生理用品の「タブー市場」に切り込んだ女性起業家たち

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ニューヨークでは2015年の秋、生理用ナプキンの機能を兼ね備えた女性用下着を製造するTHINX(シンクス)が地下鉄で展開した、巧妙かつシンプルな広告シリーズが話題を呼んだ。

広告では、台座から垂れ落ちる生卵で女性の生理を暗示したり、半分に割られた赤いグレープフルーツで女性器を表現したりしている。


THINXの地下鉄広告 (Credit: THINX)

この広告はニューヨーク市交通局により問題視されたが、その理由は卵や果物を使った婉曲表現ではなく、キャッチコピーで「period(生理)」という言葉が使われたことだったという。進歩的なマンハッタンでさえも、生理現象はいまだに不快なものと思われているのだ。

幸いなことにTHINXはこれに屈せず、この広告は「生理」という言葉を中心部に据えたまま、ニューヨークの地下鉄の車内や駅構内に掲示された。それから1年、同社は人々の目を引く広告を打ち続け、昨年春にはトランスジェンダーの男性モデルを起用し、自社のボーイショーツ商品を着せて登場させた。

これまで数十年にわたり真のイノベーションを経験してこなかった婦人衛生用品業界は今、ついに繁栄の時を迎えつつある。THINXの他にも各社が新たな製品を次々と投入し、投資家らは今まであまりにも長く無視されてきた市場に、大量の資本を注入している。

ローレン・ショルティとエリカ・ジェンセンは昨年、400万ドル余りを調達し、タンポンに代わる生理用品の月経ディスクを製造・販売するフレックス・カンパニーを創業した。

同社が製造する「フレックス」は、子宮頸部に挿入して使い、経血を吸収する代わりに容器内に溜める仕組み。特許を取得した独自素材は体内で温められると体にぴったりフィットする形になる。1ディスクで12時間使用でき、タンポン使用時にはできない水泳やセックスなども可能だ。


月経ディスクの「フレックス」 (Credit: The Flex Company)

ショルティは、女性が率いるヘルスケア企業にとって2016年は当たり年となったと語る。「政治家たちが私たちの体をコントロールしようと争う一方で、投資家たちの間では、これまで最もタブーとされてきた製品カテゴリーを熱心に支援する動きがこれまでになく高まっています。私たちの製品は、とうの昔にイノベーションを経験しているべきだったもの。投資家たちは、『破壊の機が熟している』分野を何よりも好むのです」

既存の婦人衛生用品は今、女性起業家らによって次々と現代向けに作り替えられている。その一例が、過去80年間にわたりほとんどその姿を変えていないタンポンだ。

ジョーダナ・キアとアレクサンドラ・フリードマンが立ち上げたニューヨークのスタートアップ企業LOLA(ローラ)は、オーガニックコットンを使用したタンポンやナプキン、パンティーライナー(おりものシート)をネット会員向けに販売している。同社は昨年12月、シリーズAラウンドで700万ドルを調達し、合計調達額を1,100万ドル余りにまで増やした。

現在のオーガニックタンポン市場は、2年前の同社立ち上げ時には考えられなかったほどの活況を呈している。最近の関心の高まりを受け、オネスト・カンパニーなどの比較的大きな企業からCora(コラ)といった新興企業までが、同市場に進出してきた。

キアは、そうした競合他社の存在を「嬉しく思う」と語っている。「(オーガニックタンポンは)2年前には、人々の気持ちをかきたてるようなトピックでは全くなかった。公の場でこうした率直な会話が交わされるようになるなんて、本当に素晴らしいと私たちは感じています」

フレックスのショルティCEOも同意見だ。「健全な競争は、投資家にとって素晴らしい兆候。短期間で競合するスタートアップが2〜3社立ち上がると、投資家の頭の中には『これはトレンドに違いない。ライバルに先を越される前に、一番良い企業を選んでおこう』という考えが浮かびます」

さらに、女性起業家の機運の高まりを裏付けるデータもある。ファースト・ラウンド・キャピタルの調査によると、女性が立ち上げたスタートアップ企業は、男性のみの企業と比べ、成功を収める傾向が高いのだという。

ショルティは「投資家は女性CEOが男性CEOよりも有能であることを知っています。投資家らは、自分自身が抱えている問題を解決しようとする人々に投資したがっています。それは、私たちはたとえ困難に直面してもモチベーションをより長く保ち続けることができるからです」

2016年はまた、保守的な男性向け性生活用品に、若い女性たちが次々と切り込んだ年となった。女性起業家らは、コンドームやローションといった定番アイテムの市場に、若者が好む安全で持続可能な素材を用いた新製品を投入した。

自然志向の生活用品を製造するセブンス・ジェネレーションのCEOを父親に持つ29歳のミカ・ホランダーは、女性に焦点を当てた性生活用品を製造するブランド「サステイン」を立ち上げた。


サステインのコンドーム製品パッケージ (Credit: Sustain)

父のジェフリー・ホランダーは数年前、持続可能なコンドームをいつか製造しようと、「Rainforest Rubbers(雨林ゴム)」の名を商標登録していた。ミカは、この企画にはマーケティングとメッセージ性が足りないと考えた。

ドラッグストアのコンドーム売り場には、ダークカラーに「マグナム」といった単語が金の文字で書かれるなど、滑稽なまでに男らしさが強調されたパッケージの数々が並んでいる。だがミカは調査の結果、コンドームの購入者の4割が女性であり、ローションの場合は女性購入者の割合がさらに大きいことを知った。

ミカは父の助言と、投資家から調達した250万ドルのベンチャーキャピタルを元手にサステインを設立し、女性向けに美しいパッケージや素材の透明性を重視したコンドームやローションの販売を開始した。税引前利益の1割はプランド・ペアレントフッドなどのヘルスケア機関に寄付される。


月経ディスク「フレックス」のパッケージ (Credit: The Flex Company)

フレックス・カンパニーのショルティとジェンセンもまた、事業を通じ、「女性の体についての自主性」を推進したいと語っている。その理由には、ドナルド・トランプ率いる次期政権が性と生殖に関する権利に反対の立場を取るとみられていることがある。

ショルティはこう語る。「2017年は、女性に逆風が吹く年になります。私は女性のヘルスケア分野での起業家として、女性たちが団結して、自分たちに悪影響を与えないような政策やイノベーションを推進していくようになってほしいと思っています。私たちは、女性らが団結すれば一人よりもはるかに大きな力を持つことができることを、2016年に目の当たりにしました」