四季折々の美しい景観や神社仏閣・美術館巡り、祭事など、何度足を運んでも新しい発見がある街、京都。見る場所や訪れる季節は変えるのに、宿はいつも同じようなホテルや旅館ステイを選んでいませんか?

次回の京都滞在は少しだけ趣向を変えて、いつもと違った宿に逗留してみては? 自分の愉しみごとのために、ちょっと贅沢にお金を使える大人の女性にこそ体験して欲しい、特別な宿をご紹介します。これまで気づかなかった京都の新しい魅力を発見できるはずです。

宿坊に泊まって、清々しいひと時を

現代において宿坊とは、参拝者向けに用意された神社仏閣の宿泊施設のこと。最近では、宗教施設でありながら温泉浴場があったり、ホテル滞在のようなフロントサービスがあったりする施設なども登場しています。

宿坊と聞くと、泊りがけで写経や座禅といった修行を行わねばならないイメージをもつ人もいるでしょう。神社の宿坊では朝のご祈祷に参加ができるほか、お寺の宿坊では読経や護摩行、法話を聞くといった体験が用意されています。これらは参加が必須の宿坊もありますが、自由参加としている宿坊も。初めて宿坊に泊まる人は自由参加の宿坊に予約するのがおすすめです。

妙心寺の塔頭寺院、東林院の宿坊

京都にも修行体験が必須ではない宿坊はいくつかありますが、今回ご紹介するのは日本最大の禅寺・妙心寺の東の一画に建つ東林院です。本堂の前庭には十数本の沙羅双樹が植えられ、白い椿のような花が咲く6月にはその姿を一目見ようと多くの人が訪れます。通常は非公開の寺院ですが、宿坊滞在のほか前述の沙羅双樹の花の咲く時期に行われる「沙羅双樹の花を愛でる会」や精進料理教室の際にのみ拝観が可能です。

さて、東林院の宿坊は全部で8つの和室のみ。静寂に包まれたこの空間では、喧騒に心を煩わせることは一切ありません。すべての客室からは枯山水の庭園を見ることができ、鳥の声に耳を傾けて過ごす心静かなひとときは、まさに宿坊滞在ならではの特別な時間。宿坊に息づく禅の空気に触れることで、しばし感覚を研ぎ澄ませて自分の内なる声と向き合ってみてはいかが?

東林院の宿坊施設には冷暖房や浴室は備えていますが、テレビはありません。また、滞在に不可欠な石鹸・ハブラシなどの洗面具やタオル、寝間着は持参せねばなりませんが、ちょっとした不便も今日では逆に新鮮に感じるかもしれません。

また、宿坊の多くが門限を設けています。夜に飲みに出かけたり、特別な夜間拝観に出かけたりする場合は門限を頭に入れて出かけましょう。東林院は21時が門限、22時には消灯です。襖の向こうにも旅人が逗留している可能性がありますから、夜遅くまで物音を立てないよう配慮も必要です。

住職が手ずから作る精進料理をいただて

東林院の宿泊には1泊2食付き、もしくは朝食付きの2つのプランがあります。特筆すべきは、供される食事がご住職・西川玄房氏お手ずからの精進料理であること。西川氏は複数の精進料理本を出されているほか、テレビや新聞などでもレシピを公開していらっしゃる精進料理の名手でもあります。

庭を眺めながら朱塗りのお膳でいただく食事はまた格別のもの。宿坊の菜園で収穫した旬の野菜を使い、丁寧に調理された心づくしの食事を一口ひとくち味わって。

泊まるだけじゃない。一緒に楽しみたい催事

東林院は通常非公開の寺院ながら、年に数回特別な拝観があります。冒頭で紹介した「沙羅の花を愛でる会」(6月15日〜30日)のほか、1月15〜31日には「小豆粥で初春を祝う会」と題して、千両の庭の風情を楽しみながら一年中の邪気を払う小豆粥をいただく催しが開かれます。

このほかにも、毎週火・金曜日にご住職の指導のもと、精進料理を習う「精進料理を体験する会」も人気のひとつ。こうした催しに参加しながら一泊すれば、寺院や禅を今よりも身近に感じられるに違いありません。

東林院
京都府京都市右京区花園妙心寺町59
電話 075-463-1334
宿泊予約方法:電話、往復葉書にて予約