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 ストレスチェック制度も1年目が終わり、最近は再び、長時間労働(過重労働)が注目されています。

 ’16年10月に、電通新入社員の自殺のニュースが話題になったことも影響していると思いますが、最近、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社の松浦勝人社長が労働監督基準署からの是正勧告に対して反論し、賛否両論を呼んでいます。さらに、クリスマスイブの夜に、NHKが放映したのは、長時間労働をテーマとした番組(NHKスペシャル『私たちのこれから』)でした。

◆長時間労働はなぜ減らないのか

 私は産業医として約10年間働き、合計1万人ほどの働く人と面談を行ってきましたが、従業員からだけでなく管理職側からも、長時間労働を解消したいという声を聞かなかった年はありません。全てのクライエント企業においてです。

 それにもかかわらず、なぜ、まだまだ残業が減らないのでしょうか? 長時間労働の結果、体を壊し、時に自殺者まで出る異常な状態が変わらないのでしょうか?

「時短をしろ」「残業するな」というだけの号令型改革、「人事が早く帰れと会社を巡回」「19時には電気・空調オフ」などの実力行使型改革、具体的な対策案のでない社内研修などの意識改革型改革などなど、さまざまな“長時間労働対策”が日本では行われています。

 いずれにおいても、本気度の伴わないうわべだけのものだったり、長時間労働を減らすこと自体が目的となってしまい最終的な負担は労働者にかかるだけなどなどで、結局は何も変わっていないことが多いのではないかと思います。

 今回は、本気で労働時間を減らしたいならば、長時間労働(過重労働)対策に本腰を入れて取り組むのであれば、会社と労働者、両者に実践していただきたいちょっと苦い3つの処方箋を書かせていただきます。

1.会社の意思決定と表明
2.人事評価に生産性向上という質の評価を与える
3.労働者自身が、それぞれの早く帰る動機(理由)を持つ

それぞれ詳しく見ていきましょう。◆会社の意思決定と表明

 1つ目の処方箋は、会社が本気でやる気になることです。本気で長時間労働対策を行うのであれば、会社の意思決定とその表明は、外すことはできないと考えます。長時間労働対策は、実は会社が本気でやる気になれば可能です。

 工場労働者等(いわゆるブルーカラー)やシフト勤務労働者が多い職場においては、会社がしっかりと労働者の勤務時間を配慮したシフトを組めばいいだけです。ファミレスや牛丼チェーン店が、24時間・深夜営業をやめたニュースがありましたが、諸事情は知りませんが、これに該当する部分もあったことと推測します。同様に、工場の生産ラインだって、ボタン一つで止めることはできるのです。

 オフィス労働者(いわゆるホワイトカラー)が多い職場においては、すでに職場で利用されているITをこの方向にも活用すべきです。昨今、ほとんどのホワイトカラーはパソコンやスマホ・タブレットで仕事をしています。それであれば、1日にログインできる時間を初期設定で定めたり、アプリの稼働時間の上限やインターバルを設ければいいだけです。いずれもすでに利用しているITに取り組むだけであり、技術的には可能なことばかりです。ただ、みんなやっていないだけです。

 働く人が足りない場合、生産ラインを止めるか、社員に過重労働をさせるかの選択は会社が握っています。売上を優先するのか、社員の健康を優先するのか、企業としてどちらの選択をするのか、うやむやにすることなく、隠さずに企業としての方針(価値観)を表明することも大切でしょう。

 社員の健康よりも売上が大切と考えるのであれば、それもその会社の価値観です。それでいい人たちが集まればいいですし、人が集まらなければそれまでの話です。売上よりも社員の健康が大切と考える企業文化の元では、当然のように社員もその文化を大切にしています。夜間などに会議は設定していませんし、仕事を受注するときには土日は働かない計算で日程を組みます。