私の場合、悪夢はそれほど怖くありません。目覚めてしまえば、消えてなくなりますから。問題は、脳は起きているのに体が動かない状態です。このような症状、いわゆる金縛りを経験する人は、7%とも40%とも言われています。

気づかなければ怖くない


夢の中で動いたり歩き回ったりするので、REM睡眠(夢を見ている状態)中は、脳が筋肉との通信を遮断します。そうすることで、ベッドから這い出して本当に歩き回ってしまうことを防いでいるのです。つまり、寝ているときの金縛り状態というのは、極めてノーマルな状態です。

怖いのは、目が覚めているのに体が動かない状態で、寝始めや起きる直前に起こりやすいようです。金縛りは夜に起こる恐ろしい状態ではありますが、夜驚症とは異なります。むしろ2つはある意味では正反対と言えるでしょう。夜驚症は寝ているのに動き回るのに対し、金縛りは起きているのに動けないのですから。


恐怖だけでなく幻覚も


161220sleepparalysis2.jpg


多くの金縛り経験者が口をそろえるのが、幻覚です。それは、目に見えるほど具体的な映像として現れることもあれば、誰かや部屋にいるまたは何かが近くにあるという漠然とした感覚として現れることもあるようです。学術誌『Consciousness and Cognition』によると、幻覚には3つのタイプがあります。

部屋に侵入者がいる。胸または背中が押しつぶされる感覚飛んでいるまたは浮かんでいる感覚

筆者がいちばん鮮明に覚えているのは、上記の3番目の幻覚です。徹夜明けでようやく眠りに落ちた私は、夢の中で不思議な家のパーティに参加していました。私は飛べるようになり、地面から数フィート浮かんでいました。最初は楽しかったのですが、だんだん飛ぶスピードが速くなっていくのです。そこである意味目が覚めましたが、それでも飛んでいる感覚は止まりません。上記の論文によると、浮遊タイプの金縛り経験者には、楽しいと感じる人がある程度いるようですが、私は純粋な恐怖の感覚から逃れることができませんでした。実際どれくらいの時間だったかはわかりませんが、永遠のような時が過ぎた後、ようやく動けるようになり、完全に目を覚ますことができました。

上述の1番目または2番目の幻覚の経験者は、それを悪霊、暗い雲、強盗犯、その他の歓迎されない生物などと表現します。1600年代のオランダ人女性は、訪問者を悪魔、イヌ、泥棒と表現したそうです。2013年に『Culture, Medicine, and Psychiatry』に掲載された論文によると、デンマークの参加者はゴースト、エジプトの参加者はイスラム神話に登場する精霊ジンと表現しました。ポルポト独裁時代のカンボジアを生きた亡命者のグループは、過去からの攻撃者や親戚が侵入者だったと答えることがあったそうです。

デンマーク人とエジプト人を対象とした研究では、どちらの国の人々も、自分が信心深いと思っている人ほど、幻覚を超自然的ととらえる傾向が見られました。超自然的な何かによる訪問を感じた人ほど恐怖を覚えるのは不思議ではありません。


ベストな対策は、理解し落ち着くこと


161220sleepparalysis3.jpg


金縛りは悪霊やゴーストではなく、脳の誤作動であると理解することで、恐怖が和らぐようです。どんなに侵入者が恐ろしく見えても、実際に寝室であなたを恐怖を陥れようとしている人など存在しないのです。

金縛りの原因はまだ解明されていませんが、可能性を高めるものはわかってきています。たとえば、徹夜明けの私のように睡眠が中断されたときや、心的外傷後ストレス障害、パニック発作、不安神経症、抑うつなども原因と考えられています。頻繁に発生する場合、ナルコレプシーの症状かもしれません。金縛りは遺伝すると考えられており、特に学生に多いようです。遺伝学や生物学は変えられないものの、仰向けに寝るのを避けたり、健康な睡眠スケジュールを続けることで、金縛りの可能性を減らせそうです。

では、実際に金縛りになってしまったらどうすればいいのでしょう?『Behavioral Sleep Medicine』に掲載の論文に、いくつかの提案が掲載されていました。研究チームは金縛り経験者を対象に、それを止めようとする方法と、その結果がうまくいったかどうかを調査しました。その結果、以下の3つの方法の成功率が高いようです。



腕または脚を動かしてみる。
口など、その他の身体の部位を動かしてみる。
ポジティブな思考、祈り、または深呼吸などでリラックスを試みる。


同論文によると、金縛り中の恐怖とパニックは、パニック障害と同様、「症状を止めようとする試みが無駄になったとき」に発生するそうです。その場合、自分の金縛りの症状を観察し続けることで、その始まりに気づくことができます。そうすることで、テクニックがまだ効きやすい初期の段階に、手足を動かしたりすることができるはずです。

デンマーク人とエジプト人を対象とした研究の筆頭研究者であるBaland Jalal氏は、恐怖をやわらげ、願わくば金縛りを止めるための、4つの瞑想テクニックを勧めています。



幻覚は夢に過ぎないと自分に言い聞かせる。
この体験は「一般的で無害、かつ一過性のもの」なので怖がる理由はないと自分に言い聞かせることで、恐怖を遠ざける。
幸せな思い出など、幻覚以外の何かに集中する。
筋肉を動かそうとするのではなく、逆にリラックスさせてみる。


このテクニックは効果を発揮するかもしれませんが、大人数の患者でテストされたわけではありません。とはいえ、瞑想をして悪いことは何もないはずなので、やってみる価値はあるでしょう。


Beth Skwarecki(原文/訳:堀込泰三)
Illustration by Angelica Alzona.