スマホを銀行に変えるフィンテック企業「Juvo」 1億人の貧困層を救う

写真拡大

連続起業家のスティーブ・ポルスキー(53)がサンフランシスコで設立した「Juvo」は、銀行口座を持たない貧困層にマイクロファイナンスを提供するフィンテック企業だ。

Juvoは先月、英国の大手通信キャリアのCable & Wireless Communicationsと提携し、カリブ海地域の貧困層向けに携帯電話料金の融資サービスを開始した。Juvoは、新興市場向けに携帯電話事業者を展開するMillicomと提携し、中南米でも同様のサービスを展開している。

Juvoは現在5社の通信キャリアと提携し、23か国で1億1,000万人のユーザーを対象にサービスを展開している。「我々は、貧困層にもクレジットスコアリングを行い、彼らがローンを組めるようにしていきたい」とポルスキーは話す。

「Juvo」とは、ラテン語で「支援」を意味する言葉だという。同社の設立は2014年で、今年の9月にサービスを正式リリースした。ポルスキーは業績を開示しなかったが、主な収益源は提携キャリアとのレベニューシェアで、年間のトランザクションは1億件を超えるという。

JuvoはこれまでにFreestyle CapitalやWing Venture Capital、Seed-ResoluteなどのVCをはじめ、Arun Sarin(元ボーダフォンCEO)、Bill Esrey(元スプリントCEO)、Mohan Gyani(元AT&TワイヤレスCEO)、Duncan Niederauer (元ニューヨーク証券取引所CEO)など通信業界や金融業界の大物経営者から総額1,400万ドルを調達している。

プリペイド携帯利用者が対象

Juvoの他にも、「Tala Mobile」のようにマイクロファイナンスの普及を目指すフィンテック企業は存在するが、Juvoがそれらの企業と異なるのは、携帯電話料金の融資という、少額で超短期のローンの提供を通じて借り手のクレジットスコアリングを行っている点だ。

現在、世界の人口の大半が携帯電話を所有しているが、そのうち57億人もの人が銀行口座を持たず、ローンを組んだり保険に加入することができていない。「世界中で十億人もの人がプリペイド式携帯電話を使っている。彼らは、携帯電話を使用する度に店舗に行き、1日単位で料金を支払っている。店舗に行けず、電話をかけられない日が1か月に何日もあるのが実情だ」とポルスキーは話す。

ポルスキーは、貧困層が毎回プリペイドカードをチャージしなくても良い仕組みを作ることができれば、通信キャリアにとっても機会損失を防ぐことができると考えた。彼は、2014年にグアテマラでMillicomと共同でJuvoを立ち上げ、サービスのテスト運用を開始した。

「私が解決しようとしている問題は非常に複雑で、多くの人が私をクレージーだと揶揄した」とポルスキーは当時を振り返る。彼は難題に立ち向かうために通信業界の重鎮たちをアドバイザーに迎え、事業を軌道に乗せることに成功した。

手数料や金利は発生しない

Juvoは、顧客のスマホやアプリの利用動向をリアルタイムで分析し、機械学習技術を駆使して「アイデンティティ・スコアリング」という独自のクレジットスコアをつけている。顧客には手数料や金利は発生しない。

顧客が借入と返済と繰り返して信用力が向上すると、シルバー、ゴールド、ダイヤモンドとランクが上がり、それに伴ってより高額な融資を受けることができるようになる。最初はヘッドホン代程度の金額からスタートするが、ゆくゆくは開業資金や学費を借りることができるようになるという。

ポルスキーは、将来的に信用度の高い顧客に対して通信キャリアや外部企業が保険などの金融サービスを提供することを目指している。Juvo自身がそうしたサービスを提供するようになる可能性もあるという。

ポルスキーによると、Juvoとの提携によって通信キャリアのARPUは10-15%向上し、解約率も劇的に低下したという。

「Juvoのアイデンティティ・スコアリングのお陰で、与信枠を12か月で100万ドル増やすという目標をわずか4か月で達成することができた」とCable & Wireless でプロダクト担当バイスプレジデントを務めるJames McElvannaは話す。McElvannaによると、アイデンティティ・スコアリングによって、当初懸念していた貸し倒れリスクを最小限に抑えることができたという。

ポルスキーはJuvoを創業する以前、5社のスタートアップの創業や経営に関わった経歴を持つ。その中には、通信会社向けに音声処理システムを提供する「VoicePlex」や教育用ソフトウェアを開発する「Edusoft」が含まれる。彼は、この他にも映画レビューサイト「Rotten Tomatoes」を運営するFlixsterでCOOを務めた。

「私は、これまでアーリーステージのスタートアップで、他人が嫌がる仕事を進んで引き受けてきた」と彼は言う。

Juvoはグアテマラで事業をスタートしたが、その後米国にも対象とする貧困層が多いことに気が付き、拠点をサンフランシスコに移した。世界中で同社の潜在顧客は少なくとも数億人はいるとポルスキーは見積もっている。「貧困層は、ローン以外にも預金口座や保険を必要としており、我々はそうしたサービスも提供していきたい」と彼は話す。