中。既に新潟など数カ所で製造し、販売実績も上げている。全国の先進的な障がい者就労施設、約3百カ所と連携。主要なデパートや総合病院、歯科医院、介護施設などでも取り扱われるようになった。2016年秋から、より具体的な「福祉とビジネスの融合」を実現するために新たなステップに挑む方針だ。

◆“包摂社会”尊重へ、貴重な活動

「高齢化が進む日本だからこそできるのがヘルスケア事業。大切なひとのために何をやるか。バイオで社会の課題を解決する天然抗菌剤を使ったヘルスケアの会社としてこれから世界に出ていきたい」と手島さんの夢は膨らむ。主要技術やコアビジネスを日本に残しながら、充てん工場等を海外に展開する。そして世界各地で障がい者の雇用を生み出すことを考えているという。まず人口が日本の10倍で高齢化が進む中国への進出を計画。米国や欧米などへも打って出る方針だ。

さらに全国の障がい者の工賃向上プロジェクトの全国一斉立ち上げ、大きな社会的課題である「障害者の親なき後問題」の解決を実現できる事業展開も模索している。「障がい者を持つ親が安心して生き、死ぬことができる社会。親が死んでも、その子供が元気に人生を全うできる社会。そんな社会を築くことができたらいい」と力説。広く障がい者を支援するサポーター制度も発足、既に経営者、医師や弁護士など百人以上が名を連ねている。「企業の経営者や従業員にとって、障がい者は身近な存在。“包摂社会”や“多様性”の尊重が叫ばれている中、皆で支え合える活動に理解と支援をしてほしい」と呼びかけている。世界中で“自分ファースト”の風潮がはびこる中で、貴重な活動といえよう。(八牧浩行)