あなたは大事なミーティングや商談に遅刻した経験はありますか? 5分、10分の遅刻でも「ヤバい!」と思うのは日本人なら常識ですよね。しかし、NY在住で『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』の著者・りばてぃさんによると、世界ではこの常識は通用しないようです。先日、日本で行われた日露首脳会談におけるプーチン大統領の「遅刻魔ぶり」や、NYの地下鉄のエピソードなどを例に、日本人の「時間に対する感覚」がどれだけ異常かを伝えています。

遅刻から考える文化の違い

 

真面目で勤勉な日本人ならいい歳した社会人が寝過ごして遅刻しそうになるなんて、まあ、滅多にないだろうけど、忙しい日々が続くとどうしても予定どうりにいかないことはあるものだ。

あなたがもし大切なミーティングに大幅に遅刻してしまったら?

例えば、もし、1年に1回あるかないかの、取引先のお偉いさんとのミーティングに遅刻してしまったら、さあ、大変だ。

5分、10分くらいの遅刻ならまだ大目に見てもらえるかもしれない(先方の偉さのレベルによるけれど)。

でも、15分超えてくると日本人の感覚からするとかなり申し訳ない気持ちで心苦しくなる気がする。

その後、ミーティングでどんなに良いこと話しても、なかなか恰好がつかないし、そもそもちゃんと聞いてもらえないだろう。

さらに遅れて、30分とか、1時間を超える遅刻になったりしたら、想像するのも恐ろしい。

そうなったら、むしろ逆に笑い話になるような何か極端な言い訳でもないと厳しいだろう。

そんなに大幅に遅刻して何もなかったようにミーティングを始めるなんて、日本の常識では、たぶん、ありえない。

そう、日本の常識では。

でもしかし、皆さんもよくご存じのとおり、この世界は広く、多種多様の異なる文化や価値観が存在する。

滅多に会うことのできないお偉いさん、例えば、国家を代表する首相などとの会合に平気でめちゃめちゃ遅れてやってくる人物だっている。

ロシアのプーチン大統領だ。

北方領土の件もあって、日本ではかなり大きな話題になったようだが、昨年12月15日、11年ぶりにプーチン大統領が来日し、安倍首相と首脳会談を行った。

しかも、安倍首相の地元、山口県長門市の老舗旅館(大谷山荘)と東京の首相官邸の2か所で2日続けてという異例の演出をセットアップした。

それはもうその会談への注目が高まるのも当然だろう。

ところがだ。なんと、ロシアからの専用機でやってきたプーチン大統領が、山口県宇部空港に到着したのは、事前の予定時刻より2時間40分も遅れた夕方5時。

一応、遅刻した理由は、「シリア問題の対応」とのことだが、注目の高まる異例の首脳会談よりも優先的にプーチン大統領自ら対応しないといけないことなんてあるのだろうか?

なんでもそうだと思うけど、例えば、一般的な企業の組織では1つのプロジェクトや課題において現場の担当者がもっとも時間的な拘束が厳しい。

逆に、課長、部長、役員など管理職になればなるほど、意思決定を行う責任は重くなるかもしれないが、実務面での作業は、現場の担当者が行うため、そんなに時間的に拘束されることはなく、移動しながらでも指令や指示を出せると思うが、どうやら、ロシアでは、そういう仕組みになってないようだ。

なにしろ大事な首脳会談に、結局3時間以上もの遅刻になってしまったのだから。

普通の日本人の感覚なら、平謝りするだろう。

ダサいし恥ずかしい。

「もう絶対に遅刻なんてしませんから」などと、お詫びする人や、翌日の東京の首相官邸での会談を汚名挽回のチャンスにしようと思う人も多いだろう。

ところがだ。なんと、その翌日の東京の会談もプーチン大統領は1時間ほど遅刻してやってきた。

大統領が乗る特別機にエンジントラブルがあったため、予備機で羽田空港に向かったというが、それが本当の理由かどうかは誰にもわからない。

日本の取材陣の中からは、ただ単純に「プーチン大統領は朝が弱いんじゃないの」とか、「世界一有名な遅刻魔」といった声も出ている。

さらに、プーチン大統領の豪快な遅刻伝説を取り上げた記事も報じられている。

わかりやすいものに、12月17日付のライブドアニュースに掲載されたFlashの記事によると、首相や大統領だけでなくローマ法王やイギリスのエリザベス女王のような方々との会談にも遅刻した実績があるのだ!!

具体的には、

・2000年

韓国・金大中大統領 30分遅刻

ローマ法王ヨハネパウロ2世 15分遅刻

・2003年

イギリスのエリザベス女王、14分遅刻

・2008年

韓国・李明博大統領 40分遅刻

・2009年

フィンランド・ハロネン大統領 2時間遅刻

ウクライナ・チモシェンコ首相 3時間遅刻

・2012年

野田首相 1時間半遅刻

アメリカ・オバマ大統領 40分遅刻

ドイツ・メルケル首相 40分遅刻

・2013年

ローマ法王フランシスコ 50分遅刻

アメリカのケリー国務長官 3時間遅刻

韓国・朴槿恵大統領 40分遅刻

・2014年

ドイツ・メルケル首相 4時間遅刻、キャンセルをくらう

(ご参考)

・交渉を有利に運ぶ思惑も?プーチン大統領の豪快な遅刻伝説

よくみてみるとローマ法王やエリザベス女王との会談に遅れた時間は14分や15分と比較的早め(笑)に来ているところがまた興味深い。一応気を遣っているのかわからないけれど。

あと、プーチン大統領が交渉を有利に運ぶためにあえて遅刻してくる説とかもいろいろ報じられていて面白いなと思う。

もともと国家保安委員会(KGB)に所属していた経歴もあるので、ただ単に、朝が弱いわけがないと勝手にみんなが勘ぐってる印象もある。

いずれにしても、こういう事例をみると、やはり国によって文化や価値観などにはかなり大きな違いがあるのだぁとしみじみ思う。

時間の感覚の違い

ニューヨークにいるとしょっちゅう時間に関する文化の違いについて考えさせられる機会がある。

例えば、ニューヨークの地下鉄やバスなどの公共の交通機関を利用するとき。ご存じの方も多いと思うが、日本では考えられないくらいよく遅れる。

いや、遅れるという前に、そもそも地下鉄には時刻表がない。

日中であれば、だいたい、5〜10分おきに1本やってくるという感じ。

近年、デジタル掲示板が設置されたホームでは、その掲示板にあと何分で次の地下鉄がやってくるかが表示される。

とは言うものの、表示される待ち時間よりも早く、あるいは遅く地下鉄がやって来ることもある。つまり、最新のテクノロジーを搭載したデジタル掲示板ですら、ニューヨークでは必ずしも時間に正確ではないのだ。

それでも、デジタル掲示板未設置のホームでは、いつ次の地下鉄が来るかまったくわからないので、それよりはマシという(笑)。

東京で生活したことがあり都内の電車の運行状況に慣れ親しんでいる日本人には、この時間にルーズさ加減は想像もできないほどだろう。

なぜ、地下鉄が頻繁に遅れたり、そもそも時刻表がホームに設置されてない理由は、実際に地下鉄に乗ってみると、なんとなくわかってくる。

しょっちゅう止まるのだ。ホームでない場所でも。

運よく車内放送が流れれば、信号の不調だとか、前を走る別の地下鉄が詰まっているからなどと、その都度、何かしらの理由を教えてくれることもあるが、それも毎回あるわけではない。

またしょっちゅう止まるということは、電車の運行に乱れが出ているということで、鈍行路線の地下鉄が遅れを取り戻すために予告なしに急に急行になることがある(信号の不調で停車が長引いた後は、要注意)。

時間にルーズどころの話じゃない。

そういえば、ルーズとかそういうことではなく、もはや時間に対する感覚に文化や価値観やライフスタイルなどによって大きな違いがあるということだろう。

そういえば、まさにそんな、「時間の感じ方の違い」に関連した興味深い事例がある。

うちのブログで以前紹介したロンドン発の日本食「ワサビ」(Wasabi Sushi & Bento)は、タイムズスクエアの一等地に位置しながらオープンまで丸1年も遅延。

2012年12月に、2013年春開店と店頭に大きく宣伝広告を出していたのに、結局オープンしたのは2014年春だった。

アメリカではよく新装開店すると発表して、なかなか予定どうりにオープンしないということは良くあるけども、1年以上も遅れるということは驚き。

でも、このワサビのオープンの遅延はニュースにも取り上げられなかったのでこっちではそんなのも当たり前なのかもしれない。

(ご参考)

・ついにニューヨークにロンドンの寿司チェーン店、ワサビ(Wasabi)がオープン

このまま話が終わると、ニューヨークの人々が時間にルーズだったり、日本人とはかなり時間の感覚が違うイメージが強すぎるので、ちゃんと締め切りを守って仕事をしようという考え方もあるという一例を最後にご紹介しておこう。

ちょうど先週、ニューヨークのクオモ州知事が発表した新たな地下鉄路線についてのニュースだ。

マンハッタンのイーストサイドの2番街沿いに新たな地下鉄路線、セカンド・アベニュー(2nd Avenue)路線の第1フェース(103〜63丁目)が当初の予定どうり2017年元旦にオープンすると発表した。

世間の見立てでは、上述のとおり、様々なところで遅延が多いニューヨークなので、遅延するだろうとみられていたが、予定どうりオープンできそうな流れのようだ。

ちなみに、このニュースの発表時にクオモ州知事は、

「deadlines matter」(締め切りは重要だ)

・・・と力説した。

アメリカだからといって、遅れて良いわけないことを強調するような発言だ。

なお、オープンに先駆け、12月22日、23日に新しい駅の一部を一般公開。

近所に住む小学生連れの親子など見学客で賑わった。

(ご参考)

・Cuomo: Second Avenue Subway Will Officially Open To Public New Year’s Day

・Second Avenue Subway’s 96th Street Station Open to Public for Sneak Preview

・MTA第1フェーズ

image by: Shutterstock

 

『メルマガ「ニューヨークの遊び方」』より一部抜粋

著者/りばてぃ

ニューヨークの大学卒業後、現地で就職、独立。マーケティング会社ファウンダー。ニューヨーク在住。読んでハッピーになれるポジティブな情報や、その他ブログで書けないとっておきの情報満載のメルマガは読み応え抜群。

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出典元:まぐまぐニュース!