photo by Mike Mozart via flickr(CC BY 2.0)

写真拡大

 9月にドイツのバイエル(BAYER)が米国のモンサント(MONSANT)の買収を決めたことが世界で注目を集めた。(参照:「HBOL」)

 そのモンサントの株主が12月に売却OKのサインを出した。買収金額は660億ドル(7兆5900億円)。売却に伴い同社の株価は5月に買収の噂が広まった頃に比べ44%アップの一株128ドルの値がついた。(参照:「iProfesional」)

 バイエルは2011年から負債総額が増大しているが、アグリビジネスの強化そして将来の発展性には今回の買収は有効と見られている。また、買収資金についてはクレディ・スイス、ゴールドマン・サックス、HSBC、JPモルガン、バンク・オブ・アメリカが融通することになっている。

◆バイエル+モンサント以外も「大再編」

 一方、ダウ・ケミカル(DOW)とデュポン(DU PONT)の合併では、7月に双方の株主が590億ドル(6兆7800億円)の株式交換による対等合併を承認した。3社に分割する為に雇用の整理などを行い、同じく関係当局からの合併承認を受けて2017年の第一四半期に正式に合併が成立すると見ている。

 さらに、2017年の第一四半期に買収が成立する予定になっているのが中国加工集団(CHEM CHINA)によるシンジェンタ(SYNGENTA)の買収も買収金額は430億ドル(4兆9500億円)で決まっている。

 即ち、種子並びに除草剤、殺虫剤、防カビ剤など化学薬品で占めるアグリビジネスで世界を支配して来た大手6社が2017年には3社に集約されるということである。競争の寡占化である。この6社で化学薬品市場の75%、種子市場の63%、アグリビジネスの研究開発で75%を占有することになるというのである。一般的に寡占化に成ると消費者にとって良い結果が生まれなくなるのが常である。生産及び供給業者が消費者の希望を無視して生産業者の都合の良いように商品選択の幅を狭めるようになる傾向があるからである。(参照:「iProfesional」)

 集約された3社のアグリビジネスに占める市場占有率は<バイエル・モンサント23%、ダウ・ケミカル・デュポン16.3%、中国集団加工・シンジェンタ16.2%>という割合になっている。

◆バイエルが興味を抱くモンサントの「GMO技術」

 バイエルの場合はモンサントを買収することによって、<これまでの健康・薬品分野67%とアグリビジネスの分野30%の割合を、ほぼ49%と49%>に製品内容を変える意向を計画している。(参照:「THE WALL STREET JOURNAL」)。特に、バイエルが強い関心を持っているのはモンサントの遺伝子組み換え種子(GMO)である。

 GMOのヨーロッパでの普及は難しい。何故なら、EUでは食品表示義務があり、また市民もGMOに批判的であるからだ。バイエルがモンサントを買収する際にも、ヨーロッパではそれに批判的であった。何故なら、モンサントはGMOのパイオニアであるからである。ヨーロッパではバイエルがGMOを積極的にヨーロッパ市場で導入するのではないかと懸念されているのだ。しかし、バイエルはその点は当初からアメリカ市場や中国市場を対象にしたものであると明確に表明していた。

 GMOについてアメリカでは盛んに採用されているが、GMOによる作物の身体への危険性を指摘している研究も少なくない。また、GMOの普及によって大量生産が可能になり、既存の種子での栽培が採算ベースに乗らなくなったというケースがメキシコのトウモロコシの栽培であった。これによって、メキシコの農民が職場を失ってアメリカへの移民を余儀なくさせられた。

 更にモンサントについては、除草剤ラウンドアップでの健康上の被害も記録されている。その上、それに耐える雑草も生えるようになり、それを更に駆除する新しい除草剤も必要となっている。また、モンサントはサッカリン、DDT、枯葉剤など身体に有害とされる製品を生み出して来た企業で、ヨーロッパでは好意的には受け入れられていない企業なのである。

「危険企業」として名指しされることも少なくないモンサント。バイエルによる買収で、その悪い印象が拭われるかは定かではない。その反面、日本市場ではGMOについての警戒心は消費者の間でもまだ少ない。これから注視して行くべき問題であることは間違いないだろう。

<文/白石和幸 photo by Mike Mozart via flickr(CC BY 2.0)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。