着物やアンティークファッション好きならば知っている『KIMONO姫』(祥伝社)。2002年に誕生し、それまでの着物業界に革命を起こしたムックです。

「人は外見からも気持ちを変えられる」「新しい自分の見せ方ができる」――着物は、楽しいことを探している30代の女性に、何か新しい出会いやひらめきを与えてくれるかも。10月31日にvol.14が発売となった同誌の編集長、田辺真由美(たなべ・まゆみ)さんに着物の魅力を伺っていたら、そんな気持ちになりました。

「新しいファション、見つけた!」

ーー田辺さんが着物に魅せられたキッカケは?

田辺真由美さん(以下、田辺):
2001年の年末、小物作家の友達とばったり会った時、彼女は見たことのない柄の着物にアニエスベーの転写プリントのマントを合わせていたんです。そこで初めて「銘仙(めいせん)」というアンティーク着物の存在を知りました。銘仙との出会いは本当に衝撃的で、いろいろ調べていくうちにハマっていったんです。

銘仙はvol.13でも特集しているのですが、昭和初期の女子高生が当時着ていたカジュアルな着物で、色柄がポップなものが多い。今でいうTシャツにデニムといった雰囲気ですね。

機械化・化繊染めで大量生産されて、柄も美大生などが描いたものをどんどん採用していたらしく、版権も曖昧な時代なので、ピカソの絵をマネしたような柄もあったりして(笑)。銘仙には、大正から昭和初期の着物文化の最後の輝きが詰まっています。

ーー銘仙、かわいいです! 『KIMONO姫』は「着物をファッションとして楽しもう」という内容ですよね。

田辺:かしこまった着物カタログじゃない、着物のファッション誌を作ろうと立ち上げたムックです。おかげさまでvol.1は初版がすぐに売り切れました。『KIMONO姫』に掲載しているファッションは、誰かのためじゃなく、着飾って自分のテンションをアゲるため。自分主導でブームを作っていくスタイルが支持されたのではないでしょうか。

ーーそこから原宿界隈でアンティーク着物ブームが起こりました。

田辺:80年代のDCブランドからストリートファッションを経て、当時の30代が「何を着たらいいの?」という迷っているなかで、「あっ、新しいファッション見つけた!」っていう発見があったのかなと。読者にはアパレル関係の方も多くて、『KIMONO姫』で着物にハマった世代が今、着物まわりの物やブランドを作り始めているんです。

ーー着物を着るよさとはなんでしょうか?

田辺:例えば自営業の方なら、仕事をする上でのセルフブランディングに活用している方もいます。着物で現場や打ち合わせに来るカメラマンやデザイナーもいて、彼らは他の人より印象に残りやすい。着物ならわかりやすいアピールができます。自分のイメージを作っていくなら、便利なアイテムなんです。

「あの人オシャレだね」という印象を残すのは、洋服より着物の方が簡単なんです。たとえカジュアルな着物でも相手から見れば着物は着物ですから、より丁寧に扱われるのもいいところですね。海外でも、日本のレストランでも。

――先ほどの「自分のテンションをアゲる」もメリットの一つですね。

田辺:着るもので自分の気持ちがガラリと変わることってありませんか? なんとなく今の自分がしっくりこない、自分を変えたいと思った時、着るものを変えるのが一番わかりやすくて手っ取り早いと思うんです。

人からどう見られるかも大切ですが、着ている自分の気分が上がらなければ楽しくない。だから、着ていく場所もどこだっていいんです。確かに洋服よりは苦しいし歩幅も狭くなるし、決してラクなものではないですが、世界が一つ開けますよ。

せっかく日本に住んでいるのだから、楽しみたい「着物」。続く第2回では、初心者向けの着こなしアドバイスをいただきます。

『KIMONO姫』(祥伝社)
最新号「メイドインジャパン」特集は10月31日より発売中。
協力:松庵文庫

(有馬美穂)