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Facebookは大統領選の際に、広告ネットワークを使って嘘ニュースを表示させていたとして批判を浴びました。このことからもわかるように、2016年は「嘘ニュース」がメディアの抱える大きな問題として指摘されましたが、実際のところ「嘘ニュースをのせるメディア」は新しいものではないとのこと。では、2017年現在のメディアが抱える「本当の問題」とは何なのか、ニュースサイトのVox.comがムービーを公開しています。

Fake news wasn’t the biggest media problem of 2016 - YouTube

2016年、インターネットメディアによる嘘のニュースが問題となりました。



しかし、メディアによる嘘のニュースは、今に始まったことではありません。新聞がメディアとして力を持っていた頃は、多くの嘘ニュースが紙面を飾っていました。



有名なものでは、コウモリと人間のハーフであるバットボーイをFBIが捕まえた、というものや……



ヒラリー・クリントンがエイリアンの子どもを発見して養子にした、というものなど。いずれも1990年代のニュースです。



これらの記事は編集上の戦略によって生み出されていましたが、当時はお金になるものではありませんでした。巨額のお金は「広告」によって動くものだからです。「この時計をつけたらクールに見えるだろうな」と思わせる広告がお金を生み出すのであって、嘘ニュースは広告やお金と関係しない部分でした。



2016年に問題視された嘘ニュースの新しい点は、嘘ニュースが広告のインセンティブになるところです。



今日のインターネット広告では、あなたのウェブでの行動は追跡され、その行動を元にアルゴリズムが表示する広告を決定しています。例えば花を販売するオンラインショップを訪れると……



まったく関係のないニュースを読んでいる時に、花を販売するオンラインショップの広告が表示されます。



アルゴリズムを提供する側は、追跡したデータから「あなたが何者であるか」を知っていますが、広告を表示させる上で「あなたがどのサイトを閲覧中か」ということを考慮しません。そのため、Facebookを使っている時にも追跡データに基づく広告ネットワークでの嘘ニュースが表示されます。



つまり、「信頼できるソースかどうか」ということが不明の記事が、SNSといった「パーソナルなスペース」に表示されることで、偽のニュースがこれまでよりも速いスピードで拡散され、かつ広告としてのお金を生み出している、ということが新しい問題なのです。



2016年で偽のニュースが特に目立ったのは、アメリカの大統領選挙に関すること。BuzzFeedがFacebookでエンゲージメントが高かった大統領選挙に関する嘘ニュースを調べたところ、1位はドナルド・トランプ擁護の内容で、2〜5位はヒラリー・クリントン反対の内容だったとのこと。嘘ニュースが、大統領選挙を不安に思うリベラルな人々の関心を集めたのです。



これらのことから、ジャーナリズムに身を置く人々の中には、嘘ニュースのせいで世界が不安な局面を迎えたと信じたがる人が多く存在します。しかし、実際のところヒラリー・クリントンに打撃を与えたのは「真実の物語」でした。



「ヒラリー・クリントンについての記事で読んだものは?」と尋ねられると、2016年7月から9月の間で最も多かったのは「電子メール問題」でした。



ABC、NBC、CBSなど夜のニュース番組で取り上げられたトピックも、ダントツで電子メール問題でした。



上記のデータから、別の問題が見えてきます。選挙戦で対立する2つの陣営には、いずれも優秀なリポーターたちがいます。それぞれのリポーターたちは敵陣の弱点を突くべく調査内容を発表しますが、人員構成上、基本的には2人の大統領候補は同じような結果を得られるはず。同じような数のリポーターが同じような本数の記事を書くことになるからです。



ヒラリー・クリントンの場合、問題となったのは電子メール問題と、クリントン財団の疑惑の2点でした。



しかし、ヒラリー・クリントンが常にこの2つの問題に対して言及されていたのに対し、ドナルド・トランプについては数多くの問題があがりました。すると1つ1つの問題が取り上げられる時間や割合が、自然と少なくなります。それぞれの候補に割ける記事のスペースは同量だからです。



これを「誤った等価関係(False equivalence)」と呼びます。



世論調査を行うギャラップのデータによると、選挙期間中、電子メール問題はヒラリー・クリントンを扱うメディアコンテンツのトップに現れ続けましたが、ドナルド・トランプに関する問題は時期によってシフトしていたとのこと。



大統領選において、メディアが悪影響を及ぼしたという考えは否定できません。しかし、それは嘘のニュースを流したというよりも、「視点の欠如」によるものです。



多くのメディアが大統領選挙で「2人の邪悪な候補に投票する人は少ない」という内容や、「欠陥だらけの候補」「信頼に関する問題を抱えている」という内容を中心としてコンテンツを流し続けました。



大手のメディアがこぞってスキャンダラスな内容を流しつづけることで、大統領選で本当に問題にすべきことが何なのかが不明瞭になり、多くの人々が何が重要であるかを理解しないままに投票してしまったということが、本当の問題なのです。