■イ・ボミ、2年連続賞金女王の本音(1)

2年連続で同じ舞台に立てることを、イ・ボミ(28歳/韓国)は想像していただろうか――。

 都内で行なわれた年間表彰イベントの『LPGAアワード2016』。イ・ボミは白を基調とした薄いピンク色のチマ・チョゴリ姿でステージに立った。2015年は赤いドレスだったが、2016年は民族衣装に身を包み、晴れ舞台を鮮やかに彩った。

 各部門別にいろいろな選手が表彰されたが、舞台は完全に"イ・ボミ祭り"だった。というのも、2015年に引き続き、賞金女王、平均ストローク1位、メルセデス最優秀選手賞という"三冠"を獲得した他、2016年から新設されたLPGA資生堂ビューティー・オブ・ザ・イヤーを受賞。メディア各社が選定するメディア賞のベストショット部門にも選出され、主なタイトルを総なめにしたからだ。

 もはや、日本の女子ツアーはイ・ボミ抜きには語れない。だが、イ・ボミにとっては、それだけ注目される立場であるからこそ、2016年シーズンは「不甲斐ない姿を見せられない」という思いが強くなり、その重圧と戦ってきた苦悩の1年でもあった。

 その苦しいシーズンを終えて、プレッシャーから解放されたあとも、イ・ボミは各メディアの取材やさまざまなイベントをこなすなどして、多忙の日々が続く。それでも、年末の12月初旬には地元・韓国に帰って、家族や韓国のファンクラブの会員とともにゆっくりと過ごす時間を持つことができた。そこには、シーズン中はあまり見られない満面の笑みを浮かべたイ・ボミの姿があった。

「この1年は、本当にしんどかったです。でも、もうここではそんなことを考えなくていいですからね(笑)」

 束の間のオフを母国で過ごすときこそ、彼女の素顔が垣間見られる瞬間でもある。改めて思うと、それはとても幸運なことかもしれない。

 イ・ボミと韓国で会って話を聞くのは、今回で4度目となる。最初は2015の9月、快進撃が続く中、故郷の水原市でイ・ボミが運営する『イ・ボミ スクリーンゴルフゾン』が入っているビルの一室で話を聞いた。その際、ランチでは名物の水原カルビに舌鼓を打ち、ディナーではイ・ボミの母ファジャさんにロブスターのお店に連れていってもらった。

「日本のメディアと一緒に韓国で食事するのは初めてです」

 当時、イ・ボミがそう言っていたことを記憶しているが、そのもてなしぶりが半端なく、こちらがかなり恐縮したのを覚えている。

 2度目は初めて賞金女王となったあと、同じく故郷の水原で、妹のボベさんのお店でヘアメイクをしてもらっている最中に話を聞いた。およそ20分という短い時間だったが、こちらの質問にひとつひとつ丁寧に答えて、非常にリラックスした状態の中、日本では聞けないような話を存分にしてくれた。

 3度目は2016年7月、韓国ツアーのBMW女子選手権に出場しているときだった。その直前、イ・ボミはリオデジャネイロ五輪出場へ最後の望みをかけて、海外メジャーの全米女子オープンに出場していた。だが、予選落ちを喫して、残念ながら韓国代表にはなれなかった。その傷心の身で、イ・ボミは日本ではなく、韓国に戻って自国のツアーに参戦したのだった。

 韓国での注目度も相当なもので、あのときは、韓国メディアやファンの熱狂ぶりに驚かされた。

 通常、韓国ツアーでプレーしていない選手は、その存在が薄れがちになるものだ。2011年から日本ツアーに本格参戦を果たしたイ・ボミも、当初はなかなか結果を出すことができず、前年の韓国ツアーの賞金女王でありながら、韓国でその動向が伝えられることは少なかった。

 それが今や、一変した。

「日本での活躍と人気が、韓国にも飛び火した」

 韓国ツアーの関係者や、各メディアの記者はそう口をそろえ、彼らも韓国におけるイ・ボミ人気には面食らっていた。

 韓国ツアーで活躍する選手たちを優にしのぐ数の、記者やカメラマン、テレビカメラがイ・ボミを取り囲んで、彼女の一挙一動を追う。さらにホールアウト後には、ギャラリーが殺到し、イ・ボミは身動きが取れなくなっていた。イ・ボミのサイン欲しさに、専属キャディーの清水重憲氏にハングル語で声をかけてくるファンまでいたほどだ。

 そのファンは、清水キャディーが日本人であることを知らなかったのだろう。そのときの清水キャディーの戸惑った表情が、今でも忘れられない。

 そうした状況にあっても、イ・ボミは笑顔を忘れない。メディアやファンがごった返す中、こう語った。

「韓国でもこれだけ注目されていることに、とても驚いていますし、すごく感謝しています」

 そして、4度目の今回。イ・ボミの家族やマネジャーたちが一緒に食事するという有名カルビ店に招待され、そこで話を聞かせてもらった。

 お店に到着してまもなく、イ・ボミは「お腹すいたー!」と可愛らしい声を上げると、美味しそうなお肉をパクパクと食べ始めた。

 そんな彼女の前に、録音レコーダーを置かせてもらうと、イ・ボミはそこに向かって茶目っ気たっぷりのハングル語でこう言った。

「2年連続で賞金女王になることができて、ノームノム(ほんとーに、ほんとーに)うれしいで〜す!」

 この時点では、賞金女王を手にした"強いアスリート"にはとても見えない。普通の可愛い女の子が目の前でキャッキャ言っているだけだった。しかし、今季の話をし始めると、イ・ボミはカルビを食べる箸を置いて、真剣な眼差しで激闘のシーズンを振り返った。

text by Kim Myung-Wook