Inc.:ランニングをする人としない人の脳を比較した結果、驚くべきことがわかりました。

集中力や思考能力、認知機能の向上を助けてくれるものといえば、チェスのような深く考える活動を想像するかもしれません。あるいは、もし脳の働きを良くしてくれるスポーツがあるとしたら、走りながらドリブルし、パスを出すサッカーなど、マルチタスクな種目を思い浮かべるでしょう(事実、世界最強のチェスプレーヤーは、サッカーもたしなみます)。

少なくともランニングではなさそうに思えます。ランニングは単純で反復的で、頭を使う必要がないように見えるため、多くの人が心からつまらないと思っていますし、複雑な意思決定や、脳の良好な健康状態と関連付けられるスポーツとは思われないでしょう。しかし最新の研究は、正反対の結論を導き出しています。

アリゾナ大学の研究チームが、長距離走の選手と全く運動しない人の脳を比較しました。すると、長距離選手たちの脳は「計画、抑制、監視、注意の切り替え、マルチタスク、運動制御を含む」認知機能にかかわる領域が非常に活性化されているとわかりました。研究結果は「Frontiers in Human Neuroscience」に発表されています。

この研究では、長距離走の選手をしている大学生11人と、1年前から全く運動していない11人を比較しました。被験者たちが何もせずに座っている6分間、MRIで脳の活動を測定しました。その6分間の観察で、以下のことがわかりました。

ランナーの脳はどう違うのか


「深い思考」にかかわる脳の領域が活性化:高度な思考を必要とする脳の領域で、活発な「やり取り」が行われていました。具体的には、記憶や意思決定、処理にかかわる領域同士がつながっている状態でした。一方、全く運動しない被験者は、これらの領域が活性化していませんでした。

「空想」にかかわる脳の領域が低活性:一方、注意散漫や集中力低下にかかわる脳の領域は、全く運動しない被験者と比べて活性化していませんでした。これはランナーの方が集中力が高いことを示唆しています。

研究に参加した神経科学者のGene E. Alexander氏は「New York Times」の取材に対し、「この研究結果を見る限り、ランニングは単純とはほど遠いのかもしれません」と述べています。一見、頭を使わない活動のようですが、実は複雑なナビゲーションを必要とするそうです。

人は走っているとき、周囲環境や経路、体調などを同時に処理しています。被験者のランナーたちのように、定期的に走っている場合は、過去の走りを思い出しつつ、それをもとに意思決定を行うこともあるでしょう。走りながらコースを変えることもあれば、コースを変えないと決断することもあります。いずれにせよ、文字通り動きながら意思決定を行っているのです。走りながら体を鍛え、同時に頭を鍛えていると言っても良いでしょう。


注意事項


この研究からあれこれと想像する前に、いくつかの留意点を挙げておきましょう。まず、被験者は全員、大学に通う若い男性でした。研究者はしばしば、被験者から女性を除外します。明確な研究結果を得るには、女性の月経周期が妨げになるためです。つまり、今回の研究は多くの研究と同様、人類の50%にしか当てはまらないということです。研究から女性を除外することの問題点をもっと知りたい人は、ポッドキャスト「Freakonomics」の最新エピソード「Bad Medicine, Part 2: (Drug) Trials and Tribulations(悪い薬パート2:臨床試験の苦難)」を聴いてみるとよいでしょう。

次に、今回の研究は、長距離走の選手と1年前から全く運動していない人を比較しています。長距離選手たちの脳は単純に走っていたおかげで健康になったのでしょうか? それとも、持久力を必要とするスポーツを定期的に行っていたおかげでしょうか? 自転車、水泳、トライアスロンなどの長距離競技を行う人の脳を調べても、同じ結果が出るかもしれません。

いずれにしても、今回の研究は多くの研究と同様、さらなる研究を促すような興味深い結果を導き出しています。そして、本格的な冬が訪れた今、外へ走りに出掛けるモチベーションがほしいという人は、ぜひこの研究結果を胸に、思い切って外に飛び出しましょう。


Neuroscience Finds This Seemingly Mindless Exercise Sharpens Your Brain|Inc.

Betsy Mikel(訳:米井香織/ガリレオ)
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