■イ・ボミ、2年連続賞金女王の本音(2)

 昨年12月、韓国に帰国していたイ・ボミに話を聞いた。場所は、家族とともに一緒に食事をしていた有名なカルビ店だった。

 イ・ボミは、美味しそうにお肉を頬張っていた箸を置くと、こちらの質問にひとつひとつ丁寧に答えてくれた。まずは年間5勝できた要因について尋ねると、彼女は「2015年シーズンと同じチームで勝ち取った勝利」だと言った。

「(昨季も)キャディーの清水重憲さん、トレーナー、マネジャー、コーチ、そしてお母さんや家族が私を支えてくれました。(前のシーズンと)同じチームで戦えることは本当に強みだと思います。ただ、とてもしんどいシーズンでもありました。(疲労の)ピークは日本女子オープンを棄権してしまった9月です。8週連続で試合に出場するのは初めての経験で、あのときは本当に疲れていました」

 このときの様子を、一番間近で見ていた清水キャディーが振り返る。

「彼女は日々トレーニングを続けていますし、ルーティーンも毎日同じことをやってきました。それで『疲れた』というのは、やはり精神的な部分が大きかったと思います。特に、よくて当たり前、結果が出て当然と(周囲に)思われているのが、相当つらかったのではないでしょうか。トップ10に入らないだけで、『どうしたの?』と心配されてしまいますからね。

 今年初めてトップ10を外したのが、7月末の大東建託・いい部屋ネットレディス(18位タイ)でした。そのときは、次の試合から2連勝を飾って大丈夫だったのですが、それ以降、トップ10を外しただけで『調子が悪いのか?』と聞かれていることが度々ありました。そういう言葉が、かなりプレッシャーになっていたのだと思います。

 年に1勝することさえ難しいことなのに、イ・ボミ選手はそういう周囲からの評価や期待とも戦っていかなければならなかった。そんな彼女の精神状態を考えると、2016年シーズンも最後まで戦い抜いたことは立派だし、精神的にすごく強い選手だな、と思いますね」

 重圧に苦しむイ・ボミを見て、清水キャディーは「20位以内でも上出来」と言い続けてきたという。そんな励ましを受けてきたイ・ボミが、改めて清水キャディーに感謝の気持ちを述べる。

「清水さんは、いつもゴルフの楽しみを忘れないように(ラウンド中でも)いろいろな話をしてくれました。楽に試合に臨めるようなアドバイスもたくさんしてくれて、その言葉に助けられたことは何度もありました。おかげで、精神的にはすごくいい状態でいられることが多かったですね」

 今ではイ・ボミだけでなく、清水キャディーにもサインを求めるギャラリーもいる。まさに「最強タッグ」と言っても過言ではないふたり。2017年シーズンも、このコンビは健在だ。どれだけ勝利を積み重ねていくのか、今季も楽しみである。

 さて、2年連続で賞金女王に輝き、昨季も女子ツアーのタイトルを総なめにしたイ・ボミ。日本でまだ他に手にしたいものがあるのだろうか。

「そうですねぇ......、私が日本に来てもう6年。あまりにも時が経つのが早すぎて、ちょっと驚いています(笑)。日本の生活に慣れなきゃいけないとか、結果を残さないといけないとか、そういう気持ちを常に持っているので、早く時間が流れてしまうのでしょうね。そうやって過ごしていると、まだまだやるべきことがあるように思えてくるから不思議です」

 そのやるべきこととは何なのか――次に、イ・ボミの口から出てくる言葉が気になって仕方がなかった。あえて、こちらからは何も聞かずに、その答えをじっと待っていると、彼女はこう言った。

「え〜っと、結婚ではありませんよ(笑)」

 いきなり、そんな冗談を織り交ぜてくる。それもまた、イ・ボミらしく、彼女のよさである。

「ゴルフで結果を出したい気持ちがあるので、結婚はまだまだ先の話です。それよりも、やるべきことがたくさんあります。日本で通算20勝をマークして、韓国ツアーの永久シードが取れたので、どうなっても現役を続けられるようになりました。だから、引退することもずっとないですよね。そうなると、あと達成できていないのは、平均ストローク69台や、海外メジャーの優勝になりますね。ただ、明確な目標はこのオフにしっかりと考えていきたいと思います」

 1月中旬になれば、恒例のアメリカ・パームスプリングスでの合宿が始まる。それから、ツアー開幕戦のダイキンオーキッドレディスまで、イ・ボミの姿を見るのはしばらくお預けとなる。昨年も出場した2月開催の米ツアー、ホンダLPGAタイランドに今年も出場したいとほのめかしていたが、現状ではどうなるかわからない。

 ともあれ、今季もイ・ボミの主戦場は日本ツアーとなる。おそらく、ストイックに結果を求めていくことは変わらず、平均ストローク69台達成も目指してくるだろう。そうなれば、3年連続の賞金女王も夢ではない。多くのファンが期待するのも、そこにあるはずだ。

text by Kim Myung-Wook