アップルとサムスン「相互依存」の愛憎劇 今年も2社は別れない

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サムスンは、iPhoneの主要部品メーカーとしてAシリーズプロセッサやNAND型フラッシュメモリ、DRAMなどをアップルに供給してきた。しかし、アップルがサムスンを特許侵害で訴えた2011年頃を境にして供給量は下降の一途をたどり、現在はiPhone 7向けにDRAMを供給するのみだ。

両社の特許裁判は、米最高裁がサムスンの主張を支持してようやく終止符が打たれることになった。そして時を同じくして、サムスンが再びiPhoneの主要サプライヤーの座に返り咲こうとしている。

iPhoneの部品の中で最も高価なのは、ディスプレイパネルと、NAND型フラッシュメモリやDRAMなどのメモリチップだ。調査会社IHS Markitの試算によると、iPhone 7(32GBモデル)の材料費219.9ドルのうち、25%以上をこれらの部品が占めるという。

来年、サムスンは新型iPhone向けに有機ELディスプレイとNAND型フラッシュメモリを供給する予定で、DRAMを加えると数百社あるiPhoneのサプライヤーの中で最も多くの部品を供給することになる。

ブルームバーグは、iPhoneの10周年記念モデルにはエッジスクリーンが搭載される予定だと報じている。「サムスンは曲面有機ELディスプレイを大量生産できる世界で唯一の企業だ」とヒュンダイ証券のアナリストであるジェフ・キムとケビン・キムが話す通り、アップルがサムスンを選んだのは自然の成り行きだと言える。

サムスンはNAND型フラッシュメモリの供給量でも世界首位で、市場シェアは三分の一を超える。しかし、サムスンは2012年のiPhone 5 で、アップルがメモリに電磁波シールド技術の採用を求めた際にコスト高を理由にこれを断り、それ以降のiPhoneにメモリを納入していない。サムスンの穴はこれまでSKハイニックスと東芝が埋めていた。

サムスンは2014年に15兆6,000億ウォン(約1.6兆円)を投じて韓国に半導体工場を建設した。来年工場の稼働を開始するに当たり、同社は大口のバイヤーを探していたとされるが、再びiPhone向けに供給することが決まった。アップルは、DRAMについても市場で60%のシェアを持つサムスンから引き続き調達する予定だ。

iPhone 6のA9プロセッサを製造したのはサムスンと台湾のTSMC社たが、iPhone 7のA10プロセッサはTSMC社が単独受注した。

TSMC社は、「ファンアウト・パッケージング」と呼ばれる独自技術により、パッケージの薄型化や伝送速度の向上、発熱の低減などを実現した。IHS Markit のシニア・ディレクターであるLen Jelinek によると、TSMCはこの技術により、A11プロセッサについても独占的に供給することが決まったという。

「TSMCのパッケージ技術と優れたチップ設計により、アップルはSoCの性能を大幅に向上することができた」とJelinekは話す。

サムスンはアップルとの契約を失ったが、今年はクアルコム向けにチップを製造し、来年も引き続き供給することが決まっている。垂直統合型のエレクトロニクス企業であるサムスンは、規模の経済を追求して大量に部品を製造している。自社製端末だけでは到底使い切れないため、同社にとってはアップルのような大口バイヤーの存在が不可欠だ。

一方のアップルにとっても、サムスンのように高品質な部品を大量生産でき、信頼の置けるサプライヤーの存在は重要だ。両社はライバル関係にあり、時には法廷で争うこともあるが、究極的には互いに相手を必要としあう相互依存の関係にあるのだ。