ECと実店舗の「いいとこ取り」モデルで成功、米ジュエラーの場合

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ジュエリーのECサイト「リタニ(Ritani)」のマーケティング担当副社長、マーク・キーニーは、2016年12月20日と21日が同社にとって年内の売上が最も多い日になるだろうと予測していた。

もちろんこれは、多くのカップルがクリスマス前後に婚約し、男性たちが指輪を購入するからだ。キーニーはリタニに入社後、結婚を控えた男性たちは指輪を購入する前に実店舗を持つジュエリー店を平均5軒訪れてリサーチをするということを学んだ。

また男性と女性では婚約指輪に求めるものの優先順位が異なる。女性は「ほかにはない」「キラキラ光る」指輪を好み、男性は予算内で「正しい(つまり女性を満足させる)」指輪を望んでいる。

かつては卸売業者だったリタニは、こうした見識を得たこともあり、5,000万ドル(約59億円)規模のビジネスに成長した。婚約指輪、結婚指輪をはじめとするダイヤモンドジュエリーをオンラインで販売し、年間ビュアー数は800万を誇る。(2012年からは消費者への直接販売も開始している)。

とはいえEコマースには限界もある。婚約指輪の購入体験に関しては、伝統的に実店舗型の宝石店の方が有利だ。顧客にアドバイスを提供し、高価なジュエリーを試着させたりシャンパンを出すなどのサービスも行っているからだ。

自宅にいながらパジャマ姿でショッピングをするのに慣れているミレニアル世代にとってさえも、こうした要素が依然として重要なのだという感覚が、各販売店にはある。

そこでリタニでは、オンラインと実店舗、双方の”いいとこ取り”をする独自の「クリック&ブリック(オンライン通販と実店舗)」モデルを開発。店頭販売やポップアップ広告に投資して既存の宝石店との競争に”倍賭け”する代わりに、国内各地の独立した宝石店と提携し、顧客がオンライン注文した約1週間後に地元の宝石店で実際の指輪を下見できるようにした。

Eコマースの効率性と実物を直接自分の目で確かめるという実店舗の利点を組み合わせた戦略だ。実物を見た後に購入する義務はないが、キーニーは「販売契約の成約率はきわめて高い」と言う。

リタニと提携する230店の実店舗にとっても、店舗がある(郵便番号)区域内での独占販売権を持てることと、購入者が店舗を訪れずに直接配送で購入した場合でも、担当区域内であれば収益の1%が入るという”うまみ”がある。

ニューヨーク州ウエストチェスターに店舗を構えるマイケル・ウィルソンも、リタニと数年前から提携関係にあり、満足していると語る。

「ウエストチェスターはとても裕福なコミュニティーだが、宝石店に足を踏み入れるのをためらう人は多い。リタニと提携したことで、これまでよりもやや若く、文化的にも経済的にも幅広い顧客が増えた」

2014年5月、リタニはさらにオンライン店舗と実店舗の間の”境界”を壊す新たな機能の展開(一部の店舗での展開)を発表した。実店舗にある指輪のタグにマイクロチップを埋め込み、それをiPadのアプリと同期させるのだ。

これにより、実店舗で指輪の下見をしている顧客は、目の前のスクリーンでそのジュエリーに関する詳細情報を見ることができる。ウェブサイトと同じように、アプリで表示される指輪は即座にカスタマイズが可能で、顧客は検討しているデザインについて、金属や石のサイズ、カットを変えたシミュレーションを確認することができる。

iPadを使ったこのサービスは2014年末に各店舗で開始され、2015年は同社にとってこれまでで最高の年(収益7,500万ドル=約88億円)になった。

リタニのジュエリーはミレニアル世代を意識してデザインされたものだが、そのほかの年齢グループの間でも売上は伸びている。これは同社のビジネスモデルが、業界内のビジネスモデルの足りない部分を補っていることを示唆している。

「60代、70代や80代の顧客もiPadで商品を購入してくれている」とリタニの関係者は言う。「世界は変化し続けている。そして当社は未来の競争に向けて好位置についている」