木村沙織にとって最後の皇后杯は、最終日の前日、クリスマスイブに終わってしまった。準々決勝で岡山を破って4強まで駒を進めた東レだったが、日立の速いバレーの前に、やりたいバレーをさせてもらえず、ストレート負けを喫した。しかし、試合後の木村は、特に落ち込んだ様子も見せず、サバサバとした表情で記者会見に臨んだ。

「日立は今シーズンまだ勝ったことのない相手で、試合前は『絶対勝とう!』と、ムードはすごくよかったけど、自分たちの守りの部分、ブロックが得点につながらなかったり、その間のディフェンスが上がらなかったりで、連続得点ができず、こちらが我慢できずにミスを出してしまいました」

 その言葉通り、木村も得点源の迫田さおりも、1回でスパッと得点できるシーンが少なかった。自分たちでもそれを自覚して、リバウンドをとったり、レシーブで粘って相手のミスを待つ作戦だったようだが、その前にスピードのある攻撃で東レのディフェンスを崩されてしまった。

 東レは皇后杯から、新しいフォーメーションを試していた。サーブレシーブを3人でとるのではなく、木村と妹の美里の2人でとり、あとのサイドアタッカーはできるだけ攻撃に専念して、その枚数を増やそうというものだ。その戦術は、福岡大学と岡山相手には功を奏した。しかし、日立に対しては通じず、「もっともっとバックアタックなどで攻め切れていれば、このフォーメーションが生きたと思います」と迫田は唇を噛んだ。

「サーブレシーブはほとんど沙織さんとミサ(美里)がとってくれるので、自分は攻撃に集中するだけです。正面に来たサーブだけ自分が担当する感じです。沙織さんとミサには大きな負担をかけてしまいますが、その分。攻撃枚数を増やして、相手のブロックを割っていきたい。今、東レアローズは、ひとつひとつ積み重ねている途中。いいことも悪いことも感じながら、少しでも成長して、今シーズンの最後に笑顔でいられるよう、今を頑張り抜きたい」(迫田)

 木村は準決勝の前日の囲み会見で、「最後の皇后杯」について感慨があるかを聞かれ、「それよりも全日本を含めて、ここ最近、決勝の舞台に立っていない。妹も含めて、今のメンバーは優勝を経験していない。だから、今のメンバーになんとしても決勝の舞台と、優勝を経験させてあげたい」と胸の内を明かしていた。

 そんな木村の「どうしても勝ちたい気持ち」は、日立戦でチャンスボールを返すときにも表れた。ふんわりとしたボールではなく、直線的なボールを日立コート奧に目がけて押し込んだ。しかし、そこにはリオ五輪をともに戦ったリベロ、佐藤あり紗がポジショニングしており、佐藤はすぐさまそのボールに反応し、反撃につないだ。

「試合中に、沙織さんの『どうしても勝ちたい』という思いは痛いほど伝わってきたので、あそこであのボールがくることも予想はついていました。ここでしっかりと対応することが、私なりの沙織さんへの恩返しになると思い、きっちりと拾いました」(佐藤)

 会見の後半、木村沙織は前を向いて、今後の目標をはっきりと述べた。

「今年の試合は今日で残念ながら終わってしまったんですけど、年明けからすぐ試合が始まります。今の自分たちは、いい順位にいるとはいえない(現時点で6位)ですし、自分たちのやりたいバレーが、試合の中でできていないところもある。全員がなんとか東レらしいバレーをしたいと思って毎日練習しているので、しっかり結果につなげたい。(公式戦は)あと3ヵ月あるかないかなので、自分としても悔いのないように頑張りたいと思います」

 メディアから「『自分は流されやすいので、リーグ開幕前に引退を発表しました』と言っていましたが、ここまで『流される』ことはありましたか?」と聞かれ、木村は笑顔で首を横に振った。

「ないですね。自分でも不思議なほど、ないです。残りの試合を、後悔がないように1試合1試合戦っていくだけですね。そして家族を含めて、ひとりでも多く、みなさんに試合を見に来てほしいです」

 一時は7位の入れ替え戦ラインをさまよっていた東レだが、何とか6位までには浮上した。6位以内に入れば、プレーオフに進出し、優勝を目指すこともできる。木村姉妹が2人でサーブレシーブを集中的にとって、攻撃枚数を増やすというフォーメーションで、年明けのリーグにもつなげていきたいところだ。

 木村沙織自身もシーズン当初の不調からは脱しつつある。チームが軌道に乗ってくれば、スパイク決定率など、数字も上がってくるだろう。本人が言うように集大成となるプレーをしっかり目に焼き付けたい。

中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari