米韓合同軍事演習の中止を求める毎年恒例の北朝鮮の「どう喝外交」が始まった。今年はトランプ米新政権の出方や、混乱が続く韓国内の動向を見ながら、揺さぶりをかけるとみられる。

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2017年1月7日、北朝鮮の「どう喝外交」の季節が始まった。米韓合同軍事演習の中止を求める毎年の恒例行事で、朝鮮労働党の金正恩委員長は新年のあいさつで「大陸間弾道弾(ICBM)開発が最終段階にある」と言明した。今年は20日に正式就任するトランプ米大統領の出方や韓国内の動向を見ながら、揺さぶりをかけるとみられる。

昨年、北朝鮮は3月からの米韓合同軍事演習を控え、1月6日に4回目の核実験を実施。朝鮮中央テレビは「特別重大放送」で「初の水爆実験を行った」と発表した。2月7日には「人工衛星の発射」と称するミサイル実験にも踏み切った。

これに対し、韓国政府は「北朝鮮に流入する外貨が核実験やミサイル開発に使われるのを防止する」として、開城工業団地の操業停止と韓国人の引き揚げを決定。金正恩政権の中枢を狙った「斬首作戦」をちらつかせた。

北朝鮮は敵の特殊作戦兵力に動きがあれば、「制圧するための先制的な作戦遂行に入る」と宣言。「第1次の攻撃対象は青瓦台(韓国大統領府)をはじめとする韓国政府機関だ。第2次の攻撃対象はアジア太平洋地域の「『米帝侵略軍』の基地や米国本土になる」と警告するなど、朝鮮半島の緊張が一挙に高まった。

北朝鮮が最も関心を寄せるトランプ米新政権の対北政策は全く未知数。「水爆実験」直後には「この頭のおかしいやつ(金正恩党委員長)が、これ以上、核でいたずらができないようにしなければならない。もう終わらせなくてはならない」と主張したが、大統領選中は「金委員長が訪米するなら、これを受け入れる」と述べ、米朝トップ同士の直接交渉にも言及した。

今月1日に朝鮮中央テレビが伝えた新年のあいさつで、金委員長は「(米本土が射程に入る)ICBM開発が締めくくりの段階にある」として、米韓合同軍事演習を中止しない限り、核兵器による先制攻撃を強化すると強調。米国をこれまで通り批判したが、トランプ氏には触れなかった。

「ICBM発言」にトランプ氏はツイッターに投稿し、「そうはさせない」と応酬。さらに「中国は完全に不公平な貿易で膨大な金と富を米国から持ち出してきたのに、北朝鮮について(米国を)助けようとしない」とも書き込み、矛先を中国に向けた。北朝鮮としてもトランプ氏の真意を測りかねているとみられる。

北朝鮮のもう一つのターゲットである韓国は、国政介入事件で朴槿恵大統領が憲法裁判所に弾劾訴追され、混乱の真っただ中。当初予定の17年末から前倒しされることが確実な次期大統領選では野党勢力が有利とみられ、金大中、盧武鉉政権のような北朝鮮に融和的な政権が誕生する可能性もある。

こうした中で昨年までのように韓国に軍事的圧力をかければ、国内で危機感が強まり、次期大統領選で保守系に有利に働きかねない。北朝鮮は韓国内の情勢を分析しながら、慎重に「口撃」の間合いを見極めているとみられる。(編集/日向)