ストーカー規制法の改正案が2016年12月6日に成立し、一部がわずか1ヶ月という期間で2017年1月3日に施行された。

2000年に成立したストーカー規制法は、2013年の改正で電子メールが、この2016年の改正で、やっとインスタントメッセージやSNSでの書き込み、ブログなどへの書き込み行為も規制対象となった。

背景には、前述のようにストーカー事件の数が増え続けており、さらに刺傷事件、殺人事件まで引き起こしてしまうケースが増えたこと。
それらは、いまや大きな社会問題と化していることがある。

◎改正の背景とポイント
大きな要因に、2016年5月に起きた刺傷事件(小金井市のライブハウスで、ライブ活動を行う女性がファンと称する男性に刃物で刺され一時意識不明の重体に陥ったもの)がある。
メール以外のSNS上のやり取りも「つきまとい」行為として、規制の対象にしてほしいという声は前から上がっていたが、この事件で無視できなくなったのだ。

定義されている「つきまとい」行為は次の通り。

・住居、勤務先、学校その他通常所在場所でのつきまとい、待ち伏せ、進路立ちふさがり、見張り、押しかけ、付近をみだりにうろつく
・監視している旨(行動調査など)の告知等
・面会、交際、その他義務のないことを行うことの要求
・著しく粗野な言動、著しく乱暴な言動
・無言電話、拒絶後の連続した架電、またはファックス、電子メール、インスタントメッセージ、SNS等の送信やブログ等への返信等
・汚物、動物の死体ほかの送付等
・名誉を害する事項の告知等
・性的羞恥心を害する事項の告知等、性的羞恥心を害する文書、図画、電磁気的記録の媒体ほかの送付等、性的羞恥心を害する電磁気的記録ほかの送信

また、被害者の告訴なしに起訴できる「非親告罪」に変更され、罰則も強化された。
ただし「緊急の場合、事前の警告や聴聞等を経ず、また被害者の申し出が無くとも公安委員会による禁止命令を可能とする」ことに関しては、成立したものの今回は施行されていない。

◎ストーカー規制法は「ネットストーカー」は対象ではない
今回の改正でSNSもその規制対象となったことから、一見、ネットストーカー対策になると思ってしまいがちだが、そうではない。

そもそもストーカー規制法は、
・目的として、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する」ためにする行為であること

・対象として、「当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者」であること

と、その目的と対象が明示されている。

また、電子メール、インスタントメッセージ(いわゆるメッセージツールを用いるチャット)、SNSなどの送信については、「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る」ともあり、ネット上で起こるトラブルを対処するものではないのだ。

とはいえ、今回の改正はコミュニケーションツールとして、電話・FAXからメール、ついにはチャットやSNSが一般的に、日常的なものになったことを示している。
となれば、当然、ネットにおける炎上やつきまとい行為などのトラブルは、リアル社会と同様に起こりえる。

たとえば、
遺恨がなく始まったTwitterでのやり取りがリプライを繰り返すことでこじれてしまう。
こうした経験は多かれ少なかれ経験があるという人は多いだろう。

さらに、その先に陰湿なトラブルが起こる可能性は、今後もっと増えてくる。
そして日常的なものとなってくるだろう。

そうした状況に遭遇したとき、「じゃあ見なければいい」とは言えない。
社会的なインフラとして生活の中で不可欠なものになっているのだから。

そうした場合にもっと大きな事件になる前に何らか対処できるよう、こちらも議論を進めて欲しい。


大内孝子