By Michael Scott

政府が国民に対して一定の収入を保証する「ベーシックインカム」の試験運用が、2017年1月からフィンランドで始まっています。世界的にもベーシックインカムへの注目が集まる中、ユーロ圏で初めてとなるフィンランドの取り組みですが、その結果の有効性についてはまだまだ不透明な部分も残されているようです。

Finland trials basic income for unemployed | World news | The Guardian

https://www.theguardian.com/world/2017/jan/03/finland-trials-basic-income-for-unemployed

Finland Starts Handing Out a Basic Income

https://www.technologyreview.com/s/603296/finland-starts-handing-out-a-basic-income/

この試験運用は2017年1月1日に開始されており、25歳から58歳までの職に就いていないフィンランド国民2000人が対象になっています。期間は2年間となっており、毎月560ユーロ(約6万9000円)が支給されることになっている一方、これまで受給できていた社会福祉は全てカットされます。この実験の特長としては、支給されるお金の使い道は完全自由になっているほか、仮に期間中に仕事が見つかった場合でも支給は継続されるところにあります。

フィンランド政府はこの取り組みにより、いわゆる「お役所仕事」の削減と、貧困層の削減、そして失業率の改善を目指しています。フィンランドにおける失業率は8.1%となっているのですが、既存の福祉制度では少しでも収入があると補助がカットされることになっているため、人々が職に就こうとする意欲を阻害していると言われてきました。フィンランドの福祉事業機関であるKELA(フィンランド社会保険庁事務所)のMarjukka Turunen氏は「ベーシックインカムを受給する全ての人は、数日や数週間の仕事に就いたとしても支給されたお金を返還する必要がありません。職に就くこと、そして自営を行うことは何よりも重要なことです」と制度の狙いについて説明しています。

ベーシックインカムについては世界的にも関心が集まっており、テスラやSpaceXなどの企業を率いるイーロン・マスク氏がベーシックインカムが普及する未来を予測する一方、Yコンビネータのサム・アルトマン社長が「アメリカでは失敗する」と発言するなど、期待と懐疑的な見方が存在している状況です。2016年6月には月額約30万円のベーシックインカム制度の導入を問う国民投票がスイスで実施されたこともありましたが、この時は否決されるに至っています。

働かなくても毎月約30万円もらえるベーシックインカム制度の導入を決める国民投票がスタート、その結果は? - GIGAZINE



ベーシックインカム推進派の根拠となっているのが、ベーシックインカムは既存の福祉制度よりも効率的、かつ公平であるということと、今後ロボットによる自動化により人間の仕事が奪われた時に、人々を失業から守ることができるという考え方です。ベーシックインカム推進派の1人、ワーウィック大学のRobert Skidelsky教授は、社会の生産性の向上と連動することでベーシックインカムは「自動化による恩恵を一部の人ではなく、より多くの人に与えることができる」と、そのメリットを挙げています。

一方の懐疑派は、ロボットによる自動化がベーシックインカムを実現するレベルまでに達することが可能なのかについて、否定的な見方を示しています。また、仕事をしなくてもある一定の生活が送れることで、はたして人々の勤労意欲が刺激されるのかという、既存の福祉政策にも当てはまる懸念や、「人々に無条件にお金を渡すよりも、そのお金で職業訓練を施したほうが良い」という意見を唱えています。



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2017年にはオランダやイタリア、カナダなどでもベーシックインカムの導入試験が実施されることになっています。世界的な潮流になる可能性もあるベーシックインカムがどのように評価されることになるのか、2017年は重要な年になるのかもしれません。