Inc.:香港に到着すると、持っていた期待がたちまち色褪せます。スモッグが目や肺を刺激するというのは、大気汚染が記録的なレベルに達した国際都市ならではの問題です。濃い靄が常に立ち込めるなか、めったに見られなくなった青空を子どもたちが待ち望んでいます。

シンガポールに拠点を置くタイガービールは、斬新なマーケティングアプローチを模索していたとき、すすで汚れた空からヒントを得ました。大気汚染の被害が甚大化していることと、新たな環境法や環境問題活動についての認識を高める必要性を考え合わせたタイガービールは、誰もが問題としか考えないところに機会を見出したのです。

「大気汚染」を「黒いインク」に


どのようなコンセプトかというと、大気汚染をインクに変えるというものです。汚染物質を採取するための特別な装置を開発し、トラックや、工場の煙突、クレーンなどに取り付けて、有害な汚染物質を回収。そこからインクを作り出し、大気汚染を芸術に変えることができるようにしたのです。これまで150リットルのインクが使われ、香港の街角やプロジェクトのウェブサイトAir-ink.comを飾るアートに生まれ変わりました。



「香港の街角は、タイガービールがよく似合うというだけではなく、創造性やアイデア、情熱が生まれる場所でもあります。わが社の起業精神を発揮して公害をインク――創造性を支える血液――にリサイクルすることで、クリエイティブな人々にツールを与えて街を美しくしてもらったり、発明家を後押しして、大気汚染に対し、小さくも影響力の強いアクションを起こしてもらっています」。Heineken Asia Pacific社の国際的ブランド、タイガービールのグローバルディレクター、Mie-Leng Wong氏は、会社の声明でそう述べています。

タイガービールは、非常に目立つ社会問題に関与し、自社のマーケティング力を使って、社会貢献とブランド促進の両方を実現しました。このユニークなマーケティング手法によって生み出された話題性と顧客ロイヤルティは、数百万ドルの価値をもちます。同時に、このプロジェクトは、香港に住む720万人の生活を向上させる一翼を担ったのです。テレビCMやビルボード広告、デジタル広告を1つ余計に打つよりも、はるかに効果的で影響力が大きいことは間違いありません。

私たちは、つい当たり前な場所にインスピレーションを求めてしまいがちです。自分たちの分野の壁を越えることなどめったにしないので、業界の猿真似合戦から抜け出ることができないのも当然かもしれません。新鮮ですばらしいアプローチを求めるなら、壁の向こうを見る必要があるのです。自分のToDoリストから目を離し、広い可能性の世界をのぞいてみましょう。タイガービールは公害をアートに変えるというマーケティングの成功をおさめましたが、あなた自身が創造性を発揮したら、どんなことが可能か考えてみてください。

機会はそこらじゅうに――誰も思いつかない場所にさえ――転がっています。何もない場所からそうしたチャンスをつかみ出すのはあなたの仕事です。


Hong Kong-based Tiger Beer's Dirty Approach to Innovation | Inc.com

Josh Linkner(訳:和田美樹)
Photo by Air-ink.com