2人の出会いは10年以上前

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 「最もセンセーショナルな作品レーベル」として国内外で評価された成人映画レーベル「日活ロマンポルノ」をリブートする「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の1作「牝猫たち」が、1月14日から公開される。本格的な濡れ場に初挑戦した主演・井端珠里と、メガホンをとった白石和彌監督が映画.comのインタビューに応じた。

 本プロジェクトは上映時間80分前後、10分に1回の濡れ場をつくるなどのルールのもと、白石監督ほか塩田明彦、園子温、中田秀夫、行定勲がロマンポルノに初挑戦。「牝猫たち」はワーキングプアの雅子(井端)をはじめ、それぞれの悩みを抱える3人の風俗嬢が東京・池袋の街をさまよいながら、そして何かにすがりながら生きていく姿を描いた。

 「紙の月」「グッド・ストライプス」の井端と、「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」の白石監督。2人の出会いは、10年以上前にさかのぼる。白石監督が師事していた、故若松孝二監督の「17歳の風景 少年は何を見たのか」(2005)。当時高校生だった井端はチマチョゴリ姿で座るワンシーンで出演しており、助監督時代の白石監督と対面している。

 「珠里ちゃんは座るだけで、わけもわからず不安なわけですよ。でも本番でいい顔をしたんです。目の強さ、芯の強さが心に残った。その後、折々『あの子どうしているかな』と頭をよぎっていたんです。そうしたら『断食芸人』に出ていることがわかり、『まだやっているのか』とうれしかった。その時期に面接に来てくれた」。白石監督は、思いがけない再会を振り返る。一方の井端は「当時は精一杯で、一瞬しか現場に居られなかった」と苦笑しつつ、今作主演の経緯を「グループオーディションでは脱ぎ審査もあると言われていたのに、脱ぐことなく『帰っていい』と。落ちたと思い、失恋した気分で帰宅しました。(決定時は)すごくうれしくて。部屋で小踊りしましたね」と明かした。

 映画は風俗嬢の悲喜が、時にコミカル、時に切実に映し出される。なかでも白眉と言えるのが、放浪する女たちが生々しく活写される点だ。田中登監督作「牝猫たちの夜」にオマージュを捧げた白石監督は、「上手くいったのは、珠里ちゃん演じる雅子が行くあてもなく街を浮遊する。歩く先が見えないことが、実は日本社会そのものに見えればと思った」と込めた思いを口にし、「ルポタージュの映像化という感覚も狙っていました。セックス時のカメラワークなども、前貼りをもう少し見えないように練る必要も考えましたが、荒っぽく段取りした後に本番に入り、見えてしまった部分はカットしています。かなり即興性がありましたし、生っぽい映像になったと思います」と手応えをにじませた。

 また、今作ではオールアフレコを敢行。白石監督が「アフレコの良さは本番中にもしゃべれること。『はい、じゃあそこで右のおっぱいに』とか」と述べれば、井端も「すっごいしゃべるんですよ(笑)。お尻も出す濡れ場は初めてでしたが、女優として抵抗がまったくなく、音尾琢真さんとの絡みが面白かったですね。私もきれいに生々しく映りたかったので、腰のそらし方は研究していました」と充実の面持ちだ。

 絡みはシャワールームや屋上などでも繰り広げられ、井端がSMクラブで緊縛されるシーンもある。ロマンポルノの“レジェンド”白川和子が、そのSMクラブのマダム役を担っている。井端は「かつてのロマンポルノでも拝見していました。素晴らしい女優さんです」とあこがれの女優から大いに刺激を受けた様子で、「私は緊縛の痛さから号泣が止まらなくて、縛られたまま白川さんに抱きしめられました。『これからはあなたたちの時代。頑張るのよ』と言われ、その優しさで余計泣いてしまったんです」とエピソードを披露した。

 そもそも「最もセンセーショナルなレーベル」と称された日活ロマンポルノとは、何なのだろうか。井端は「女性の美しさ、たくましさ、ずるさ、真っ直ぐさを詰めた宝箱」と表現する。白石監督は、“生”と“性”のあり方を追求する作品群だと説く。「エロスを追求するものではない。本来『日活ポルノ映画』でよかったものを、なぜ『ロマン』をつけたのか。『性』は心が生きると書きます。ロマンは生きるために必要で、だから今作は、生きていくことを訴える映画にしなければと思った」。2人の言葉通り、スクリーン上で濃厚に絡み合う男女の姿に、生命のきらめきを感じずにいられない。生が性に意味を与え、性が生への情熱を掻き立てるさまを、映画館で見届けてほしい。

 「牝猫たち」は、1月14日から全国順次公開。