金正恩氏

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昨年7月に北朝鮮から韓国に亡命した元駐英北朝鮮公使のテ・ヨンホ氏が、金正恩党委員長が頻繁に朝鮮人民軍(北朝鮮軍)関連の視察を行うのは「不安を抱いているからだ」と、韓国の文化日報のインタビューで明かした。金正恩氏が抱える「不安」とは何なのか。

「高射銃」で人間をミンチに

テ氏が韓国に亡命したことが明らかになったのは昨年8月だ。それから、まだ半年ほどしか経っていないが、テ氏は積極的にメディアの前で発言している。文化日報のインタビューでは、金正恩氏の独裁者としての心理状態にまで踏み込んで分析。正恩氏の実兄である正哲(ジョンチョル)氏がエリック・クラプトンのロンドン公演を見る際に付き添うほど金一族に近い立場にいた人物の発言だけに注目に値する。

テ氏は、金正恩氏が頻繁に北朝鮮軍関連の視察を行うことに対して次のように分析した。

「不安な独裁者であればあるほど『マンセー(万歳)』の声を聞きたい。 軍部隊によく行くということは、金正恩氏が軍に対して安心できないという証拠だ」

「『軍隊は掌握しているぞ、反抗することなど夢にも考えるな』という心理的圧迫を加えるという意味合いもあるようだ」

金正恩氏は、北朝鮮軍に対して過剰に不安を抱いているようだ。不安の根底にあるのはコンプレックスと筆者は見る。

昨年、韓国の情報機関である国家情報院は、「金正恩氏が残忍な粛正を続ける理由は、その多くが『無視されたから』だった」 「忠誠心の表し方が期待外れだったり、一部幹部の傲慢な態度などが28歳で権力を握った金正恩氏の『年齢コンプレックス』を刺激したようだ」と分析した。

若さにコンプレックスを持つ金正恩氏が、北朝鮮軍や朝鮮労働党の幹部ら対して「コイツらは、表向きは忠誠を誓っているが、心の中では若造と見てバカにしているのではないか」と、疑心暗鬼に陥っている可能性は大いにありうる。

そうした不安を覆い隠すため、正恩氏は些細な理由で粛清や人間をミンチと化する無慈悲な処刑などの恐怖政治によって自らの絶対権力を再確認し、権威を高めようとしているのではなかろうか。

また金正恩氏は、毎週3、4回ずつ夜通しのパーティー(酒宴)を開き、不摂生な生活と食習慣のために健康不安を抱えているとの分析がある。

こうしたパーティーもコンプレックスを打ち消すためではないだろうか。コンパニオンとして名門女学生まで動員する酒宴では、金正恩氏も普段以上に王様気取りで楽しめるだろう。いかにも若くて未熟な独裁者が考えそうなことだ。

(参考記事:金正恩氏の秘密パーティーに呼ばれる「名門女学生たち」の涙

テ氏の証言をもとに金正恩氏の心理状況を考察すればするほど、彼の指導者としての資質を疑わざるを得ない。彼がどのようなコンプレックスを抱いていようとも、それは人それぞれの問題だ。しかし、絶対的独裁者として国内では粛清・処刑の刃を振り回し、国外には核の脅威をまき散らすその行為がコンプレックスのはけ口になっているならば、あまりに危険な人格であると言わざるをえない。