Inc. : あなたが何かに対して深刻な「恐怖心」を抱いていて、心理学者にアドバイスを求めたとしましょう。すると彼らは「疑似体験療法」によって恐怖に立ち向かいなさい、と言うと思われます。

疑似体験療法とは例えば、犬に対して恐怖心を抱いている人の場合、まずは犬をイメージし、次に遠くから犬を眺め、それから少しずつ近づいていって犬と共に過ごすことにゆっくりと慣れていき、最終的には近所の犬を可愛がれるようになるよう持っていく方法です。

恐怖を取り除くためのこの方法は、基本的で、かなり効果的な方法とされています。しかし、強い恐怖で苦しんでいる人にとっては、とてもつらい経験になるはずです。

ですが、「British Psychological Society Research Digest Blog」に掲載された新たな研究から、恐怖を簡単に取り除く別の方法があるかもしれないことがわかりました。


恐怖を取り除く方法とは?


今回発表された研究はごく初歩的なものですが、その内容はまるでSF映画から抜け出してきたかのようです。

この研究のために日本の神経科学者のチームは、自発的に協力してくれる健康な被験者を17名集めました。そして、赤と緑の円を用いて、どちらか一方の色の円が画面に表示された時にだけ軽い電気ショックを与え、そのパターンに対する恐怖心を植え付けました。さらに、被験者がこれらのパターンを見ている間に脳活動パターン・デコーダでスキャンして、脳のどの分野が活性化しているかを解読しました。

次は被験者に、画面に灰色の円が表示されたら自身の脳活動を操作(※編注 : 円に意識を集中させることだと思われます。)してもらいました。また被験者には、その灰色の円の大きさに従って報酬が支払われることを伝えました。

被験者たちには知らされていませんでしたが、灰色の円を大きくする方法は先ほど恐怖心を植え付けた色付きの円を目にした時と同じ色を想像し、その脳の活動パターンを再現することでした。報酬を得るためには恐怖を呼び起こさなければならなかったわけです。

しかし無自覚に色付きの円を想像していたので被験者は訓練中、恐怖をまったく感じませんでした。つまり最初から最後まで、電気ショックと結びつけられた色付きの円を思い出していることに気づかなかったわけです。皮膚電気反射といった恐怖を測る科学的尺度でも、被験者が実際に恐怖を感じていないことが確認されました。

そして、研究チームは被験者に対して、恐怖心を植え付けられていた色付きの円を見せましたが、被験者が感じる恐怖は訓練をする前よりずっと小さくなっていました。


実用化への道は長い


先ほど述べたように、まさにSFの世界みたいですよね。この技術はまだごく初期の段階なので、実用化は困難であると今後判明する可能性もあります。例えば犬などといった対象をイメージするのは、色の付いた円をイメージするよりも明らかに複雑ですから、そうした恐怖と関連する脳活動を解析・再現するのは難しいでしょう。

この研究を率いた脳情報通信融合研究センターの小泉愛研究員は、「難題はたくさんありますが、現時点での結果は、治療への新たな道を切り開く第一歩を示していると期待しています」とコメントしています。


Neuroscientists Have Come Up With a Painless Way to Erase Your Fears | Inc.

Jessica Stillman(原文/訳:ガリレオ)
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