高橋マイケル、42歳。桜木ジェイアール、40歳。ともにBリーグのシーホース三河に所属。日本バスケットボールを長年にわたり牽引する2選手に、日本バスケの過去、現在、そして未来について聞いた――。

 ふたりの球史を紐解けば、それはまさに"近代日本バスケ"の履歴書と言ってもいいのではないか。

 アメリカ人の父、日本人の母を持つ高橋マイケルは1995年、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校を経て、日本リーグのいすゞ自動車ギガキャッツに入団。加入初年、抜群の身体能力を生かしたダイナミックなプレーで新人王とベスト5に選出され、佐古賢一(現・広島ドラゴンフライズHC)らとともにチームを優勝に導く。その後、チームは4連覇を達成。

 しかし2002年、企業再建策の一環として、黄金期真っ只中のチームは休部に。高橋はスーパーリーグの新潟アルビレックスを経て、2004年からトヨタ自動車アルバルクでプレーし2連覇に貢献。その後、2014年にNBLのアイシンシーホース三河へ移籍し、現在に至る。

 高橋は、日本代表としても活躍。95年のユニバーシアード福岡大会に参加し、アレン・アイバーソン率いるアメリカ代表に敗れたものの、チームは準優勝。この銀メダルが、いまなお日本代表が国際大会で残した最高成績だ。また、98年の世界選手権にも出場している。

 一方の桜木ジェイアールの経歴は、さらに極上の輝きを放つ。高橋が日本でプレーを開始した1995年、1年生ながら名門UCLA(カリフォルニア大学 ロサンゼルス校)の一員としてNCAAトーナメント制覇に貢献。1998年、NBAドラフト2順目56位でバンクーバー・グリズリーズに指名される。ちなみにこのドラフトは、ビンス・カーター、ダーク・ノビツキーらが指名された年だ。

 その後、桜木はNBAで1年プレーし、フランス、ベネズエラのプロリーグを経て、2001年、スーパーリーグのアイシンシーホースに入団。2010-11シーズンから3年連続でシーズンMVPを獲得するなど、リーグを代表するプレーヤーとして現在も同チームでプレーを続けている。また桜木は2007年に日本国籍を取得し、日本代表として北京オリンピック予選に出場した。

 ふたりの目には、日本バスケはどう映ってきたのか? そしてBリーグ、日本バスケの未来は、どう映っているのか?

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――Bリーグがスタートし3カ月が経過しました。新リーグは、日本バスケの発展に貢献すると思いますか?

桜木 もちろん! ただ、リーグそして選手がどれくらい成長するかを判断するには、もう少し時間が経ってみなければわからないだろう。忘れてはいけないのは、努力を継続することだ。

高橋 Bリーグの開幕は、日本のバスケットボールにとって本当に素晴らしい。どの会場にも、多くの観客が詰め掛けてくれる。ただ、私が日本でプレーした20年間で、何度リーグ名が変わっただろう!? 5回? 6回? どのリーグも、Bリーグほどではないにしろ、スタート1年目は注目もされた。しかし、その後は......。長年言われ続けているが、リーグの発展と代表チームの国際的活躍は相関関係にある。国際大会で好成績を挙げることがメディアへの露出増加となり、リーグの発展に直結する。Bリーグの選手の露出がより増え、より多くの選手がより高いレベルでプレーできるようになることを願っている。

――高橋選手が日本でプレーを開始したのが1995年。桜木選手は2001年です。来日当時の日本バスケの印象を覚えていますか?

高橋 私がアメリカでプレーしていた頃、日本ではどんなスタイルのバスケットがプレーされているか、そもそもどんなレベルなのか一切知らなかった。日本に来て最初にプレーしたのがナショナルチームだったので、当時のトップ選手が集まっていた。特にガード陣のスキルやシュート力は高いレベルで驚かされたよ。ただ、アスレチック能力は私の方が高かった。誤解しないでほしいのは、私が日本のバスケットボールについて、情報が皆無、まったく知らなかったので想像以上であったということで、特にフィジカルとサイズにおいてアメリカとは比べるレベルではなかった。

桜木 自分は日本のバスケット以前に、日本のカルチャーをまったく知らずに日本に来たからね。文化的な戸惑いがまずは大きかった。当時のレベル? もちろん、自分がそれまで戦ってきたレベル、カレッジやNBA、海外プロリーグと比べれば劣るとは感じたよ。

――では、おふたりは何度となく日本一に輝いていますが、歴代最強だと思うチームは、何年の、どのチームですか?

高橋 それぞれスタイルも時代も違う、日本リーグ時代は試合数も少なかった。単純に比較することは難しい。2005-06、2006-07シーズンを連覇したトヨタは、波こそあったが間違いなく最強チームのひとつだ。ただ、20年間でのベストを選ぶなら3連覇した時のいすゞだろう。佐古賢一、南山真、才能溢れる若くてうまい選手が大勢いて、圧倒的な強さだったと思う。私がトヨタにいた時代は、アイシンが常にライバルだったけどね。

桜木 そうだね。自分が加入して最初の2年はトヨタに負け、3年目の2002-03シーズンでようやくトヨタに勝って優勝できた。ついにライバルに勝てた達成感が大きいこともあって、あのチームが最強だった気がする。佐古、後藤正規(現・浜松開誠館高教諭)と、素晴らしい選手もいたからね。

――では、おふたりが考える日本歴代ナンバー1プレーヤーは誰ですか?

高橋 チームメイトとして、佐古もいい選手だったし、折茂武彦(現・レバンガ北海道)もいい選手だった。ただ、誰が一番かを決めるとなるとなかなか難しい。一緒にプレーしていて、やりやすいという面から選ぶなら、渡邉拓馬(現・アルバルク東京アシスタントGM)と、現在のチームメイト、比江島慎だ。2人ともアスレチック能力に長け、シュートもドリブルもうまい。一緒にやっていて、とてもやりやすい、私のお気に入りの選手だ。

桜木 ハードチョイス! オールドスクールとニュースクールで、ひとりずつ選ばせてくれ。まず、オールドスクールは間違いなく後藤正規だ。後藤は、今まで見た中で最もハードワークをする選手だった。そして、最もプロフェッショナルでもあり、グレートシューターだった。ナンバー1は間違いなく彼だ。現在のナンバー1は、マイケルと同じく比江島。彼のスキルレベルは非常に高い。アメリカでもやっていけるレベルだと思う。

――過去、田臥勇太(栃木ブレックス)以外に、NBAでプレーできる可能性があった日本人選手はいたと思いますか?

桜木 ヒザを故障する前の川村卓也(横浜ビー・コルセアーズ)なら行けた。

高橋 間違いない。若い時の川村なら行けただろう。

桜木 シュート力だけじゃない、メンタリティーもアメリカ向きだった。

高橋 今なら比江島が一番NBAに近いだろう。ただ、現在のNBAはスキルだけでなく体格も同時に求められる。6.2フィート(約189センチ)か6.3フィート(約192センチ)の比江島は、日本ではSGをやっている。ただし、今のNBAならSGは6.8フィート(約208センチ)や6.9フィート(約210センチ)もザラだ。今のNBAでプレーするには、比江島はPGにコンバートする必要があるだろう。

――現在、渡邊雄太がジョージ・ワシントン大、八村塁がゴンザガ大でプレーしています。彼らがNBAでプレーする可能性はあると思いますか?

高橋 もちろんだ。今彼らにとって大事なのは自信を持ってプレーすること。このふたりは、ものすごい可能性を秘めている。私は渡邊とは一緒にプレーしたことがある。彼は十分なサイズ、スキルもある。これから、もっともっと強靭な体も手に入れるはずだ。ぜひ、がんばってほしい。

――桜木選手のように、いつかNCAAのチャンピオンチームで日本人選手がプレーする可能性はあると思いますか?

桜木 Anything is possible(何だってできる)! 挑み続ける限り、いつだって可能性はゼロではない。ただ、渡邊、八村はもちろんだが、もっと多くの選手がアメリカでチャレンジする必要がある。現在、アメリカのバスケットボールは、他のスポーツと同じく、ビジネスという側面がより強くなっている。才能ある選手のリクルーティングは、それこそ幼少期から全米で行なわれ、スカウトは才能ある選手を血眼で捜している。大学からアメリカで挑戦することも素晴らしいが、リクルーティングの網に引っかかるためにも、より若い年代から挑戦することが大事だ。

――Bリーグや、さらにNBAや世界を目指す少年少女に、アドバイスをいただけますか?

桜木 間違いなく言えるのは、「常に自分よりうまい選手とプレーしろ!」ということ。年上や、プレーした事のない格上の選手に挑み続けなさい。現状に胡坐(あぐら)をかいていては、上達はありえない。

高橋 私も同じく、キープワーク、練習を続けることの大切さを伝えたい。バスケットボールはチームスポーツだから、ひとりではできない練習もある。でも、ドリブルやシュート練習はひとりでもできる。上達したいなら、個人練習を続けること。練習量は君を裏切らないはずだ。

――最後に、Bリーグ初代チャンピオンへの意気込みを聞かせてください。

高橋 もちろん勝ちたい。ただ、新リーグはレギュラーシーズンこそ多いが、今季のファイナルは1試合の一発勝負。3戦先勝なら、ほぼ実力どおり決まるだろう。だが、1試合なら何が起こるかわからない。多くのチームに初代王者の可能性があるだろう。もちろん、最後は我々が優勝するが。

――桜木選手は、今なおリーグトップクラスの決定力を誇ります。今季のファイナル、残り10秒、1点のビハインドでボールを保持していたら、自身でラストショットを放ちますか?

桜木 もちろん、自分で打つ......と言いたいところだが、バスケットボールはリアクションのスポーツだ。自分のプレーで、マッチアップする選手や対戦チームが、どう対応してくるかによって次のプレーが変わってくる。だから自分のラストショットが常にベストチョイスとは限らない。その瞬間、一番確率の高いプレーを選択するつもりだ。そして、最後に勝つのが我々、シーホース三河だ。

水野光博●取材・文 Mizuno Mitsuhiro