2016年4月に集団脱北した北朝鮮レストランの女性従業員たち

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韓国統一省によると、2016年に韓国入りした脱北者の数は1414人(暫定数)となり、前年比で11%増えた。北朝鮮が2011年末に金正恩体制に移行して以来、この数字が増加したのはこれが初めてだ。

昨年末現在、韓国にいる脱北者は3万208人となっている。

日本アニメのファンも

韓国に入国する脱北者の数は2009年には2914人に達したが、金正恩体制になって以降、減少傾向が続き、2012年に1502人、2013年に1514人、2014年に1397人、2015年は1276人となっている。減少の理由として考えられるのは、国内経済の若干の好転と、当局による中朝国境の監視強化、そして脱北の厳罰化と秘密警察の暗躍などだ。

それが再び増加に転じたのは、正恩氏の恐怖政治と国際社会の対北朝鮮制裁強化に理由があると見られる。とりわけ、海外に派遣されたエリート層や外貨稼ぎの労働者の脱北が急増した。

代表的な例が、中国にある北朝鮮レストラン従業員らの集団脱北である。北朝鮮レストランの美人ウェイトレスたちは韓国や日本でも注目度が高いだけに、大きな話題となった。

(参考記事:北朝鮮、脱北ウェイトレスたちの顔写真を公開

ちなみに金正恩体制は、彼女らが韓国当局により「拉致された」との主張を、今に至るも続けている。それだけショックが大きかったということだろう。

昨年7月、家族ととも韓国に亡命した北朝鮮のテ・ヨンホ前駐英公使は、10年にわたって英国に在住したエリートである。ただその生活の中で、子どもたちが日本アニメのファンになるなど資本主義の文化に馴染んでしまい、帰国したら生死かかわるたいへんな問題に直面しかねないというリスクを感じていたようだ。

今後も、同様の事例は続くだろう。ただ、脱北者が全体として増えるかといえば、その点は微妙だ。

北朝鮮当局はこれまで、中国との国境を流れる豆満江の川辺にあった村落が脱北の温床になっていると見て移転を試みていたが、うまく行かなかった。

しかし昨年、北朝鮮北東部を襲った大洪水でその村々は消え、当局は遠く離れた山裾に新たな村を作った。また、新しい住宅には塀がなく、誰が出入りしているか丸見えだ。川に沿って幅広の警備道路が作られ、鉄条網が整備され、監視カメラまで設置されたら、アリの這い出る隙もなくなってしまう。

また、中国当局も北朝鮮当局に協力し、国内に潜伏する脱北者の摘発と強制送還にいっそう力を入れているとされる。

韓国入りした脱北者数増加のデータとは裏腹に、北朝鮮の人々が自由な暮らしにアクセスする経路は、むしろ細っていると言えるかもしれない。