Popular Science:人間が別の惑星に旅行する日も近いかもしれません。しかし、その前に答えて欲しい質問があります。宇宙飛行士が惑星間の移動に費やす時間は、何カ月、いや何年だと思いますか?

2017年3月公開予定の映画『パッセンジャー』では、宇宙船アヴァロン号は5,000人以上の乗客を乗せ、新たな居住地を目指し120年間の旅に出ます。乗客は、出発前にそれぞれ冬眠装置に入り、薬や環境のコントロールによって活動を停止させます。100年以上もの宇宙旅行の時間を、冬眠することによって4カ月ほどにするのです。

現在、人類はこの映画のような惑星間旅行ができるところまで来ていませんが、この映画の冬眠技術は現在の事実を元にしています。NASAは、映画と同じようなプロセスで、宇宙飛行士が人工的に冬眠する装置を開発する会社「SpaceWorks」の研究資金提供を支援しています。

NASAには、2030年代に火星に人類を派遣することを目指す「火星旅行」というプロジェクトがあり、SpaceWorksの社長でありCOOであるJohn Bradfordは、その最初のミッションまでには冬眠技術が開発できると考えています。

どのように冬眠するのか


このSpaceWorksの人工冬眠というのは、人間の中核体温(内臓などの環境温度に影響されない深部体温)を32度以下にし、寒さに対する体の自然な防御機能(体が震えるなど)を止めるために鎮静状態にします。

病院では、患者が外傷を負って心停止のような状態で、血流不足で治療にさらに時間が必要な時に、この「治療的低体温」や「目標温度管理」と呼ばれる処置をします。低体温状態の患者は気絶したような状態で、新陳代謝を落とし、虚血性障害(低血流によっておこる栄養不足や酸欠による組織損傷)のリスクを低くするために、神経を保護する活動をします。体が回復したら、医師は体温を戻し、他の怪我に対処することができます。

しかし、患者は通常この状態を数日間しか続けられません。これまでの実験での最長期間は、中国の研究でおこなわれた14日間で、患者にマイナスの副作用が出て、これ以上続けられないことがわかりました。Bradfordは、健康な人体でその期間を延長するために、SpaceWorksは現在のテクノロジーを進化させることができると考えています。

おそらく予想以上に、現実は人工冬眠に近づいています。しかし、依然として多くの問題が残っており、実現するには多くの進歩が必要です。

映画のように100年以上もの冬眠をするのではなく、乗組員は2週間ほどの冬眠を何度も繰り返すことになるとBradfordは言います。2週間の冬眠の後、乗組員は蘇生し、数日間で回復し、それからまた別の冬眠サイクルに戻ります。

弊社の医療チームは、冬眠サイクルに対する1回の冬眠期間により関心があります。回復期間があれば、長期間の冬眠の影響がないように思われるからです。

映画では、コンピュータが宇宙船と宇宙船の機能を監視しています。しかし、現実では、最初の試験期間は少なくとも常に1人は起きていて、乗組員とシステムのケアをすることになるだろうとBradfordは言います。

しかし、SpaceWorksは、テクノロジーの進化に合わせて、火星までの旅行期間全体に対して、乗組員が冬眠する期間を徐々に伸ばしていきたいと考えています。栄養が詰まった液体の静脈点滴で、乗組員は無意識の状態で生命を維持することができます。

映画と違って、SpaceWorksは老化を止めたり、寿命を長引かせることはしません。したがって、映画のように長期間の宇宙旅行をしたら、目的地に着いた時には120歳年を取っていることになります。

しかし、技術の進化によって、もっと効率的に長期間の宇宙旅行ができるようになります。SpaceWorksは、乗組員一人あたりに必要な宇宙船のスペースを減らすことに積極的に取り組んでいます。

乗組員が冬眠していれば、必要な居住空間や宿泊設備、食料などが少なくて済み、高速移動や、放射線シールドを厚くするような、乗組員を守る技術の開発に注力することができます。「弊社では、人間に必要な食料や消耗品をできるだけ減らし、必要なスペースをできるだけ小さくすることを目的に取り組んでいます」とBradfordは言います。SpaceWorksは、NASAの宇宙船全体の重量を、構造にもよりますが、52〜68%まで減らせると考えています。

宇宙船が小さくなれば、宇宙旅行もより安価になり、そうすれば現実的に私たちが宇宙旅行に行ける日がさらに近づくということです。


The hibernation science in 'Passengers' is not far from reality|Popular Science

Jason Lederman(訳:的野裕子)
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