1970年代にいち早く先進国の仲間入りをし、「アジアの優等生」「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称えられ、新興アジアの成長をけん引した日本。今人口減少と潜在的な低成長にあえでいる。かつての栄光を取り戻す日は来るだろうか。写真は日銀。

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1970年代にいち早く先進国の仲間入りをし、「アジアの優等生」「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称えられ、新興アジアの成長をけん引した日本。今人口減少と潜在的な低成長にあえでいる。かつての栄光を取り戻す日は来るだろうか。

第2次安倍政権は、4年前に誕生して以来、経済政策・アベノミクスを掲げ、デフレ脱却に向けた大胆な金融緩和、機動的な財政政策、民間需要を喚起する成長戦略の「3本の矢」で経済の好循環の実現を目指した。第2の矢(財政政策)を第1の矢(金融緩和)で支え、日銀に財政資金を用立てさせる「財政ファイナンス」の構図である。

◆「トリクルダウン」起きず

アベノミクスが志向した「富める者が富めば貧困層にも恩恵が及ぶ」という「トリクルダウン」は起きなかった。非正規や中小企業の労働者の賃金が思うように上がらず、貧富の格差は広がるばかり。しかも実質GDP(国内総生産)は、14年度0.9%減、15年度0.8%増と政府目標の実質2%成長に達していない。

経済協力開発機構(OECD)の経済見通しによると、日本の2016年の実質成長率は0.7%増と、前回の昨年11月の見通しから0・3ポイント引き下げられた。17年の成長率見通しは0・4%増と、同0・1ポイントの下方修正。世界経済全体の16年の見通しが3・0%増、17年は3・3%増と堅調だけに日本の低迷ぶりが際立つ。

財政制度審議会(財務相の諮問機関)の吉川洋会長(東大名誉教授)は、アベノミクスは失敗したと断じた上で、「日本には非正規雇用の増加や所得格差の拡大、将来の社会保障への不安といったさまざまな課題があり、これらを解決せずに経済の好転はない」と強調した。黒田春彦日銀総裁は異次元金融緩和により、2年以内に消費者物価指数で2%のインフレにすると約束したが、4年以上経っても、この目標達成は何度も先送りされ遠のくばかり。消費者物価は昨年12月まで9カ月連続のマイナスに沈んでいる。このままではデフレ脱却は到底困難だ。

日本政府の債務残高は1200兆円を超え、名目GDP比の2.5倍に迫り増加の一途。安倍政権の目標「2020年プライマリー・バランス黒字化」実現は絶望視されている。異次元緩和と事実上の“財政ファイナンス”に突っ込む。「財政ファイナンス」とは「中央銀行による国債引き受け」のこと。放漫財政と財政破綻や高インフレを招来し、国民に甚大な負担を負わせる結末を引き起こすため、現在ではほとんどの国が禁じている。

山口泰・元日本銀行副総裁は、アベノミクスの中核となっている日銀金融政策について、「2%のインフレ目標達成は困難であり、異次元金融緩和、マイナス金利などの副作用が非常に大きい」と指摘。黒田東彦日銀総裁が推進している(1)国債発行額の全量80兆円の引き受け(2)ETF(株式投資信託)を通じた株式6兆円購入―など中央銀行としては前例のない政策により、市場機能が働いていないと批判。基本的には成長戦略により生産性を上げなければならないがそうなっていないという。

◆多くの企業で日銀が筆頭株主に

ETF(株式投資信託)により巨大な投資家となった日銀は、多くの企業で筆頭株主になっている。中央銀行の株式購入は異例であり、中国人民銀行幹部から「日銀の資金コントロールは社会主義的統制の思想が入り込んで問題ではないか」と揶揄されるほど。日銀に加え年金基金も株式を大量に購入し、市場が管理相場になっているのは異常な事態といえる。。

須田美也子元日銀審議委員は、異次元緩和が行き詰まったのは「想定通り」と分析する。数年前から、日本の金融政策はすでに十分緩和状態にあり、どれほど大規模な追加策を投じても限界は見えていたという。実際、「黒田異次元緩和」の期間の年平均伸び率はGDPが0.62%、消費はマイナス0.28%、民間設備投資も1.72%と低迷。消費者物価はゼロ近辺を浮動している。