五輪警備にも活用されるNECの顔認証技術『NeoFace』。160万枚の画像から0.4秒で特定の人物を検索

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映画や海外ドラマなどで、セキュリティチェックの一つとして「顔認証」を見かけたことはありませんか?

指紋・静脈・虹彩・顔など、その人固有の生物学的な特徴を識別し、その人かどうかを確認するシステムのことを「バイオメトリクス認証」といいます。このバイオメトリクス認証システムは今や世界中で使われていますが、その技術に関しては、日本のNECが大きなアドバンテージを持っているのです。

記事冒頭の画像は、NEC製顔認証システム(ソフト)の使用例。2016年のリオ五輪開催中、現地には日本のPR拠点「Tokyo 2020 JAPAN HOUSE」が開設されていました。ここで日本人メダリストが記者会見を行ったのですが、記者の入場を管理するために顔認証が採用されました。

バイオメトリクス認証の開発は70年代に始まった!


NECがこの分野の技術開発に着手したのは非常に古く、まず「指紋認証」についての研究が1971年に開始されています。

1982年にはNEC開発の指紋照合システムが日本の警察庁に納入。1990年前半、全米各州に「自動指紋照合システム」を意味する『AFIS』(Automated Fingerprint Identification Systems)を納入・展開しました。そして2008年にはさらに高度な静脈認証も併用する「指ハイブリッド認証技術」を開発しています。

顔認証システムの方は、1989年に2D顔照合の研究を開始。1996年には3D顔照合システムの開発に着手し、1999年にはシステムの出荷が開始されます。2003年には顔認証AIエンジン『NeoFace(ネオフェイス)』の海外出荷が始まりました。

顔認証システムのコア部分は「その人の顔だとどうやって確認するか」です。このシステムでは、

●画像(動画含む)から顔の部分を抽出

●データベースに登録された顔画像との合致度を計算

●一致するかを判定

という処理を高速に行います。また似ている順に(つまり合致度の高い順に)顔画像を並べて表示する、といったことも可能です。

合致の判定には、

●多点部位検出

●多元特徴識別法

●摂動空間法

といった技術が使われています。

「多点部位検出」とは、顔を構成する目・鼻・口などのパーツを正確に捉え、その人の顔を検出する技術です。NECによれば「目を中心とした高速な顔判定処理の後、目・口・鼻等の多くの部位の位置情報を正確に検出・利用することで照合精度を向上」させているとのこと。

「多元特徴識別法」とは、その人の顔を特徴付けている点を抽出し、それをもとに同一人物かどうかを確認する技術です。例えば目鼻の凹凸や傾きなどはその特徴になります。NECによれば「特徴差異が現れる部位を中心に、顔表面の濃淡情報も利用することで、さらなる照合精度の向上を図っている」とのことです。

「摂動空間法」とは、データベースにあるモデル(2Dであっても)をもとにさまざまな向きの画像をあらかじめ生成しておき、合致するかの強度を上げる技術です。NECによれば「データベースに画像を登録する際に三次元モデルを生成し、照合時の顔の傾きに対する耐性を強化している」とのことです。これによって、顔の向きがばらばらであっても、また光の当たり方がまちまちであっても認証できる可能性を高めているのです。

※上掲の「多元特徴識別法」「摂動空間法」において、赤い四角となっているのはこれをデータ化していることを意味しています。

160万画像の検索にわずか0.3〜0.4秒。高精度のバイオメトリクス検出が世界を驚かせる


上記のように技術的な工夫をこらした『NeoFace』は、他システムを凌駕する検出・認証精度を持っています。

一般には知られていませんが、アメリカでは米国政府主導のバイオメトリクス認証システムの性能を競うコンテストが開催されています。テロとの戦いを前面に打ち出すアメリカにおいて、顔認証システムはまさに必須の技術であり、常にその性能向上が求められているのです。

ちなみにこのようなコンテストは、FBIなどの治安維持にかかわる組織がスポンサードしています。

NEC製『NeoFace』は、『Multiple Biometric Grand Challenge(略称MBGC) 2009』、『Muliple Biometric Evaluation 2010』(MBE)、『Face Recognition Vender Test 2013』などの米国政府主催の技術コンテストで優勝しているのです。

特筆すべきは、NeoFaceがMBEにおいて「最高精度『1:1』の照合でエラー率0.3%」、「最速照合160万画像を0.4秒で検索」を達成し優勝したことです。

これは前者が「『この顔』と『この顔』が同一人物かの検出と認証でほぼ正解し、認証できないのは0.3%」であり、後者が「ある顔画像とデータベースに登録された160万人分の顔画像を比較して合致するかを検索するのに0.4秒しか掛からない」ことをそれぞれ意味します。

また、『Face Recognition Vender Test 2013』では「Webカメラ画像評価でNo.1」の評価を得たことにも注目です。この点において同システムは世界最高峰の性能を持っており、NECによれば「目と目の間が100ピクセル程度の画像」であっても検出し、認証できるそうです。このほか同大会においては「最速照合160万画像を0.3秒で検索」を実現。このスピードは他社製のシステムの2.2倍の速度です。

NECでは『NeoFace』だけではなく、前述の指紋認証・指ハイブリッド認証システム、またDNA、話者、掌紋などのバイオメトリクス認証システムの開発を進めています。NECによれば、セキュリティレベルを上げるにはこれらを組み合わせることが重要、とのことです。

2020年には東京オリピック・パラリンピックが開催され、多くの人が海外からやってきます。日本でもテロが起こらないようにと政府レベルで警戒が強化されるでしょうが、人海戦術にも限界があります。その際にはこのような認証システムがその真価を発揮するのではないでしょうか。