【試乗】ルノー トゥインゴ ゼン5速MTはクルマとの対話が楽しい貴重なモデル

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装備を簡素にしてなんとMTモデルは171万円のバーゲンプライス

コンパクトハッチのマニュアルトランスミッションモデルと聞くと、ついつい「ホットハッチ」を想像してしまう。最初に言っておくが、このルノー トゥインゴ ゼン5速MTはそういうスポーティなクルマではない。


新型トゥインゴはリヤエンジン後輪駆動の、いわゆるRRレイアウトで話題になったモデル。日本での発売当初、すでに6速EDC(デュアルクラッチ)+0.9リッターターボのトゥインゴ インテンスに試乗しているので比較すると明らかにスポーティさではそちらが上。


さて、「インテンス」と今回登場した「ゼン」の違いは、簡単にいえば装備が簡素になり、より手の出しやすい価格になったことだ。たとえばホイールがアルミからスチール+ホイールカバーになったり、バックソナーが付かなかったり、エアコンがオートではなくマニュアルに、といった具合だ。

やや複雑なのは「ゼン」にも2車種あり、6速EDC+0.9リッターターボ(180万円・税込)と、今回試乗する5速MT+1リッター自然吸気(180万円・税込)と、パワートレインが異なること。また、オープンエアが楽しめるキャンバストップはインテンスのみだ。


いずれにしてもトゥインゴ ゼンの5速MT車は、現状購入できるクルマで、唯一MTでトゥインゴを楽しめるモデルなのだ。

運転のしやすさがトゥインゴを楽しむゆとりを生む

冒頭に述べたとおり、MTと聞くとスポーティなイメージを抱く私は、動き出しから少々拍子抜け。MTレバーのストロークは大きく、クラッチの繋がりもまったくシビアではなくゆとりがある。というわけで頭を切り替え、街乗りを楽しむコンパクトハッチだと認識して走り出した。


やっぱりトゥインゴはいい。このインテリアデザインに包まれながら走れるというだけで、楽しくなる。何も運転慣れしているからそんなゆとりが生まれるのではない。適度なボディサイズ、最小回転半径の小ささが、インテリアを楽しめるゆとりを生むのだ。

とくに最小回転半径は、ステアリングを目一杯切って動くと景色が真横に動くような感覚で、狭い路地から駐車場まで本当に重宝する。さらにMTは各ギヤが高めの印象で、慌ただしくシフトチェンジを繰り返す必要なく街乗りを楽しめる。このあたりも運転のゆとりに繋がる要素だ。


ギヤ比が高めだと発進が大変? なんて心配もあったが、まるで問題なかった。先に述べたようにクラッチの繋がりもゆとりがあり、エンジン自体のパフォーマンスはけっして高くないものの極低回転でもトルクがある程度出ていて、いわゆる発進時にエンストするような感触は皆無だ。


こうなるともう少し高速域も試したくなる。コイツのキャラじゃないかな、と思いつつも、路面が荒れていてカーブの多い首都高速、そして高速に挑戦することにした。

4つのタイヤの動きが手に取るようにわかる

いや、参った! 首都高のような環境こそ本来のトゥインゴの生息域なのかと思うほど素晴らしい。まず荒れた路面でも4輪の動きが手に取るようにわかり、しっかりタイヤが接地していることが伝わってくる。それこそ冗談でなく、今右前がギャップに乗った、やや右後ろに荷重がかかった、なんて感触がわかるのだ。

MTもストロークは大きいものの、ブカブカではなくカッチリとした感触でなかなかに心地良い。もうひとつ、ブレーキのタッチに安心感があり、首都高のような合流、分岐、ちょっとした渋滞などが繰り広げられるゴミゴミとした環境でも走っていて面倒くさくなることがないのがいい。これがもしもカックンブレーキ気味だったりすると、とたんに走っていることがつまらなくなる。


空いているカーブに差しかかったのでヒール&トゥを試す。ヒール&トゥを無視したようなペダルレイアウトばかりの最近のクルマにあって、非常にアクセルの調節がしやすい。しかしスパッとアクセルを煽ったがエンジンがついてこない!

忘れてた……接地性のよい足でついつい夢中になっていたが、コイツはスポーティモデルじゃないんだった。というわけで、もう一度、シフトストロークの長さに合わせるようにすべてをゆっくりめに、踵でアクセルペダルを大きめに煽る。今度は気持ちよくシフトダウンが行えた。

コーナリングを楽しめる完成度の高い足まわり

操作的にはゆったりだが、コーナリングでの気持ちよさは格別。けっして硬い足ではないが、ダンパーによってロールスピードやノーズダイブが適度に押さえられ、すべての挙動変化が滑らかに行われる。

小さいクルマにありがちなヒョコヒョコとした動きがないのだ。正直、このサイズのコンパクトカーでこれだけ懐の深い動きをするとは驚いた。


一方、高速道路は不満のないレベル。100km/h付近の追い越し加速はさすがに0.9リッターターボのようなグイッと押し出される力強さはないものの、NAの軽自動車のような必死感もない。直進安定性も上出来で、ステアリングの微修正に神経を使わなくても大丈夫だ。


さて、このトゥインゴのMTモデルに乗り、クルマの正常進化とはこのようなものを指すのだろう、と思わされた。そこにあるのはクルマとドライバーとの対話、協調。そしてその先に楽しさがあるのだ。


ご存じのとおり古いクルマは気むずかしい。陳腐な表現だが、「クルマの声を聞いて」アクセルを踏み、クラッチを踏み、シフトレバーを操作しなければ上手に走らせることができないが、それができると喜びに繋がる。トゥインゴにはもちろんそうした気むずかしさはない。

しかし、レーシングドライバーのように特別な技能をもたずとも、しっかり対話して操作するとクルマが一体感を味わわせてくれるのだ。それは、取り立てて特徴のない、普通のエンジン、普通のトランスミッションだが、足まわりやボディがしっかりと作り込まれているから可能になる。

誰もが一体感を楽しめる要素をもち、それでいて、対話に失敗したときに機械がスネる心配を取り払っているから、正常進化と感じたわけだ。今どきの、ドライバーによる多少の操作の違いなど飲み込んでしまうようなクルマもいいが、こうしてゆっくり語り合えるクルマもまたいい。


今どき、171万円で、ガレージに置いておくこと自体が誇らしくなるような、個性溢れるデザインのクルマが買えることも嬉しい。

スポーティに走らせたいなら迷わず6速EDC+0.9リッターターボをオススメするが、熱くならずとも走りを楽しみたいユーザーは、トゥインゴ ゼン5速MTモデルを一考してほしい。きっとほかのコンパクトカーでは得られない喜びで満たされるハズだ。

試乗車装着オプション

インテリア
・スマートフォンクレードル
・フロアマット
・キッキングプレートセット

エクステリア
・フロントグリル バッジセット
・ボディ・デカール

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