溝口健二や黒澤明監督のミューズ、香川京子

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溝口健二監督没後60年、増村保造監督没後30年記念企画の特集上映「溝口健二&増村保造映画祭 変貌する女たち」が角川シネマ新宿で開催中だ。溝口監督のミューズである女優の香川京子が、1月7日に角川シネマ新宿で開催されたトークショーに登壇し、溝口監督との撮影秘話を語った。溝口監督作の『山椒大夫』(54)と『近松物語』(54)に出演した香川は「2本だけですが、私にとっては忘れられない昨品になりました」と感慨深い表情を見せた。

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溝口監督といえば『西鶴一代女』(52)でヴェネチア映画祭の国際賞を、『雨月物語』(53)と『山椒大夫』で同映画祭の銀獅子賞を受賞しているが、香川は『山椒大夫』で初めてヴェネチアを訪れた際に、当時留学中だった増村保造監督とも会っていたそうだ。増村監督は当時厳しかったようで「なかなか毒舌家でいらっしゃった」と苦笑いした。

この年は『山椒太夫』だけではなく、黒澤明監督作『七人の侍』(54)も共に銀獅子賞を獲得した。黒澤監督作にも多数出演している香川は、溝口監督との共通点も感じそうだ。「黒澤監督も溝口監督もカットが長くて、1シーン1カット。私はどちらかというと、そういう方が好きなんです。気持ちがつながりますから」。

ヒロインを務めた『近松物語』について、香川は「セットに入ってからは手も足も出なくて」と撮影の苦労話を激白。「人妻役も初めてでした。共演の長谷川一夫さんは本当に優しい方で、私が何をしても受け止めてくださるという安心感がありましたが、監督は演技指導を一切なさらない方。ただ『もう1回』と言われるだけでした」。

溝口監督は香川に「芝居は頭で考えたんじゃいけない。芯から役に入っていれば自然に動けるはずだ」と指導した。香川は「それから自分の体で、気持ちでぶつかっていかなきゃいけない」とだんだんわかっていったそうで、あるシーンで感極まったと言う。「やはり形でやったらいけないんだなと、しみじみ知った瞬間でした。監督さんというのはずいぶん辛抱強いお仕事だなと。ずっと待っていてくださった」と溝口監督に感謝した。いまでも香川にとっていちばん大切は映画は、『近松物語』だと言う。「私にとっては、お芝居の根本を教えていただいたという気持ちがありますから。あれがなかったらどうだっただろうと思います」。

この後は、『リュウグウノツカイ』(13)のウエダアツシ監督作『天使のいる図書館』(2月18日より全国公開)が待機中の香川は「若い監督さんがお声をかけてくださって、俳優さんたちも10代の人たちとおつきあいできたりして、こちらも若くなります。やっぱり現場が好きなんだなと」と柔和な笑みを浮かべた。

「溝口健二&増村保造映画祭 変貌する女たち」では、溝口健二と増村保造という師弟関係にあった二大巨匠監督の作品42本を上映中。女性が主人公の作品に特化した上映ラインナップとなっている。【取材・文/山崎伸子】