2017年も主役に― イ・ボミの心に存在する“日本”というキーワード
イ・ボミの心に常に存在する“日本” 2017年は「まだ達成できてないことを」
イ・ボミにとって2016年は最高の年だったに違いない。12月に開催されたLPGAアワードでは、日本女子ツアーの2年連続賞金女王のタイトルのほか、平均ストローク1位、メルセデス最優秀選手賞の3冠を獲得。さらに、今年から新設されたLPGA資生堂ビューティー・オブ・ザ・イヤーを受賞し、メディア各社が選定するメディア賞のベストショット部門にも選出された。
そのなかでもイ・ボミが「正直、一番うれしいです!」と喜んでいたのが資生堂賞。司会の徳光和夫さんに「プレーだけでなく、ファンへの対応がすごく丁寧ですよね。それにすごく美しいし、肌もきれいです。美しさの秘訣は?」と聞かれ、「美しい心だと思います」と素で返していた。
司会者の日本語を理解し、すべて日本語で返す。一連のやり取りを見るだけでも、イ・ボミがどれだけ日本に順応し、どれだけ周囲から受け入れられているのか、うかがい知ることができた。
今やイ・ボミが“日本女子ツアーの顔”と断言しても、異論を唱える者は誰もいないだろう。2011年に日本ツアーデビューを果たしてすでに6年が経ったが、年齢からしてももうベテラン。2017年から日本ツアー7年目に突入することをイ・ボミに告げると、目を丸くしてこんな話をしてきた。
2016年で最も「忘れられない試合」は…
「日本にいると早くここに慣れなきゃいけないとか、結果を残さないといけないという気持ちが常にあるので、時が流れるのがすごく早いんでしょうね」
日本で6年も過ごした彼女にとっては、記憶に残る試合や思い出はたくさんありすぎて、選べないだろうが、「2016年の5勝のうち、どの試合が一番印象に残っているのか」と聞いてみた。
「やはり伊藤園レディスを抜きにしては語れません。ここで日本ツアー通算20勝を達成しましたし、韓国の永久シードも獲得しましたから。疲れも残っている状態から優勝できたことで、賞金女王にもグッと近づきましたから、忘れられない試合ですね」
終盤戦で節目の20勝と賞金女王を決定づけた試合はやはりイ・ボミにとって、記憶に残る試合だった。
一方で、イ・ボミが韓国メディアに語った「2016年もっとも記憶に残る試合」は、それとは違っていた。イ・ボミはそこでこう答えている。
「誕生日に優勝したCATレディースが一番記憶に残っています。私の誕生日が8月21日なのですが、その前日にファンクラブの方たちがパーティーを開いてくれたんです。そこですごく大きな力をもらいましたし、翌日に楽しくプレーして優勝までできましたからね」
日本で通算20勝達成も「まだまだやるべきことがある」
CATレディースも伊藤園レディスも優勝した試合ではあるが、それぞれがイ・ボミにとって、強いインパクトとして残っている。そこに共通するのは、“日本”というキーワードだ。
日本のファンクラブを大事にする澄んだ心、もう一つは日本で通算20勝したことで韓国ツアーの永久シードを手にし、通算30勝での日本の永久シード獲得の足がかりになったことだ。
これからも日本ツアーを軸に戦うことを宣言しているイ・ボミは、「自分にはまだまだやるべきことがあるようにも思えてくるから不思議です(笑)」と笑う。
2017年の目標について聞くと「まだ達成できなかったことが目標になります」とサラッと言ってのけた。それは平均ストロークの69台や国内メジャーの優勝などになるのだろうか。
「いろんな取材を受けるたびに必ず2017年の目標について聞かれるのですが、明確な目標はオフにチームと一緒に決めていきます」
2017年1月からはアメリカのパームスプリングスで恒例の合宿が待っている。日本ツアー開幕の3月までは、徹底的に体力強化とショートゲームの強化、クラブ調整などに努めるが、ゴルフにストイックなイ・ボミが新シーズンも主役になるのは間違いなさそうだ。
金 明碰●文 text by Myung-wook Kim