北朝鮮のスマホ「Pyongyang2404」にはあらかじめ労働新聞がブックマークに登録されている

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 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)ではスマートフォン(スマホ)利用者が増加しており、それに伴いスマホで「ネット」を楽しむ人々も増えている。

 また、ネットを活用したスマホ向けサービスが続々と登場し、スマホの利用用途は拡大した。そこで、北朝鮮でネットを楽しむスマホ利用者が増加した背景に迫る。

◆北朝鮮でスマホ利用者が増加

 北朝鮮では2013年以前よりスマホを販売していたが、2014年から2015年にかけてスマホ利用者が一気に増えた。2013年時点では首都・平壌ですらスマホ利用者を見かけることは稀で、ほとんどが従来型携帯電話とも呼称されるフィーチャーフォンだったが、2015年には平壌であれば人々がスマホを楽しむ様子は一般的な光景となった。

 北朝鮮の携帯電話事業者「逓オ技術合弁会社(ブランド名:koryolink)」のポスターに描かれる携帯電話はフィーチャーフォンからスマホに変わり、北朝鮮でも「携帯電話=フィーチャーフォン」から「携帯電話=スマホ」に変化していることが見て取れた。

 北朝鮮で売られるスマホには北朝鮮ブランドが与えられており、「Arirangシリーズ」と「Pyongyangシリーズ」が主力ブランドだ。スマホ黎明期はArirangシリーズが上位機種、Pyongyangシリーズが下位機種となる傾向だったが、両シリーズとも上位機種から下位機種まで揃えている。

◆スマホ利用者が増えた背景

 北朝鮮でスマホ利用者が増加した要因はスマホの低廉化やスマホ向けサービスの多様化が挙げられる。

 世界的なスマホの主流化に伴い安価なスマホ向け部品が登場し、スマホの低廉化が進行した。一方、フィーチャーフォンは世界的に需要が大幅に減少し、フィーチャーフォン向け部品は供給量が減少するなどフィーチャーフォンの新規開発は困難になりつつあり、採算性を考慮すると新規開発の利点は薄れている。

 北朝鮮で販売されるフィーチャーフォンやスマホのハードウェアは複数の中国企業が開発や製造を担当し、ベースとなる機種が存在する。主に中国などで販売される機種をベースとして北朝鮮向けに一部仕様を変更し、北朝鮮ブランドを与えて北朝鮮の携帯電話事業者もしくは国家機関の傘下組織が販売する。多くの中国企業はフィーチャーフォンからスマホに移行しており、北朝鮮向けにハードウェアを提供する中国企業も例外ではない。要するにベースの機種がスマホに移行し、さらに低廉化の進行により、北朝鮮でも安価なスマホの流通量が増えた。実際に北朝鮮の携帯電話販売店を訪問すると、安価なスマホはフィーチャーフォンと大差ない価格で販売されており、大画面で写真やゲームを楽しめるスマホを選ぶのは当然と言える。

 また、スマホ利用者の増加に伴いスマホ向けサービスが多様化し、スマホ向けサービスの拡充による利用用途の拡大は消費者のスマホ購買意欲をさらに高めた。

◆「ネット」を活用したサービスが充実

 北朝鮮でスマホ向けサービスが多様化する中で、特に「ネット」を活用したサービスが増えた。とはいえ、北朝鮮の一般人は教育機関など一部を除いて基本的にインターネットは利用不可である。「ネット」とは「イントラネット」なのである。北朝鮮におけるイントラネットは企業が導入する社内ネットワークの国家版とイメージすれば分かりやすいだろう。

 イントラネットを活用したアプリやウェブサイトが登場し、イントラネット経由でオンラインショッピング、学習や様々な情報の検索などを利用できるのだ。

 人気が高いオンラインショッピングの「玉流」はアプリで提供されており、デジタル製品や食品など分野を問わず商品の比較から購入までスマホで行える。主要なウェブサイトとしては科学技術の資料閲覧や勉学に使える「熱風」、金策工業総合大学の授業を受講できる「遠隔大学」、ニュースを確認できる「朝鮮中央通信社」や「労働新聞」などが用意されており、列挙しだすと際限がない。