ヴェネツィアの海が、中国の海になる日

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ヴェネツィアの港が、インドやケニアを通る新しい通商ルート「海のシルクロード」の発着点だ。ギリシャのピレウス港のケースに続いて、中国の地中海に対する関心をあらためて裏付けている。

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かつて何世紀もの間にわたり、アドリア海はセレニッシマ(訳注:ヴェネツィア共和国の称号。「晴朗きわまるところ」の意)の「湾」であった。長さは800km、イタリアの沿岸とバルカン半島沿岸の間の広さは平均150km。そこにはサン・マルコのライオン(訳注:ヴェネツィア共和国旗)の旗がはためく要塞が点在していた。ヴェネツィアの商船が香辛料や金属、織物といった中近東・極東との交易の果実を故郷に持ち帰る通路だったのだ。

その後、新大陸が発見され、彼らの夢は終わった。オランダや英国の商船はアジアの植民地沿いに航路を移し、中国への航路を短縮した。アドリア海の栄華は歴史上のものとなった。

しかし、今日、歴史は繰り返す。ヴェネツィアと中国を結ぶ、新しい「海のシルクロード」だ。中国の港から東南アジア、インド、ケニアを経由し、拡張されたばかりのスエズ運河を通って地中海に入りサン・マルコのライオンの下でその旅程を終える通称ルートのことだ。

OBOR

北京はアドリア海を研究している。「シルクロード経済ベルト」という壮大な名前を冠する野心的なインフラ政策の行程を完結させるためだ。報道などでは「一帯一路」と要約されているが、英語でいう「One belt, one road」から「OBOR」の略称が生まれた。

駐中イタリア大使のエットレ・セクィは、2016年11月にミラノで開催されたイタリア中国基金の「チャイナ・アワーズ」において、次のように説明している。「ここ数日、最も興味深いことが議論されています。それは、港に関するものです。中国人たちは、アドリア海の港湾システムに注目しています」

そこには資金が流れ込み始めている。ヴェネツィアのオフショア・オンショアの新しい港湾システムの計画は、イタリアと中国のコンソーシアム「4C3」に委ねられることになっている。

一方で、中国は地中海に関心をもっていることをすでに示している。2016年4月に国営の中国遠洋運輸集団(China Ocean Shipping Company。COSCOとしても知られる)はアテネの港、ピレウス港を3億6,800万ユーロで買収した(彼らはすでに3つの埠頭の1つを運営していた)。ツィプラス政権はほかの購入者を見つけられず、中国人のみがこの施設の譲渡に手を挙げたのだった。

アテネはOBORのルートを概観した地図上で大きく目立つ寄港地の一つであり、その近くにあるのがヴェネツィアだ。12月に辞意を表明したマッテオ・レンツィ政権のインフラ担当大臣、グラツィアーノ・デルリーオは、「(ヴェネツィア、トリエステ、ラヴェンナを含む)アドリア海奥部の港は、極東からやってくる輸送を引きつけるために、一つの統合されたシステムとして立候補しなければならない」と公に語っている。

6月、(トリエステが含まれる)フリウリ州当局は、国際物流フェアのために上海へと飛んだ。「トリエステはシルクロードのコース上にあります。そして、最近北京政府の推進している一帯一路のイニシアティヴは、中国の投資家たちがトリエステ港に対して新たな関心を抱くことにつながります」と、上海凱榮法律事務所の金玉来は語った。そして、ヴェネツィアも、天津港とマルゲーラ、浜海の工業地域(訳注:いずれもヴェネツィア、天津の地区)の間で姉妹都市提携を結んだ。

いま、北京はヨーロッパまで道を延長したがっている。例えば、重慶とデュースブルクを結ぶ鉄道による陸路、そして海路だ。後者のの場合、アドリア海を通過する。「検討は進んでいます」。前述のセクィは言う。「中国人によると、アドリア海は中欧ヨーロッパの国々へと向かう効果的な連絡路なのです」

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