カメラとひとり旅をこよなく愛する編集者兼ライターの宇佐美里圭(うさみ・りか)さん、今年最初の旅先は韓国・ソウル。もう2、3度訪れたことのある人も少なくない女子旅の定番です。でも、今回宇佐美さんが目にしたソウルは、一味違ったよう。

氷点下なのに、エネルギーにあふれる街中

遅まきながら、初めてソウルへ行ったのは昨年の暮れのこと。まずは、あまりの近さに驚きました。羽田からたったの2時間半! ほとんど国内旅行じゃないですか……。もちろん近いのはわかっていましたが、実際に肌で感じるのはまた別物です。そして、これまた当たり前ですが、こんなに近いのに、漂う“空気”が日本とまったく違うのも興味深いことでした。

たとえば、夜の弘大(ホンデ)周辺。クラブがたくさんあり、若者が集う場所として知られていますが、路上にあふれる熱気がすごい! 小太りの若い男の子が完全になりきってロマンチックなラブソングをカラオケで熱唱していたり、寒空の下(絶対マイナスいってる)、公園でDJが音楽を流し、大勢の若者が踊っていたり。なんだかエネルギーにあふれているのです。

道行く女の子たちも噂に違わずかわいい。整形美人だというけれど、あの肌の美しさは天然のはず?! きめ細やかな陶器のような白い肌の人が多くて、見かけるたびに思わず目で追ってしまいました。

そして、韓国といえばデモ大国。折しも、今は朴槿恵(パク・クネ)大統領の退陣を求め、毎週土曜日の抗議集会が盛り上がっている真っ最中。私も滞在しているときに偶然デモに出くわしました。

市内の中心地、三清洞(サムチョンドン)へ向かっていたときのこと。朝鮮時代の正宮、景福宮(キョンボックン)に近づくと、なにやら物々しい雰囲気に。辺り一面を韓国警察の機動隊が埋め尽くしていました。危険な雰囲気はありませんが、機動隊がこれだけいるとかなりの迫力です。しかも、スピーカーからなぜか王朝時代を思わせるような荘厳な音楽が流れてきます。

しばらくすると、人がどこからともなく集まり、デモが始まりました。「万歳○○!」と言っているのはなんとなくわかりましたが、その他は何を言っているのかわかりません。デモの参加者は60代くらいが多かったでしょうか。みんなが国旗を手に、力強く何かを叫んでいました。尋常じゃない大声で泣き叫ぶおばさんの声も聞こえてきて、思わずぎょっ……。

さすがだなあ、と思って一連のデモを眺めていると、突然英語で話しかけてくるおばさんが。「あなた、私たちがなんでデモをしているか知ってる?」びっくりしつつ、「大統領罷免を訴えているんですよね?」と返事をすると、「違うのよ!」。あれ?「私たちは大統領を応援しているの。夜ここで行われる“共産主義者”たちのデモに反対するためのデモをしているのよ!」 とのことでした。

ははあ、なるほど。道理でイメージしていたデモと雰囲気が少し違うはずです。私が出会ったのは保守派のデモでした。後の新聞の報道によると、この日のデモは弾劾無効を訴え、3万人が集まったそう。

すぐお隣の国ですが、歴史が違えば国民性も違うもの。日本とは違うエネルギーが渦巻いていてとても刺激的でした。やはり、実際に足を運び、自分の目で見て体験するということは大事ですね。