女の目的は「カップル成立」でなく「愛される」こと

さて今回も前回に引き続き、シュールなコメディ『ロブスター』。独り身が許されない世界で人々が強制参加させられる45日間の"婚活合宿"は、カップルになれなければ特殊な手術で動物に変えられてしまうオマケつきの、地獄の婚活映画です。

物語は妻に捨てられた中年男が、この合宿施設に収容されるところから始まります。そこにはさまざまなルールがあり、どうやらセックスは禁止はされてはいないようですが、何しろ期間が短いので相手をとっかえひっかえする暇はありません。もっと言えば現実世界で男が次々と遊びのセックスができるのは、「結婚する」的な責任を取らされる可能性が低いからですが、合宿の場合、気のない相手とのセックスでカップル成立に持ち込まれる可能性もあります。その後の愛情醸成で「やっぱ愛せない」みたいな展開になった時点で残り2日なんてことになれば、リカバリーできずにロバとかオコジョとかにならざるを得ませんから、へたなセックスはできません。

してみると恐ろしいほどにヘンテコなこの合宿は、悲しい結末を迎える女性もいないわけではありませんが、基本的に浮気男の遊びのセックスを封殺する「女性フレンドリー」なシステムやもしれません。合宿を仕切っている女性マネージャーの「セックスは動物になってからでもできる」という発言からもわかるように、この合宿は単なるカップルの成立ではなく、「愛情醸成」までが目的なので、うまく機能すれば「愛とセックスはイコール」と思う女子には願ったりかなったり。

アンビバレントなのは、そのきっかけを「男の性欲」に頼っていることです。

「長い寿命で生涯現役」を目指す、男はすべてロブスター

合宿のルールで度肝を抜かれるのは、1日に1回、メイドが男の各部屋にやってきてその股間をスカートまくり上げたお尻でこねることです。主人公は「今日はやりたくない」と嫌がるのですが、「やらないわけにはいきません。心理的効果も絶大なので」とその冷徹さは有無を言わせません。作業は機械的に始まり、反応いいですはいオッケー、と唐突に「寸止め」。ちなみに自慰は厳禁で、もしやればポップアップ式トースターに手を突っ込まれる拷問。シュールすぎです。

そうした寸止め性欲は、動物にされる(つまり人間として死ぬ)ことへの恐怖と相まって、男たちを必死の婚活へと駆り立てます。彼らがとる戦法がこれまた判で押したように同じで、狙った女子との共通点を作ること。例えば鼻血が出やすい女子にロックオンした男は、物陰で壁に頭を打ち付けたり鼻に棒を突っ込んだりという荒業で鼻血を出し、僕って鼻血がすぐ出ちゃうんだよ、まさか君も?と、スーパーわざとらしくアピールします。ギリ危ないですよと注意したくなりますが、動物になって野垂れ死ぬくらいなら、鼻血出してそこそこのセックス相手を見つけて生き延びるほうが、男にとってはずっといい。

さて問題。そんな風に成立したカップルの男は、果たして相手の女子を愛しているのでしょうか。映画は、施設から逃亡した独身者レジスタンスを率いる「愛を全く信じない女性リーダー」を使い、そのあたりをぎりぎりと締め上げてゆきます。「怨念に満ちた女性映画」と思われると嫌なので書いときますが、監督は男です。

世の中の男の100人中100人が「愛とセックスは別」と言いますが、この映画を見るとそれ以下、「セックスだけ」という気すらしてきます。セックスと引き換えならば何でもやる、というほうが近いかもしれません。行動パターンとしては驚くほどわかりやすいのに、理解や共感はさっぱりできず、そのペラペラぶりに呆れ、アホくささと情けなさは笑うしかないのですが、そういう男の愛を信じずにはいられない女子の寄る辺なさに、悶々は募ります。

タイトルのロブスターは、主人公の男が希望して申告したカップル不成立時に変えられる動物で、その理由は「100年以上生き、死ぬまで性的に現役だから」。まるでオッサン週刊誌の見出しのような男が、せめてセックスのためにどこまで自分を捨てられるのか、究極的にはそこに愛が見えるかもしれない――と、一縷の望みを託し、固唾を飲んでラストシーンを見守る私です。

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